まず画業40周年企画について
最新のビッグコミックスピリッツが「ゆうきまさみ特集号」(実質)に。
連載(「新九郎、奔る!」)1本、
読み切り(究極超人あ~る)1本
そして対談。
で、ここから、40周年記念イベントの情報を抜き出してもばちは当たるまい。
ぶっちゃけ、この前35周年とかやったよな、早いよなあ…とか、究極超人あ~るから〇年、パトレイバーから〇年…もあるからなあ、とか思いつつも、ぶっちゃけ、そういう企画で客と金が入るからだろうな、というみもふたもない話。
そういう「太いファン」を持っているってことなのだ。「俺もXXから〇周年なんだけど……出版社から企画が来ない…」と嘆くでないぞ、同業者諸氏。
それで最近の「新九郎、奔る!」は何が凄いのか…「ミニチュア化した中世地域紛争」の読みやすさ
もともと「新九郎、奔る!」は関東の覇者、最初の戦国大名…たる、北条早雲の物語である。あまりにその前身から描いているので、それを連想しにくいところは「ヒストリア」と同じ。あるいは「日露戦争物語」と同じ。……後者を譬えにつかうなっ。
ただ、この荏原篇の前の段階は「応仁の乱」が舞台で……その複雑怪奇さは、だからこそ面白い面も間違いなくあるものの「ちょっ、複雑でわからんわ!!」というのも無理はなかった。
ここ数年の「中世ブーム」先駆けとなった呉座勇一「応仁の乱」だって、実のところ読んでみるとかなーり複雑だったよ、アレ(笑)
- 作者:呉座 勇一
- 発売日: 2016/10/25
- メディア: 新書
ただ、そんな中で、家の政治的な浮き沈みや、昨日の敵は今日の友、といった修羅場をたっぷり経験した新九郎が、父親の政治的失脚などにも伴って、当分の間、在地の統治に精を出すか、という感じで地方に向かう。
この、「政治の中心は京都だが、その中央政界で政争を行う権力者の財政・軍事力の供給源は各地方に分散している」というところがややこしいのだが……
作者も「新九郎の在地に関する史料はほとんど残っていないので、基本的にフィクションを書いている」と認めている荏原篇、何がおもしろい部分なのか。
2019年の1月
ところで『新九郎、奔る!』は、先月今月と、フィクション要素をちょっと前面に出してみました。そうしないとどうしても学習漫画のようになってしまうので。まもなく「荏原編」というのに入ってゆく予定なのですが、更にフィクション要素が増えると思います。史実がよく分からないので(^_^;)
— ゆうき まさみ (@masyuuki) 2019年1月24日
これまでは「京都の応仁の乱」という下駄を履かせてもらっていたので、「荏原編」からが正念場かなあと。
— ゆうき まさみ (@masyuuki) 2019年1月24日
窮地に次ぐ窮地!新九郎に“落馬”の危機!領地・荏原での生活にも慣れ、
領主名代として、存在感を増し始める新九郎。
しかし、それを快く思わない伯父・珠厳は、
新九郎を亡き者にしようと、自邸の酒宴での暗殺を企む。
一方、京では父・盛定が
将軍・義政の怒りをかい“無役”にーーー
荏原でも、京でも、
窮地の連続の伊勢家親子だが……
新九郎、盛定、共に人生から“落馬”待ったなし!?
伊勢家の今後を左右する、事態急変の第5集!
