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2021年衆院選 新聞社説集(11月1日と2日付)

朝日新聞

(社説)岸田政権、継続へ 真価問われる「丁寧な政治」
2021年11月1日 5時00分

 4年ぶりの衆院選で、自民、公明両党は絶対安定多数を維持し、1カ月前に就任したばかりの岸田首相の続投が決まった。

 有権者の審判は政権の「継続」だったが、自民党は公示前の議席を減らし、金銭授受疑惑を引きずる甘利明幹事長が小選挙区で落選した。首相や与党は重く受け止める必要がある。「1強」体制に歯止めをかけ、政治に緊張感を求める民意の表れとみるべきだ。

 ■「野党共闘」の検証を

 9年近く続いた安倍・菅政治の弊害に正面から向き合い、政治への信頼を回復する。議論する国会を取り戻し、野党との建設的な対話を通じて、直面する内外の諸課題への処方箋(せん)を探る。首相が掲げる「丁寧で寛容な政治」の真価が問われるのは、これからである。

 安倍首相の下で行われた前回の衆院選は、野党第1党だった民進党の分裂で野党系候補が乱立するなか、自民、公明両党が定数の3分の2を上回る313議席を獲得し、大勝した。

 国政選挙で6連勝した安倍長期政権の終焉(しゅうえん)、新型コロナ対応に失敗した菅政権の1年余りでの退場を経た今回、自民党はある程度の減少は織り込み済みだった。しかし、派閥の領袖(りょうしゅう)や閣僚経験者が小選挙区で相次いで落選するなど、不人気の菅首相を直前に交代させ、新しい顔で臨んだにしては、国民の期待を糾合することはできなかった。

 就任したばかりの首相に実績は乏しく、「分配重視」や「新しい資本主義」などの理念も具体性を欠き、有権者は評価し切れなかったのではないか。

 世論調査などで、安倍・菅路線からの転換を求める声が多いなか、森友・加計・桜を見る会といった「負の遺産」の清算に後ろ向きな姿勢も影響しただろう。疑惑についての説明責任から逃げ回った甘利氏の落選は、「政治とカネ」の問題に対する有権者の厳しい評価に違いない。首相に幹事長を辞任する意向を伝えたのは当然だ。

 一方、全国の4分の3の小選挙区で与党候補と1対1の構図をつくりあげた「野党共闘」の効果は限定的だった。立憲民主党議席は伸びず、枝野幸男代表が訴えた、政権交代につながるような力強さには程遠かった。野党の中ではむしろ、共闘と一線を画した日本維新の会が躍進した。

 立憲は来夏の参院選に向け、共産党などとの協力の効果を選挙区ごとに徹底して検証するとともに、自公に代わる政策の選択肢の肉付けに地道な努力を続けねばならない。

 ■コロナ対策遺漏なく

 首相は近く召集される特別国会での首相指名を受け、第2次内閣を発足させる。

 まずは、この冬にも起こりうるコロナ第6波への備えに万全を期すことだ。すでに病床確保策を中心とした「骨格」は示されているが、いかにも選挙前の急ごしらえだった。人材の手当てを含め、具体策を練り上げる必要がある。

 新規感染者は全国的に大幅に減少しており、観光業や飲食店を支援する「Go To キャンペーン」の再開を求める声も強まろう。感染の再拡大に細心の注意を払いつつ、社会・経済活動の回復をどう進めるか。安倍・菅政権の反省に立ち、幅広い専門家の知見を踏まえた、責任ある政治の判断と国民への丁寧な説明が欠かせない。

 スローガン先行だった首相の理念の具体化も問われる。衆院選の公示直前に設置された「新しい資本主義実現会議」は、「成長と分配の好循環」に向けた実効性のある施策を打ち出せるのか。当面の経済対策にとどまらず、コロナ後も見据えた中長期的なビジョンを示せなければ、看板倒れになるだろう。

 ■「言論の府」立て直せ

 新しく選ばれた465人の衆院議員には、安倍・菅政権下で傷つけられた国会の機能を立て直す重い責任がある。

 憲法の規定に基づく臨時国会の召集要求に応じない。論戦の主舞台となる予算委員会の開催を拒む。質問をはぐらかし、正面から答えない。「虚偽」答弁が判明しても深く反省しない。議論の土台となる公文書を改ざん・廃棄する。過去の国会答弁を無視し、一方的に法解釈を変更する――。

