zuisho.hatenadiary.jp
という記事が話題で、ブクマのコメントも多い。
※何度も書いてる余談の話なんだけど、記事そのものへのリンクと、そのブクマへのリンクで、サムネイルの色とか形とか変えられませんかね。そうすればすぐ見分けがつく。
皆さんも、記事そのものを紹介したいときと、記事への反響たるブクマを紹介したいときってあるでしょ。一目でわかると便利じゃないですか?
で、はてな匿名ダイアリーで何度かみたんでそのコンセプトを借り、ブクマカをDisるタイトルにしてみたわけだが……いやタイトルは確かに乱暴だった。
記事の方にも当方は不満や異論もある。
まあ、でもそういう意味から、自分も少し語りたい…いっても、ここでは何度も書いたおなじみの議論すぎて、申し訳ないので簡略に(最後にリンク集を置いておくから、興味ある人は個別に読んでくれ)。
今回はダイジェストつーか……、
つまり、ケッコンのホンシツを考えたまえ、ホンシツを。それもホーテツガクテキな視点からだ。
ということで、はてな界隈では以前から山形浩生や稲葉振一郎氏らとならんで三悪人、パブリックエネミーとされておりました、大屋雄裕氏の言葉である。
↓
(前略)・・・私自身は同性間の「婚姻」というのは筋の良いアイディアではないと思っている。何故なら、(日本法上の)婚姻は(1)共同体形成機能と(2)嫡出推定機能が混在した不純契約だから。同性間において(2)の機能は意味がないのだが、元々両者を結合させておく論理的必然性はなく、いわば悪質な抱き合わせ販売である。
従って(1)(2)を別々の契約類型として整理した上で、同性間だろうが多人数だろうが問題のない(1)を開放すれば良く、(2)は論理的に1対1の男女のあいだでしか成立しないのでそのような限定は維持すれば良い(生計をともにするつもりはないが特定の相手としか安定的な性的関係を持たないと決めた場合など、(2)のみを締結するパターンもあり得るだろう)。
私個人としては好いた女と所帯を持ちたいと思っているので(1)(2)をセットで購入する所存であるが、人様がどうするかはご自由ご勝手に決めれば良いと思う。つまり私は自由主義者であり、共同体の拘束を肯定するアメリカ流のcommunitarianでも日本のオヤジ保守でもないし、国家の役割を重視しているのでlibertarianでもない。まあold liberalとかtrue liberalとか呼びたまえ。
www.axis-cafe.net
「婚姻は(1)共同体形成機能と(2)嫡出推定機能が混在した不純契約」
端的やろ。わかりやすい。
大屋氏の説明に不満なら、清水雄大氏の論文に、もっと細分化したものがある。
清水雄大氏の論文から
●配偶者相続権(一)●税制・社会保障における優遇(二)●病気療養時などにおける権利・利益(三)●夫婦財産制(四)●パートナーシップ解消時の法的保護(五)●不法行為や犯罪による死亡時の損害賠償請求権など(六)●刑事法上の権利・利益(七)●性同一性障害特例法の非婚要件(八)●外国人パートナーの在留資格・帰化(九)●子を育てる権利(十)●その他家族法上の権利義務(十一)●住宅の確保(一)●勤務先からの手当支給,休暇取得など(二)●生命保険金の受取人指定など(三)●銀行取引など(四)●その他身近なサービス(五)
www.dropbox.com
「結婚」という制度は、なぜなのかその正当性は一から吟味されないまま、両者が相互にこれらの権利(義務)を『一括して』与えるようになっている。バラ売り、なぜか不可。
そういう「結婚=権利の一括抱き合わせ販売」こそが問題なのではないか。
「結婚しないと病院で面会する権利もないんです!」という問題があると。
そのときに「じゃあ同性同士でも結婚できる制度が必要だ」より「夫婦以外でも、本人の意思によって、万が一の重病や手術の時に面会や手術に同意する権利をあらかじめ与えておく制度が必要だ」のほうが、より合理的かつ広範囲に恩恵がいきわたるのではないでしょうか。
m-dojo.hatenadiary.com
というか、最初に紹介した記事への不満は「パートナー制度は、結婚より権利が少なめであって当然」みたいに読める表現があることなんです。いや、そういうのがあってもいいんですよ。上に挙げたような権利のうち、「4と9は抜きで」とかね。でも結果的に、結婚・夫婦とまったく同じ権利や義務をチョイスしても構わない。チーズ牛丼を頼んでも、牛丼を頼んでチーズをトッピングしても同じでしょ(いや違うか?)
