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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

駒落ちで勝利のプロ棋士「途中までは貴方が優勢でした」「どのへんまで?」「駒を並べるまで」

関川夏央に、「人間晩年図巻」という読み物集がある。

本人も後書きで書いているが、関川氏が尊敬する山田風太郎の「人間臨終図巻」が、当然ながら刊行された1987年後の没者は収録されていないことを惜しみ、その”続編”を企画したもの。


ja.wikipedia.org



ただ、個人情報保護が浸透したいま、本当の臨終の様子に際する報道・記録が圧倒的に減少したこと、平均寿命の大幅な伸びによって「晩年」期間が延びたことを考慮し、臨終というより晩年に焦点を当てたものとなった。
そして、けっこう本人以外の、その人と密接に関係した人にもスポットライトを当てている。
たとえば、1992年没の大山康晴の記事には、舛田幸三のことも描かれる、というわけだ。

そのエピソードで、笑ったのがこれ。

…舛田はSM小説家でアマ将棋の強豪、団鬼六と飛車落ちで対局した。団が負けたあとの感想戦で升田は「途中まではあんたが絶対優勢だった」といった。どのへんまでですか、と団が尋ねると升田は、「駒を並べたときまでです。わしのほうには飛車がないが、あんたにはある」と答えた。私の敗因は何でしょうか、と問うと「あんたが駒を動かしたことです」と応じた。

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升田幸三団鬼六に「途中まではあなたが優勢でしたな…駒を並べるまでは」

というか、このエピソードを紹介した上で、大山については「こういう、いわゆる名セリフがない」と評するのだからひでえ(笑) いや、実際にはけっこうおもしろいエピソードあると思うんだけどね。


これは、別記事で可能なら紹介してみよう。




この「晩年図巻」は好評企画だったらしく、その後も続編が出たようだ。ただ、ことと書の性質上、本人がインタビューや周辺取材を重ねたものではなく、これまでに出ている情報の「総まとめ」的なものであろう。
だから、上の話もまた、別に原典となるソースがあろうかと思う。