 政府が説明責任を軽んじ、国会の行政監視機能を掘り崩す行為が、何度繰り返されたことか。特定秘密保護法や安保法制など、意見の割れる重要法案を、与党が「数の力」で押し切る場面も少なくなかった。「1強多弱」といわれた与野党の力関係が、政権のおごりや緩みを許すことにもつながった。

 与野党議席差が縮まった今回の選挙結果を、強引で恣意(しい)的な政権運営の見直しにつなげねばならない。これまで首相官邸に追従し、内部から自浄作用を発揮できなかった与党議員は自らを省み、進んで「言論の府」の再生に尽くすべきだ。

 森友・加計・桜を見る会など一連の疑惑の真相解明も、政権が動かないのなら、国会こそが、その役割を果たすべきだ。

 野党の責任も重い。政権へのチェックのみならず、開かれた政策論争を通じて、多様な民意を政治に反映させる力とならねばならない。

(社説)立憲民主大敗 体制と戦略 練り直しを
2021年11月2日 5時00分

 野党共闘を整え、自公政権に交代を迫った衆院選で、逆に大きく議席を減らす結果となった。自公に代わる選択肢と有権者に認められるには、何が足りなかったのか。立憲民主党は敗北を直視し、体制を立て直したうえで、来夏の参院選に向け、戦略を練り直す必要がある。

 立憲の獲得議席小選挙区57、比例区39の計96で、公示前の109から13減らした。共産、国民民主、れいわ新選組、社民各党と候補者を一本化した小選挙区では9増やしたが、与党候補に競り負けたところが多かった。共闘の効果は限定的で、地力不足も明らかだ。

 深刻なのは、政党名で投票してもらう比例区の22議席減だ。朝日新聞社などの出口調査では、無党派層比例区投票先で、立憲は前回衆院選から8ポイント減の21%と、自民党の19%をわずかに上回っただけだった。政党として有権者を引きつける力が後退したと言うほかない。

 共闘を組んだ共産党も2議席減となる一方、一線を画した日本維新の会は4倍近い躍進を果たした。本拠地の大阪の小選挙区のみならず、北海道を除くすべての比例ブロックで議席を得るなど、支持は全国に広がりをみせた。共闘の一角を占めながらも、基本政策の不一致を理由に市民連合が仲介した共通政策には加わらなかった国民民主も3議席増とした。

 立憲の出直しには、徹底した敗因の分析が欠かせない。

 衆院解散が迫るまで、共闘の中身を煮詰めなかった準備不足の影響はなかったか。自衛隊日米安保など、基本政策の異なる共産党との連携に有権者の理解を得る努力は十分だったか。コロナ対策の時限措置として打ち出した所得税や消費税の大幅減税など、財源論を後回しにした公約の実現性に疑念を持たれはしなかったか。

 「首相候補」として支持を得られなかった枝野幸男代表の責任は極めて重い。党内から辞任を求める声があがるのも当然である。出処進退は潔く自ら決断すべきだ。

 一方、自民党単独で絶対安定多数の261議席に乗せ、政権継続を決めた岸田首相はきのうの記者会見で「国民の信任を得た」と語り、新型コロナ対応や経済対策の実行にスピード感をもって取り組むと語った。

 比例区で復活当選したものの、小選挙区で落選した甘利明幹事長の後任には、茂木敏充外相を充てる方針を固めた。現金授受疑惑に対する説明責任に背を向け続けた甘利氏を、党の要に起用した自身の判断を反省し、「政治とカネ」の問題に厳しく対処する出発点にしなければならない。

読売新聞

自民単独過半数 緊張感持ち政権の安定を図れ
2021/11/01 05:00
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 ◆難局乗り切る実行力が必要だ◆


 長期政権の緩みに反省を求め、緊張感のある政治を期待したい。それが今回示された民意であろう。岸田首相は政策の実行力を高め、難局を乗り切らねばならない。

 第49回衆院選は、自民党単独過半数議席を維持し、公明党と合わせ与党で絶対安定多数を確保した。首相は「政権選択選挙で信任をいただいた。しっかり政権運営をしていきたい」と語った。

 ◆「1強」の緩み反省促す

 自民は、厳しい選挙戦を強いられた。9年近い安倍、菅両政権は、外交や安全保障、経済政策で実績を重ねる一方、感染症対策で後手に回り、政策に関する説明不足が指摘された。「1強」の 驕おご りに対する批判もあった。

