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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「開かれたインド太平洋」に関連した、最近の新聞社説を集めてみる。

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(社説)日米豪印会合 安定を支える枠組みに

2021年3月16日 5時00分

 台頭する中国をにらんだ結束であることは明らかだ。ただ、地域の緊張を高め、分断をもたらすことになっては元も子もない。国際秩序の安定に資する枠組みとせねばならない。

 日米豪印4カ国による初の首脳協議がオンラインで開かれ、「自由で開かれたインド太平洋」に向けた関係強化をうたう共同声明を発表した。新型コロナのワクチン供給や気候変動対策、海洋安全保障での協力のほか、年内に対面による首脳会談を行う方針も確認した。

 「4」を意味する英語にちなみ、Quad(クアッド)と呼ばれるこの枠組みは、安倍前首相が第1次政権の時に提唱した。各国の対中姿勢の違いなどから曲折もあったが、近年、局長級、外相級と会談のレベルをあげてきた。

 今回の首脳級協議は、中国を「最も重大な競争相手」と位置づけるバイデン米大統領の呼びかけで開かれた。この後、日本との外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)、中国との外交トップ会談、そして菅首相の訪米へと続く、バイデン政権の対中外交の第一歩といえる。

 米国がトランプ前大統領時代の一国主義を改め、アジアへの関与や同盟関係を重視する外交に転じたことは歓迎できる。とはいえ、対中包囲網の強化とみられ、対抗措置がとられれば、対立はエスカレートする。

 中国側にはQuadを「インド太平洋版のNATO北大西洋条約機構)」につながる動きと警戒する見方もある。軍事とは一線を画した協力関係であることを明確にすべきだ。

 そもそも4カ国の中国への向き合い方は一様ではない。特にインドは「非同盟」の伝統を持ち、中国とのバランスに腐心している。今回の首脳協議で、コロナ対策など地球規模の課題への対応を前面に出したのも、インドへの配慮からだ。中国への対決姿勢を強め、足並みが乱れては本末転倒である。

 南・東シナ海での強引な海洋進出など、既存の秩序に挑む中国の行動を抑えつつ、対話を重ね、協調による共存をめざす。共同声明がうたう「国際法に根差した、自由で開かれ、ルールに基づく秩序」にどう中国を巻き込んでいくか、粘り強い外交努力が求められる。

 人権や法の支配など、価値観の共有を協力の基礎に置く4カ国側の姿勢も問われる。例えば、インドは核不拡散条約に加盟しないまま、核兵器を開発・保有し、その人権状況にも国際社会の厳しい目が注がれる。自らの課題に目をつぶることなく、普遍的価値の拡大に貢献できれば、この枠組みは対中という思惑を超えて、国際秩序を支える意味をもつに違いない。
www.asahi.com

朝日新聞デジタル

(社説)日米2+2 対決より共存の土台に

2021年3月17日 5時00分


 安倍氏から菅氏へ、トランプ氏からバイデン氏へ、日米のトップが代わって初の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が東京都内で開かれた。

 「米国第一」のトランプ外交に振り回され、米国製兵器の大量購入を迫られた同盟関係のゆがみをただし、地域や世界の安定の礎となる協力関係を築かなければならない。

 最大の課題は、軍事的にも経済的にも台頭著しい中国にどう向き合うかである。

 会談後に公表された共同発表では、中国に対する厳しい姿勢が際立った。「既存の国際秩序と合致しない行動」を名指しで批判し、中国海警局の船舶に武器使用を含む強力な権限を与えた海警法への「深刻な懸念」を表明した。米国の日本防衛義務を定めた日米安保条約5条の尖閣諸島への適用も再確認した。

 南・東シナ海での強引な海洋進出をはじめ、香港での弾圧、新疆などの少数民族に対する人権抑圧など、中国共産党政権の強権的な手法に問題があるのは確かだ。共同発表が、これらに「深刻な懸念」を示し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調したのは当然である。

 一方で、日米両国ともに、中国とは経済面などで深い相互依存関係にある。気候変動や新型コロナ対策など地球規模の課題に取り組むうえでも、協調は欠かせない。米中対立を先鋭化させず、健全な共存をめざす土台として日米同盟をいかす知恵が求められる。

 共同発表は「日米同盟の強さは、共通の価値に基づく」として、「自由で開かれたインド太平洋」の推進を掲げ、「志を同じくする」諸国とのネットワークの強化を盛り込んだ。だとすれば、日米両国には、それぞれ取り組むべき課題がある。

 日本にとっては、韓国との関係改善が急務だ。日米韓の連携は、対北朝鮮政策を進めるうえで欠かせない条件である。米国にはトランプ氏が離脱を決めた環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰を求めたい。

 気がかりなのは、共同発表に「日本は国家の防衛を強固なものとし、日米同盟を更に強化するために能力を向上させる」と明記されたことだ。日本の軍事的な役割を強化し、コロナ禍で逼迫(ひっぱく)する財政のさらなる悪化にもつながりかねない。

 米軍普天間飛行場辺野古移設を「唯一の解決策」と繰り返しながら、日米地位協定の見直しには言及がなかった。これでは「同盟強化」を唱えても、幅広い国民の理解は得られまい。ましてや、日本が米国の対中戦略にのみ込まれ、米中の軍事対立の最前線に置かれるようなことがあってはならない。
www.asahi.com