週刊スピリッツに移籍と同時に、『新九郎、奔る!』は史実ベースから離れてフィクションベースの期間に突入しました。なぜならば、この時期荏原で何が起きていたかという史料が全くと言っていいほどないからなのですが、野放図に作り話を描いたのでは「なぁにが歴史ドラマなんだか」分からなく↓
— ゆうき まさみ (@masyuuki) January 24, 2020
なっちゃうので、しばらくの間「歴史の上で這い回る伊勢新九郎(と、荏原の人々)」を意識して、想像力を駆使しながら描くことになりそうです。上手く描ければ面白いものになると思うのですが。
— ゆうき まさみ (@masyuuki) 2020年1月24日
自分なりにひとことで言うと、【中世版の、政治面も含めた「皇国の守護者」的な味わい】なわけです。
「銀河英雄伝説」は銀河帝国、自由惑星同盟、フェザーンという3つの国の大状況も当然描かれた。三国志も同様。だが皇国の守護者はいっちゃえば「撤退戦のしんがりを任された一部隊」という、小さい状況にグーっとカメラを寄せて、クローズアップしている。そして、小さな部隊が戦う小さな舞台(ダジャレ)だからこそ、まさに戦争の本質を描くような事態が解りやすく、整理されて描かれる。
もっと別の、似た例を挙げれば「七人の侍」か。
あれこそ、小さな村を襲う、ごく小規模の野武士集団と、それに対して村人を指揮して戦う侍7人という、小さな小さな舞台である。だからこそ、戦術面戦略面での軍事や、民衆を動員する政治などの本質を描けている。
「新九郎、奔る!」の荏原篇も、まさにそのような形で、ごく小さな、京都での小武家貴族の地方領だからこそ、
そこにやってきた、まだ家督を継いだばかりの若き貴公子だからこそ、わかりやすく「この時代の紛争はどのように発生し、拡大し、どうやって収束させるのか」が描けるのだと思う。
やはり領主の「貫目」、カリスマが必要となる。
武力も威厳も財力も見せねばならない。
地方抗争なんて数人、十数人単位なのだから、個人の武勇や、腕っぷしの強い部下1人、などが非常に重要な意味を持つ
その一方で、名目も義理もなく「ヒャッハー、強いものが全てを取るのが正義だぜ!!」というわけには、当時もいかない。
むしろ、寺社に残っていた領有権を示す古文書なんかが有効だったりする。
どこかに不正があるのだが、当事者にしてみればそれは「円滑に共同体を運営する大人の知恵」だったりする。
しかし、その旧弊をただす、の名目で、現状のパワーバランスを壊したい新興勢力がいて、それが合従連衡する・・・・・・・・・・
そんな政治劇(一部軍事劇)を、あのシャフト内の緊迫した社内政治の駆け引きや、
その後多数のフォロワーを生んだ2巨頭…後藤隊長と内海課長の「電話での駆け引き」を描くゆうきまさみ節で奏でるのである。
そこは面白くならないわけがないのであります。
「センゴク権兵衛」がエール
なお、「センゴク権兵衛」も、終わりを見据えているとかそんな話はどこへやら、小田原攻めの功によりまさかの大名復帰を果たしたセンゴク権兵衛が、信州小諸の新領土に入り、一から領土経営を行うことになるのだが…つまり「地方領主の統治の苦労」を描く部分も出てくるわけだが
次号予告。平山優先生曰く「依田氏は天正壬午の乱の一番のキーパーソン」。そんなカリスマ領主が治めていた土地に入る新領主の困難が予想される。 pic.twitter.com/tCx6Gsvimn
— センゴク (@sengoku_YM) 2020年9月5日
おおお、新領主の国入りと領国経営
— 陳泰瑀@オタク大名羽柴高砂侍從相模守豊臣朝臣秀陳(ひでのぶ) (@galgamekabukimo) 2020年9月5日
それは気になるテーマだねぇ
その在地衆たちはどれほど仙石氏に吸收されるか、後にどれほど上田と出石まで行ったのかもまた気になる...
ページの都合上ガッツリは描けませんが、「新九郎奔る!」の荏原編が新領主の大変さを緻密に描いてるのでそれで補完して下さい(卑怯ながら)。(宮) https://t.co/rcgJtswWYO
— センゴク (@sengoku_YM) 2020年9月6日
なに他誌の名物連載が、別の雑誌の連載に ○ミ\(・_・ )トゥ ←丸投げ してんのさ(笑)
- 作者:宮下 英樹
- 発売日: 2020/11/06
- メディア: コミック
これは2018年、センゴクでも「早雲編」が始まった時のツイート。
「新九郎奔る」は応仁の乱から始まりますね。センゴクは丁度終わったあたりです。補完して頂ければと思います。(宮) https://t.co/cQ4pFCmXyV
— センゴク (@sengoku_YM) 2018年9月16日