 首相は、1か月前に政権を引き継いだばかりだ。国民の声に謙虚に耳を傾け、丁寧な政権運営に努めてもらいたい。

 日本は今、新型コロナウイルス流行だけでなく、本格的な経済再生や、人口減少への対応など、困難な課題に直面している。

 軍事・経済両面で台頭する中国は国際ルールを無視した行動が目立ち、米国など民主主義国との対立が深まっている。

 国際社会の平和と繁栄に向け、日本が果たすべき役割は大きい。日本政治の動向は、国際情勢にも影響を与える。

 来夏には参院選が行われる。短命政権が繰り返されることがないよう、政治の安定を図るのが首相の最大の責務である。一つ一つの課題に着実に取り組み、国民の期待に応えてほしい。

 首相は選挙戦で、「新しい資本主義」によって「成長と分配の好循環」を作り出すと訴えた。

 だが、その具体策が十分に示されたとは言えない。速やかに政策の全体像を明示し、経済再生を進めていく必要がある。

 北朝鮮のミサイル発射や、中国による一方的な海洋進出により、日本の安全保障環境は一段と厳しくなっている。ミサイル攻撃に対する抑止力の強化について、早急に方針をまとめるべきだ。

 自民党議席を減らしたことで、政権内で公明党との調整がより重要になるとの見方もある。

 公明は、抑止力の強化などに慎重な立場だ。だが、与党として必要な政策課題を遂行する責任がある。両党で協議を重ね、結論を出していくことが大切である。

 ◆野党共闘は振るわず

 立憲民主、共産など野党4党は、市民団体を介して「安保関連法の違憲部分の廃止」などの政策協定を結んで選挙に臨んだ。立民は、共産と「限定的な閣外からの協力」を受けることで合意した。

 これを踏まえ、共産は小選挙区の擁立を大幅に減らし、国民民主党を加えた野党5党の候補者が213小選挙区で一本化された。

 野党は、共闘に一定の効果があったとしているものの、立民は公示前の議席数を下回った。

 立民は「現実的外交」を掲げるが、日米安保条約廃棄を主張する共産と連携して、どのような政権を目指すのか。それが不明確だったのが敗北の要因だろう。

 政権批判票の受け皿とならなかったことを、野党第1党として深刻に受け止めねばなるまい。

 共産との協力には、民間労組の一部からも反発を招いた。

 立民が政権交代を目指すのなら、安保関連法廃止などを訴えるのではなく、現実の脅威に対して具体的な外交・安保政策を掲げたうえで、経済や社会保障政策などで与党との違いを明確に打ち出すべきではなかったか。

 参院選に向けて、共闘の路線を見直し、政権担当能力を示していくことが課題となろう。

 日本維新の会は、自公政権に不満を抱く保守層から支持を集めた形だ。成長のための改革を訴え、地盤の関西だけでなく、関東などでも議席を獲得して躍進した。

 今後、憲法改正などの課題では、自民が維新に協力を求める場面もあろう。国会での憲法論議を活発化させてもらいたい。

 ◆盛り上がり欠いた論戦

 4年ぶりの審判の機会だったにもかかわらず、選挙戦が今ひとつ盛り上がりに欠けたことは残念だ。与野党のどちらにも、「追い風」は吹かなかった。

 自民党に不満を持ちながら、野党にも政権を任せられないと考え、投票所から足が遠のいた人は少なくなかったのではないか。各党の訴えや候補者らに魅力が足りなかった面も否めない。

 有権者の声を政策に生かす日頃の地道な政治活動が減っているという。与野党は危機感を持って政治のあり方を見直してほしい。

岸田政権再始動 着実に成果上げ負託に応えよ

2021/11/02 05:00
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 ◆外交安保の懸案を前進させたい◆


 政策を実行に移し、実績を重ねることで、国民の負託に応えねばならない。自民党は安定勢力確保に安住することなく、気を引き締めて政権運営にあたってほしい。

 衆院選の結果を踏まえ、岸田首相と公明党の山口代表が会談し、連立政権の継続を確認した。10日に召集される特別国会で、第2次岸田内閣が始動する。

 自民党は、議席を減らしたものの、国会を安定的に運営できる絶対安定多数の261議席を獲得した。首相は記者会見で、「岸田政権で国の未来を作り上げてほしいという民意が示され、身が引き締まる思いだ」と語った。