そして、それを結婚と呼ぼうが、パートナーシップと呼ぼうが、シビルユニオンと呼ぼうが、或いは「あんにゃもんや/あらばかべっそん/あかちばらち」と呼ぼうが、それはかまわんのではないかと思う。
いやわかる。それでも「結婚」がいいのはなぜか。それは「伝統」があって、「神聖」で、「高貴」で、「尊い」からなんでしょ。つまり、いい感じの気分が味わえる。ゴージャスである。
それを、われらが忠誠をささげる「国家」によって認定し、祝福してほしいと。だからこそ国家制度の下に結婚は置かれなければならぬ、と。
祖国は諸君を誇らしげに見つめている
栄誉ある死を恐れるな
祖国のために死ぬは生きること!
おお 自由よ その胸の中へ
我等の魂は死をも厭わない
愛しき 崇拝すべき祖国よ
万歳!万歳!
そういう皆様の国家への忠誠と愛には頭が下がるが、そうでない考え方もあるのだ、ということを少し念頭においていただければ幸いであります。
もちのろん、国家でなく、神と教会の前に結婚は成立するのである、という考え方やご信仰もありましょう。
そういう人にとっては「結婚」こそが神の祝福であり、パートナーシップなど、人間が神にせまろうつバベルの塔のごとき不遜と涜神の所業かもしれぬ。サタンよしりぞけ。
そういう皆様の神と教会への忠誠と愛には頭が下がるが(以下繰り返し)
……すまんすまん、そういうひとばかりじゃないね、たぶん。
こういう人もいるだろう。「そんなこと言ったって現実に今の日本では、結婚に比肩するようなパートナーシップなんてない。ない以上はもろもろの権利を得るためには、『結婚』という制度をとりあえず活用するしかないのだ」
わかりみ、わかりみ。ガッテン合点。
タイトルにうたった、ブクマコメントは「考えが足りぬ」というのは( )に入れた通り、実際上というよりは本質への考察部分だ。つまりは逆にいえば、そこを考えすぎると、本当に行政に反映されるような制度改革的な(実際上の)議論とは逆に離れていくだろう、とは思う。
だが、その場合は…これもはてな界隈のひところの流行フレーズを用いれば「もっと『代用品』の顔をしろ」と。
上に書いたように「不純な抱き合わせ販売」として、2人の間にもろもろの契約関係を一括で結ばなきゃいけないこの契約、今はないから仕方なくやっているので、優れた、或いは自分が自由にカスタマイズできるパートナー契約が結ばれる状況であるならそうではなかった…。
そんな人も一定数いるのでしょう。
だから現実問題としては結婚にしくはなし、というのもわかるのだけど、それとは別に法哲学的…あるいは「机上の空論」と呼んでもいいのだが、そういう形で理想の形態を描くとき、それは今の結婚制度と同じですか。異なっていますか?
一応余談。上で紹介した清水雄一氏ご自身は「婚姻制度自体を捨てる」的な考え方には同意してないことを付け加えておく。
ただし、読んだうえで説得力があまりない、とも感じています。
https://core.ac.uk/download/pdf/234716387.pdf
最初に書いた、各種の過去記事リンク集。
m-dojo.hatenadiary.com
この中でも特に今回の話題とつながるのは、上に挙げた記事以外では
m-dojo.hatenadiary.com
など。
【追記】1日遅れで、こういうまとめがバズったが。
君たち、これがつながった話であることは気づいているよな???
同性愛者じゃなくても同性婚できるってなったら、結婚する人すごく増えると思う。「養子は後見人は?」「1人でも生きやすい世の中にしてほしい」 - Togetterb.hatena.ne.jp【ドヤドヤドヤ顔】だから「結婚」は特殊な"一括契約"で,この個別契約化もあるのでは…との我が提言<a href="https://m-dojo.hatenadiary.com/entry/20150222/p3" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://m-dojo.hatenadiary.com/entry/20150222/p3</a> <a href="https://m-dojo.hatenadiary.com/entry/20180806/p1" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://m-dojo.hatenadiary.com/entry/20180806/p1</a>に皆様やっと追いついたね(上から)
2020/10/31 00:04
同性愛者じゃなくても同性婚できるってなったら、結婚する人すごく増えると思う。「養子は後見人は?」「1人でも生きやすい世の中にしてほしい」 - Togetterb.hatena.ne.jpつい一昨日ほぼ同じこと言ってるズイショさんのこの記事( <a href="https://zuisho.hatenadiary.jp/entry/2020/10/28/234504" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://zuisho.hatenadiary.jp/entry/2020/10/28/234504</a> )がフルボッコだったのに、舌の根も乾かぬうちにこの反応の違いはなんなん…はてブ、ホントまともに相手するだけ無駄
2020/10/30 18:02
結婚するって、本当ですか: 365 Days To The Wedding (2)
- 作者:若木 民喜
- 発売日: 2020/11/12
- メディア: コミック