日米2プラス2 同盟を地域安定のてこに

オピニオン

朝刊政治面
毎日新聞 2021/3/17 東京朝刊 818文字
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 バイデン米政権発足後初の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が東京で開かれた。最大のテーマは、台頭する中国にどう対応するかだ。

 沖縄県尖閣諸島周辺への度重なる領海侵入や、中国公船の権限を規定した海警法に対する「深刻な懸念」を共有した。


 共同発表では、中国を名指しし、「尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも引き続き反対する」と批判した。

 宇宙やサイバーといった新たな領域での防衛協力を強調したのも、中国を念頭に置いたものだ。

 ルールに基づく国際秩序に挑戦する中国に連携して対処する、という強い姿勢を鮮明にしたといえよう。

 バイデン政権は安全保障を担う主要閣僚の最初の外国訪問先に日本を選んだ。日米同盟を重視している表れだ。


 準備は入念だった。会合に合わせて国務省は「頑強な日米同盟の再確認」と題する文書を公表し、日米関係の強化をアピールした。

 米政権は中国を「唯一の競争相手」と位置づける。会合に先立ち、日豪印との初の首脳協議を先週、オンラインで開催した。


 アジアや同盟を重視する姿勢は歓迎できる。ただ、米国には、中国に単独で対抗するのは難しいという現実もある。

 中国は今後十数年で経済力や軍事力で米国と肩を並べるといわれる。これに対抗するネットワークの構築は米国の将来を左右する。


 日本も、目の前の課題に対処するのはもちろん大事だが、長期的な視点で中国との関係を見据える必要がある。

 重要なのは、安全保障における米国との連携と、経済での中国との協力をどう両立させるかだ。

 中国の突出した行動を日米がけん制することはできるだろう。同盟の結束力が強まれば、その効果も高まる。

 だが、中国を敵対視し、報復的な措置をとれば、協力の余地は狭まる。同盟を中国との覇権競争の道具にしてはならない。

 日本の国益は、周辺地域の安定と繁栄にかかっている。そのためには、中国とも共通利益を探る戦略的な対話が欠かせない。
mainichi.jp

<社説>米国の中国戦略 対抗しつつ共存を図れ

2021年3月17日 08時10分
 中国とどう向き合っていくのか。日米両国が開いた閣僚会議のテーマはこの難題だった。中国とは対抗しながらも共存を図ることを忘れてはならない。自由主義諸国の結束はそのためにも必要だ。
 日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は共同文書で、中国について「ルールに基づく国際体制を損なう、地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対する」と批判した。
 2プラス2に出席したブリンケン国務長官とオースティン国防長官は日本に続いて韓国を訪問する。この歴訪の直前には、米国の呼び掛けでインド太平洋地域の日米豪印四カ国による初の首脳会議がオンライン形式で行われた。
 こうした矢継ぎ早の動きを見せるバイデン米政権の狙いは、民主主義、人権、法の支配という価値観を共有する同盟国・友好国と、対中政策をすり合わせて足並みをそろえることである。
 日米豪印四カ国の首脳会議は共同声明で、四カ国が「自由で開かれたインド太平洋のための共通のビジョンの下で結束している」とうたった。
 この「クアッド」と呼ばれる四カ国の枠組みを、バイデン政権はインド太平洋政策の基盤と位置付ける。
 一方、伝統的に「非同盟」の立場のインドは、クアッドが「対中包囲網」と受け取られることを懸念し、首脳会議の開催を渋っていた。そのインドを引き込んだ意味は大きい。
 ただし、インド太平洋は対立よりも共存・共栄の大洋でなくてはならない。世界経済の成長センターであるアジアで緊張が高まることは誰の得にもならない。クアッドは地域の安定を担う役目を務めるべきだ。
 バイデン政権が同盟関係を重視し、同盟国と意見調整を重ねることを歓迎したい。ずぬけた国力の米国が同盟国を強引に付き従わせるような時代ではない。長期的視点に立った対中戦略を共に練り上げてほしい。
 通商、軍事、ハイテクなどあらゆる分野で繰り広げられる米中の覇権争いは「新冷戦」とも呼ばれる。バイデン大統領は中国を「最も重大な競争相手」と見なす。
 同時に気候変動、感染症という地球規模の問題では中国と協力していく姿勢も見せる。
 米国はこうした「競争と協力」のバランスを崩さぬよう心掛けてほしい。


www.tokyo-np.co.jp

資料として集めた理由は……、それぞれ中国に対して及び腰な面、表現もあるけどこの戦略を基本的に是としているなあ、ということがちょっと興味深かったからであります。
もともと「開かれたインド太平洋」構想自体が、安倍政権8年で生まれ、成長した概念でありました。さらに源流をたどれば短命麻生政権の「自由と繁栄の弧」にもつながるかもしれない。そんな、安倍政権と切っても切り離せないこの構想が…アメリカがこの概念を取り込み、しかもトランプ政権からバイデン政権に代わるに際して「いや中国には自分こそタフに渡り合える」というPRの意味もかなりあるのだろう、むしろこの地政学的な戦略はさらにクリアに「対中国」を意識したものとなっている。安倍政権が今あっても…、そして現実に、その後継政権である菅政権も、やや引くレベルで(笑)アメリカを主軸に「自由で開かれたインド太平洋」は大きなうねりとなっていた。


そのうねりは、上記の社説を出した新聞社でさえも、基本的に肯定的なスタンスを取らざるを得ないようなものになってきた……という話。