 ◆自民は態勢立て直しを

 首相は1か月前に就任したばかりで、実績が評価されて信任を得たとは言えない。選挙で得た安定的な基盤を生かし、日本が直面する課題について、着実に成果を出せるかどうかが問われている。

 自民党は、甘利幹事長が小選挙区で敗れたのをはじめ、石原伸晃元幹事長らベテランが相次いで落選した。

 長期政権の 驕おご りに、国民は厳しい視線を注いでいるのだろう。首相はそのことを肝に銘じ、緊張感を持って対応する必要がある。

 首相は、辞意を示した甘利幹事長の後任に、茂木外相を充てる方針を決めた。政権運営が本格化する矢先に、党の要である幹事長の交代を迫られたのは痛手だ。来夏には参院選が迫る。態勢の立て直しを急ぐべきだ。

 当面の最優先課題は、新型コロナウイルス再流行の抑止である。首相は記者会見で、感染拡大に備えた対策の全体像を近く公表する考えを示した。

 ◆政策の具体化が急務だ

 国民の生命を守るため、病床や医療従事者を確保し、ワクチンや治療薬を適切に供給していくことが肝要だ。国民が安心感を持てるよう、政府は総合的な施策をわかりやすく示してほしい。

 政府・与党は、今月中旬に経済対策を取りまとめ、その内容を反映した今年度補正予算案を年内に成立させる方針だ。

 コロナの流行は下火になり、経済活動は徐々に再開しているが、日常を取り戻すには時間を要する。打撃を受けた事業者や困窮世帯の暮らしを支え、経済の再生を後押しすることが急務である。

 来年度予算編成では、首相が掲げる「新しい資本主義」をどのように具体化するかが焦点となる。首相は、有識者会議を設置し、「成長と分配の好循環」に向けた政策の検討を委ねた。

 中小企業や地方にアベノミクスの恩恵が行き渡っていないという認識は妥当だ。安倍内閣も、多くの企業での賃上げを実現し、経済的な格差を是正することを目指したが、果たせなかった。

 首相が訴えた所得向上について効果的な政策を示さなければ、国民の期待はしぼみかねない。

 脱炭素やデジタル化などの分野で、成長戦略が実を結ぶかどうかが経済再生の鍵を握る。首相が指導力を発揮し、投資促進や技術開発、規制改革などに多角的に取り組む必要がある。

 首相は、就任後初の外遊として英国を訪問し、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に出席する。首脳級会合で演説し、ジョンソン英首相らとの会談も予定している。

 ◆外相経験を生かせるか

 長い外相経験を生かして、活発な首脳外交を展開できるかどうかが注目されよう。

 東アジアの安全保障環境は、一層厳しくなっている。北朝鮮は新型ミサイルの発射実験を重ね、中国は東シナ海での軍事挑発や台湾への威嚇行動を続けている。

 日本は米国と連携し、地域の安定を脅かす行為を繰り返さないよう、中国や北朝鮮に粘り強く自制を求めねばならない。抑止力を強化するため、ミサイル攻撃に対する反撃力に関しても、自民、公明両党は早期に検討すべきだ。

 衆院選で共闘した立憲民主党共産党がともに議席を減らす一方、日本維新の会が躍進し、野党への有権者の評価が分かれた。

 立民は、枝野代表ら執行部の責任論が浮上している。

 旧民主党勢力は、政権転落後、安全保障政策や憲法改正共産党との共闘を巡って対立し、離合集散を繰り返した。今回の敗北は、共産党を含む野党共闘路線の行き詰まりを示すものと言えよう。

 単に幹部交代で済ませるのではなく、党運営や政策立案のあり方を根本から見直すとともに、地方組織の強化に地道に取り組まなければ、今後の展望は描けまい。

毎日新聞

衆院選で自民過半数 首相は謙虚な政権運営
朝刊総合面
毎日新聞 2021/11/1 東京朝刊 English version 1640文字

 4年ぶりとなった衆院選自民党単独過半数を維持した。岸田文雄首相が引き続き政権を担うことになった。

 選挙結果について首相は「信任を頂いた」と強調した。しかし、甘利明幹事長や複数の閣僚経験者が小選挙区で落選するなど、9年間に及ぶ自民党政治に対する国民の不信も表れた。


