INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

筒井康隆『富豪刑事』は、傑作を残しても「キャラ」は残さなかった日本SF御三家(星、小松、筒井)の「例外」なのかも…

fugoukeiji-bul.com

すごくスタイリッシュで、見づらい公式サイトですが…

警視庁「現対本部」の刑事・加藤春は、銀座で行われるクラシックカーフェスティバルの警備に駆り出される。
その会場で、爆破予告事件を追う捜査一課の元同僚たちと鉢合わせる加藤。
フェスティバルの中止を進言するが聞き入れられず、犯行予告時間が刻々と迫っていく。
緊迫する現場に、新任の警部を名乗る男、神戸大助が現れる。

check-1 来た、見た、買った

check-1 来た、見た、買った

  • 発売日: 2020/04/10
  • メディア: Prime Video

てな
もんや。

なーんか、自分の知ってる原作の「富豪刑事」とは、だいぶテイストが違うようなんですけど…それでも「富豪刑事」と聞くと、やっぱり少し居住まいを正します。

ドラマは主人公が女性になったこともあり、スルーしましたが。

第一話 富豪刑事の囮

第一話 富豪刑事の囮

  • 発売日: 2016/04/01
  • メディア: Prime Video

それは、やっぱり、日本戦後SF創世記からのレジェンドのひとり、筒井康隆が、全盛期のうちに推理小説にも手を染めて作り上げた物語とキャラクターだ…ということが理由です。
推理小説としてすごく斬新なトリックや鮮やかな論理の展開があるではないです(というか、ちゃんと推理小説の体裁を整えてるのって、密室殺人とかの一、二話でしたよね??)

ただ、個人的に実家がとんでもない富豪で、その金の力を使って、普通ならあり得ないような捜査方法や事件の解決方法をとる、という骨法自体はなんとも荒唐無稽ながら、やはりリアリティとかそういうことを超えて、大変に面白いものでした。



それで、タイトルの話なんやけど。
すごく、乱暴でおおざっぱ、四捨五入どころか、九捨一入みたいな感じになるのだけど・・・・・・・、
日本のSFで、戦後をけん引して下さった表題御三家や、他も含めた「レジェンド」は、今に至るまで全く色あせないような古典的な名作をいくつも世に問うた。
今でも震えるような傑作ぞろいです。


だが・・・・・・・、おしなべて、世の文学やエンタメは「物語」以上に「キャラクター」が愛されて、生きながらえていく。ぶっちゃけ、寿命という点では「キャラクター」のほうが圧倒的に長い。

星新一はSSという技法上、ということもありましょうし、その他もろもろの理由もあろうが、古いSF作家さんの作品で、「キャラクター」としてひとり歩きさせて、簡単にいえば、このキャラで新シリーズ創りましょう!と、今の脚本家がオリジナルストーリーを描けるような、そういう「キャラクター」は、彼らの才能から考えれば十分登場させられた気もするが、結局、大まかに言えばそうはならなかった、のではないかと。


だが!その中で、「富豪刑事」は確かに例外。
連作短編で単行本1冊・・・・・これが多いか少ないかはわからないところだけど、

確かにその骨子の設定を生かして、
現役の脚本家が頭をひねれば、そこからいろいろと生み出せそうな、
そんな強度のある「キャラクター」なんじゃないかな、……と、今回のアニメ化の話を聞いて、後知恵で思いつきました。
そのへんの慧眼には脱帽。
その上でアレンジには不安ですが。



富豪刑事 (新潮文庫)

富豪刑事 (新潮文庫)

原作だと、本人は富豪であることを鼻にかけて周囲の反発を無視して強引に物事を勧めたりするようなところはまったくなく…非常にひとあたりのいい坊ちゃんです。
逆になんというか、凄くナチュラルに、「…をすればいいじゃないですか。お金?ああ、それならありますので」を提案し、上層部も仲間もあまりにぶっ飛んだ発想に思わず許可を出してしまう、みたいなテイストだったんですけどね。



ちなみに、他に日本SFのレジェンドたちの生んだキャラで、
それこそ設定を生かしてオリジナルの続篇を作れそうな独立キャラは
筒井康隆テレパス七瀬(最後に死んでしまう話が書かれているのがネックだが…)
小松左京ゴエモン(明日泥棒のやつね)
星新一のほら男爵


そしてもっと若手の平井和正犬神明、は言うまでもないやな。


自分は結局、あんまり詳しくないかも。もっと読み込んだ人なら、ほかに思いつくキャラクターもあるかもしれない。



放送後のこの人の感想