 後手に回った新型コロナウイルス対応で失われた信頼を取り戻すことができるのか。首相就任間もない岸田氏にこの難局のかじ取りを委ねられるのか。それが問われた選挙だった。

 自民は直前に不人気だった菅義偉前首相から岸田氏へと「選挙の顔」を代え、日程を1週間前倒しした。首相交代で内閣支持率が持ち直す中、自民に有利な環境だったが、都市部では野党候補に競り負けるケースも目立った。


 小手先の対応だけでは失われた政治への信頼が取り戻せないことを、首相は重く受け止めなければならない。

大物落選は不信の表れ
 就任から1カ月足らずの首相には実績がなく、「安倍・菅政治」を変えられるかが焦点だった。安倍晋三政権からの9年間では、政治に対する国民の信頼が損なわれる事態が相次いだ。


 コロナ対応では失政が続いた。経済活動の再開に前のめりになり、感染拡大を防げなかった。病床の確保が追いつかず、自宅で亡くなる人も出た。生活困窮者や休業を余儀なくされた飲食店への支援も十分に届かなかった。

 経済政策では格差拡大を招いた。成長と効率を重視するアベノミクスで富裕層は潤ったが、非正規労働者が増えた。


 異論を認めず、国会を軽視する姿勢も目立った。「政治とカネ」の問題では説明責任を果たそうとしなかった。安全保障関連法など世論が割れる政策を、「数の力」で強引に進めた。森友・加計学園問題などでは行政の信頼性も揺らいだ。

 自民党総裁選で首相は「民主主義の危機」を訴え、従来の政治からの転換を打ち出した。新自由主義的な政策を見直し、格差を是正するために富の再分配を進めることが主張の柱だった。

 ところが衆院選では「岸田カラー」がかすんだ。遊説で「分配」よりも「成長」を強調する言いぶりに変わり、アベノミクスをなぞっているようだった。

 森友学園を巡る公文書改ざん問題の再調査や、政治とカネの問題への取り組みにも消極的だった。業者への口利き疑惑を抱える甘利氏が小選挙区で敗れたのは、こうした姿勢に対する有権者の不信を象徴している。

 一方、野党第1党の立憲民主党は、共産党、国民民主党などと小選挙区の7割以上で候補者を一本化し、野党5党による共闘態勢で臨んだ。

安倍・菅政治と決別必要
 前回、野党第1党の民進党が分裂したことを教訓にしたものだ。今回は1対1の構図を作ることはできたが、政権交代への期待を高めるまでには至らなかった。

 政治の現状に対する国民の不満が高まっているにもかかわらず、民意を受け止めきれなかった。立憲は、共産との選挙協力の戦術を含め検証を迫られる。

 「改革」を訴えた日本維新の会が大きく議席を伸ばし、自民、立憲に対する批判の「受け皿」となった形だ。

 コロナ禍で政治が生活に直結すると多くの人が実感した。にもかかわらず投票率が大幅に上がらなかったのは、与野党が争点を明確に示せなかったからではないか。

 岸田政権が取り組まなければならない課題は山積している。格差是正やコロナ対策と経済活動の両立、人口減少社会への対応などは待ったなしだ。首相の政策実行力が試される。

 首相は街頭演説で「信頼と共感に基づいて丁寧で寛容な政治を進めたい」と訴えた。そうであるならば、安倍・菅政治の問題点を率直に認め、脱却することから始めなければならない。謙虚で丁寧な政権運営が求められる。

 来年夏には参院選が控える。今回とは異なり、岸田政権の実績が審判を受けることになる。野党も衆院選の結果を総括したうえで、どう対峙(たいじ)するかが問われる。

 本格的な国会論戦は今月中にも始まる。コロナ禍が続く中、どのような国づくりを目指すのか。建設的な議論を期待したい。

絶対安定多数と首相 寛容な政治で国会再生を

朝刊政治面
毎日新聞 2021/11/2 東京朝刊 856文字
 衆院選で勝利した自民党岸田文雄総裁(首相)がきのう記者会見し、「自公政権に対して国民の信任を頂いた」と語った。

 だが、選挙戦の陣頭指揮を執った甘利明幹事長は小選挙区で落選した。自民の現職幹事長としては初めての事態だ。「政治とカネ」の疑惑を抱えながら、説明に背を向ける姿勢が有権者に厳しく判断された。


 甘利氏が辞任を申し出たのは当然だ。首相は後任に茂木敏充外相を充てる方針という。会見で「厳しい声が寄せられたことはしっかり受け止めねばならない」と語った。襟を正して、政治への信頼を取り戻すよう努めるべきだ。

 自民は、絶対安定多数を維持した。17ある衆院常任委員会全てで委員長を出したうえで委員の過半数も占めることができる。政権の意のままに国会を運営することが可能になる議席数だ。


 だが、数の力を背景に強引な政治を進めることは許されない。異なる意見にも耳を傾け、議論を通じて合意形成を図る民主政治の本来の姿に立ち返るべきだ。

 自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党など憲法改正に前向きな勢力は、国会発議に必要な総定数の3分の2を超えた。


 首相は「3分の2以上の賛成を得られるよう議論を深める」と改憲論議への意欲を示した。

 憲法改正問題を拙速に扱うことがあってはならない。幅広い国民の合意を得るための冷静な議論と慎重な手続きが不可欠だ。

 与党が勝利した背景には、立憲民主党共産党など野党5党の共闘効果が限定的だったことがある。議席を大幅に減らした立憲の執行部は責任を明確にすべきだ。


 自民が政権に復帰した2012年の衆院選以降、低投票率が続いている。今回は55・93%で戦後3番目に低かった。争点や対立軸を明確にして選挙戦を盛り上げることができなかった与野党は、現状を重く受け止めねばならない。

 「安倍・菅政治」でないがしろにされてきた国会の機能を、今こそ立て直す必要がある。

 首相は「丁寧で寛容な政治」を掲げているはずだ。新たな顔ぶれとなる国会でその言葉を実行に移し、立法府の再生につなげなければならない。

産経新聞

岸田首相の続投 安定勢力で成果を挙げよ 対中抑止に本腰を入れる時だ
2021/11/1 05:00


政権選択の衆院選で、自民党が単独で安定多数を得た。連立する公明党と合わせ絶対安定多数となり、岸田文雄政権は有権者から信任されたといえる。

ただし、解散時と比べ、自民の議席は減少した。政権運営の要である甘利明幹事長は選挙区で敗れ、比例代表で復活したが、岸田首相に辞意を伝えた。

岸田首相や自民党は選挙結果を真摯(しんし)に受け止めねばならない。国会で丁寧な議論を重ねていくべきだ。同時に政策遂行で足踏みしてはならないのはもちろんだ。来年夏には参院選がある。公約実現へ働き抜くべきである。

コロナへの備え確実に
新型コロナウイルス対策は待ったなしの課題である。国内の感染状況は落ち着いているものの、先行きは不透明だ。

政府のこれまでの取り組みへの批判が自民の議席減につながった点は否めない。コロナ禍で経済的苦境に陥った人や事業所は少なくない。入院が必要なのに自宅療養を余儀なくされた人は全国で一時約13万5千人にも及んだ。

岸田政権は、コロナ病床を第5波のピーク時よりも2割以上増やす方針だ。掛け声倒れになってはいけない。ワクチンの3回目接種へ準備中だが、調達や接種態勢に万全を期すべきだ。経口薬の承認、供給も急がれる。

都市封鎖(ロックダウン)などの強力な手立てを、感染症対策の選択肢として日本も持っておくべきだ。岸田首相は慎重姿勢だが、再考すべきである。

経済では当面、コロナ禍で落ち込んだ景気の回復が最優先課題となる。支援を要する世帯や企業に財政面で万全の措置を講じるのは当然だ。まずは経済対策の具体化を急がなければならない。


足元で人流や消費が動き始める中で、対策の規模ばかりを追求しても仕方がない。民需が自律的に回復するよう、政策の実効性や緊急性を吟味してもらいたい。

成長と分配の両立で分厚い中間層を築くという、「新しい資本主義」の肉付けも問われる。アベノミクスが失敗したと唱えた立憲民主党などに対し、自民はこの路線を踏襲しつつ、成長の恩恵が大企業や富裕層に偏らないよう、所得再分配重視の姿勢を示した。

所得格差の是正には経済全体の賃金水準の底上げが求められる。これは安倍晋三菅義偉両政権が十分になし得なかった難題だ。一過性のばらまきとはせず、企業の継続的な賃上げを促す道筋を明確にすべきだ。

外交安全保障は大きな争点にならなかった。4年前の衆院選北朝鮮の核・ミサイル問題が国難とされたのとは対照的だ。

だが、今回衆院選の公示日には北朝鮮日本海へ向けて潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。選挙期間中には中国とロシアの合同艦隊10隻が日本を周回した。この艦隊は伊豆諸島付近でヘリを発艦させる演習を実施し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)した。日本へのあからさまな威嚇である。

早期訪米で日米会談を
日本をとりまく安全保障環境は厳しい。台湾危機や北朝鮮による拉致、核・ミサイル問題などへの対応を、与野党はもっと語るべきだった。

立民や共産党などは、安全保障関連法の「違憲部分」廃止を唱えた。集団的自衛権の限定行使容認の道を閉ざすもので、日米同盟を機能不全に陥れる政策だ。この政策の危うさや厳しい国際情勢を、岸田首相や与党は具体的に指摘し、対中抑止や防衛力の強化の必要性を訴えるべきだった。そこに力を入れなかった点は、自民の議席減の理由の一つであろう。

岸田政権が、防衛力充実や経済安全保障を推進し、対中抑止を強化しなくては平和は守れない。国民への明快な説明や公明の説得に努めてほしい。首相は31日夜、バイデン大統領と会談するため早期に訪米したい意向を示した。台湾問題をはじめとする対中戦略や日米同盟強化を話し合うべきだ。


共産などと選挙協力した立民は振るわなかった。基本政策の異なる共産との「閣外協力」路線は、政権への道をかえって閉ざす点にも気づくべきである。与党批判票の受け皿となった日本維新の会は大幅に勢力を伸ばした。憲法改正論議をリードするとともに、現実的な安保政策を推進する行動が期待される。

立民・共産の敗北 理念なき「共闘」の結末だ
2021/11/2 05:00



第49回衆院選で、選挙区の候補者を一本化して与党と対決する野党共闘の中核となった立憲民主党共産党が、手痛い敗北を喫した。

与党の自民、公明両党が計293議席を確保したのとは対照的に、立民は公示前勢力(110議席)を下回る96議席にとどまった。共産も2議席減の10議席だった。これでは、政権交代など遠い夢である。

野党であっても、立民や共産などとの共闘に加わらなかった日本維新の会は公示前の11議席から41議席へと大きく伸び、公明を抜いて第三党になった。

衆院選の惨敗について立民の枝野幸男代表は1日、「議席を減らしたことは大変残念で、申し訳なく思う」と語った。福山哲郎幹事長は「執行部として責任がある。私自身の対応は腹を決めている」と述べ、引責辞任を示唆した。

辞任しても、基本戦略の見直しが伴わなければ、立民は今後も同じ轍(てつ)を踏むことになるだろう。

枝野、福山両氏は、野党共闘について「一定の成果はあった」と口をそろえた。

だが、それよりもはるかに大きな負の影響があったと認識すべきである。

立民が、共産から「限定的な閣外協力」を得るという連立政権樹立の方針で選挙協力を進めたことが最大の敗因である。同じ野党でも、共産との連携から距離を置いた国民民主党や維新は議席数を伸ばした。一目瞭然ではないか。

共産は、天皇自衛隊日米安全保障条約の最終的解消を目指している。国の基本政策で立民と共産は相いれないということだ。

立民の前身の一つである旧民主党の政権も含め、政府は共産について、いわゆる「敵の出方論」に立った暴力革命の方針に変更はないとみて、破壊活動防止法上の調査対象団体にしてきた。


これらから目をそらし、選挙共闘を進めても、有権者から政権を託すに足ると評価されるのは難しい。立民の最大の支援組織である連合の芳野友子会長が、立民と共産の共闘について「連合の組合員の票が行き場を失った。受け入れられない」と批判したのはもっともである。



来夏の参院選について、立民も共産も協力を進める構えだ。立民が有権者の厳しい視線を受け止めないようでは、与党にとって代わる勢力の構築は難しい。

東京新聞

<社説>政権継続も厳しい審判 民意の覚醒が変化促す
2021年11月1日 07時17分

 衆院選自民党単独過半数を維持したが、甘利明幹事長が小選挙区で敗北し、辞意を固めるなど厳しい選挙戦を強いられた。
 国民を蔑(ないがし)ろにし、権力の私物化が指摘された「安倍・菅」政治を清算しようとしない岸田政権に、有権者が不信感を募らせたからにほかならない。主権者としての目覚め、覚醒した民意こそが変化を促す。自公政権は継続するが、岸田文雄首相は有権者の審判を厳しく受け止める必要がある。
 今回の衆院選は、自公連立に政権を委ね続けるのか、立憲民主党など野党勢力に政権を託すのかを問う政権選択だった。
 与党は過半数を維持したとはいえ、決して「白紙委任」ではないことを、引き続き政権を担う人たちは肝に銘じなければならない。
 菅前内閣の終焉(しゅうえん)とともに発足して間もない岸田政権は、実績を上げるには至っていない。岸田氏は「未来選択選挙」を掲げて選挙戦に臨んだとはいえ、政権運営能力そのものは未知数だ。
◆問われた「安倍・菅」政治
 有権者は岸田政権に信頼を置いたわけではなく、首相のお手並み拝見という結果にすぎないと、政権は受け止めた方がよい。
 選挙では、新型コロナウイルス感染症から国民の命と暮らしをどう守るのかはもちろん、感染拡大で停滞した経済をどう立て直すのか、そして、安倍・菅政権の九年近くで傷ついた民主主義をどう再生するのかも問われた。
 さらに、選択的夫婦別姓の是非や性的少数者(LGBT)差別解消に向けた法整備など、社会の在り方も主要な争点となった。
 もちろん政権選択の衆院選である以上、選挙結果は現政権の継続を意味する。ただ、それは政権や国会を、意のままに運営していいという意味では決してない。
 憲法一五条は、国会議員を含む公務員はすべて「全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定める。与野党を問わず、議員に選ばれた以上、支持者だけでなく支持しなかった人たちの意見にも耳を傾けなければなるまい。
 岸田氏が強調する「聞く力」も本来、自民党や与党支持者以外に使われてこそ、意味がある。
 新型コロナの新規感染者数は減少傾向にあるが、感染症流行期の冬にかけて、コロナ感染が再び拡大する恐れも指摘される。
 自民党は公約にワクチン接種推進や病床・人材の確保、人流抑制や医療確保のため行政に強い権限を与える法改正などを掲げた。
 これまでの政権のように独善に陥り、国会や記者会見などで国民への丁寧な説明を怠れば、対策の実効性を上げることはできない。必要であれば、野党の提案も大胆に採用する度量が必要だ。それこそが聞く力にほかならない。
◆分配優先求めるうねり
 経済政策も同様である。自民党は「成長と分配の好循環」を掲げながらも成長優先を強調した。まずは経済成長実現のための対策を講じ、「新しい資本主義」の在り方を模索するのだろうが、岸田氏が評価する成長優先の「アベノミクス」こそが格差を拡大させたとの指摘に向き合う必要がある。
 選挙戦では、成長よりも分配を優先すべしとの国民の思いが、大きなうねりになったことは否定できまい。分配をどう増やし、格差を縮小していくのか、政権として真剣に考える必要がある。
 指摘せざるを得ないのは岸田氏が、九月の自民党総裁選時に「聞く力」とともに強調していた「民主主義の危機」を、首相就任後は語らなくなったことだ。
 今回、その是非が問われた「安倍・菅」政治は、政権中枢に近い人たちの優遇に権力を使い、異を唱える人を排除する側近政治、換言すれば、主権者である国民や国会を軽視する政治だった。
 森友・加計学園桜を見る会を巡る問題、特定候補者への巨額資金提供、日本学術会議会員候補の任命拒否は、真相が解明され、国民に説明が尽くされたとは言い難い。再調査や決定撤回は毀損(きそん)された民主主義の基盤を再生する作業だったにもかかわらず、岸田氏をはじめ自民党全体が否定的だ。
 前政権の「負の遺産」を清算しようとしないことで募る有権者の不信を直視せねばなるまい。
◆民主主義再生のために
 二年弱のコロナ禍で私たちは、自らの選択が自分や家族、親しい人たちの命や暮らしに直結することを思い知らされた。
 政権の選択肢を示すことは与野党を問わず政党の責任だが、国や地方の政治を変えるにはまず、私たち有権者が目覚め、積極的に政治に関与しなければならない。
 来年夏には参院選がある。覚醒した民意こそが政治を変え、民主主義を再生する。今回の衆院選がその転換点になると信じたい。