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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

見る前に語ろう「第9地区」。あるいは「SFで描くマイノリティ」

映画「第9地区」の評判がいいわー。
http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20100413
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20100413
パンクラスの中の人まで。
https://twitter.com/_PANCRASE_/status/12171797414
ここではありがたいことに、見た人の感想をまとめてリンク張ってある。
http://d.hatena.ne.jp/D1953ColdSummer/20100414/p1


いまさら「映画秘宝」(会社の人からもらった。まったくいい職場だよ(笑))を、ネタばれしないようにとびとびにしつつ読んでみると、監督はかなり無名、若手で、予算としてもけっこう低予算だというじゃないか。そういうのがヒットすると、県立高校が甲子園で活躍したのを見るように、にわかファンにもなってくるな(笑)。
最近は気づけば8割がた、実際の歴史に基づく映画しか見なくなってたけどこれは行きたい。

んで、上のブログから引用すると

この映画では、180万人のエイリアンが難民としてヨハネスブルグにやってきます。この設定は、『ウルトラマン』のバルタン星人を思わせるものがありますね。

おれも大概トーシローなのに、いいSFのアイデアを聞くとなぜか「あ!やられた!!」とか「それ俺も考えてたのに!」とかちょっと思っちゃうんだよな(笑)。どこの業界人だよ。
実はバルタン星人と移民の話って…実際のドラマで出たかはちょっと覚えてないけど、これを編集した映画が80年代に公開されたとき、コロコロコミックでは漫画化もされた。
そのとき、このやり取りを膨らませて(原作どおりか?)、「自分の星が無くなっちゃったんで、移民したいよう」と最初バルタンが言ってきた(イデ隊員だかアラシ隊員に乗り移って会話)際に、ハヤタ隊員はまず、友好的に
「いいだろう。君たちが地球の法律や習慣を守るなら不可能ではない・・・で、何人?」
「40億人」(※バルタン星人はバクテリアぐらいの大きさに変形して、円盤に全員入っているという設定)
「そりゃ人大杉
というようなやり取りがあったんです。

で、コドモゴコロに「そうかあ。平和的に宇宙人が暮らすこともあるのかあ。そりゃ楽しいかもしれないな」と感じました。・・・そして、のちに読んだ藤子・F・不二雄の「21エモン」の設定ともあいまって、のちに円谷プロが金に困って「ウルトラマンキッズ」だとか、ゆるゆる、ぬるぬるのホームドラマみたいなデフォルメウルトラシリーズを作っていた時

「そんなんならバルタン星人やメトロン星人がご近所に住むホームドラマ『となりのバルタンさん』を製作すればいいのに!そういうのを企画もできねぇからだめなんだ」というふうに思ったものでした。

こういうふうに「僕の考えた新シリーズ」企画を胸に秘めているようだと非常にイタいですね(笑)。世間的には「ゴジラ」「ガンダム」「戦隊」「必殺」などにもこういう傾向があるようです。もちろん、正常な学生・社会生活を営む中ではこの企画を発表する機会もないまま、なぜかこのアイデアが流出し、今回の映画にパクられたわけです。
だれかいい弁護士いないか。


ただ、そのころは複雑な民族問題や移民問題などを知る由もなく、バルタンやメトロンがふつうに移民して普通に暮らすというイメージ。(当時はバブルで、普通に「好景気で人が足りないから移民・外国人労働者受け入れを」という議論なんかがある時期でした)そのへんは、正直この映画のほうが一歩(一歩かよおい)先であることは認めざるを得まい。

SFというのはどうしてマイノリティ問題をこうも印象的に映し出すのか

むかしっからだよね、本当に。
SFのレジェンドの一人アイザック・アシモフが非常にリベラルな人で、しかもロボットSFを打ち立てた際に、まだ現在進行形で問題が深刻だった「白人・非白人」の問題を「人間とロボット」に置き換えたりといった

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)

こともあるだろうけど、もともとSFの主人公となる人間は必然的に能力が優れていようがなんだろうが「少数派」「異人」であるからかなあ。「選ばれたものの恍惚と不安」だって、反転したマイノリティ性をテーマにすることはできる。


ま、わかんねけど、これまで「マイノリティの比喩としてのSFもの(特に超能力)」については何度か論じました。「・・・と読む前は思ったけど、読んだら違ってた」も含めて(笑)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050722#p4
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090301#p3
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20091113#p3
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20100113#p5
椎名高志絶対可憐チルドレン」について論じたものが多いな

上のコマは2巻から

絶対可憐チルドレン 2 (少年サンデーコミックス)

絶対可憐チルドレン 2 (少年サンデーコミックス)

あ、今見たら最新刊はDVD付き?あざといっ。


手塚治虫も「鉄腕アトム」の中で、ロボットを比喩として人種問題をいろいろ描いたことは周知の通りですよね。
http://plaza.harmonix.ne.jp/~kotani/right.html

 鉄腕アトムの中にはロボットが大統領になったり、市長になったりして人間から反発をうけるエピソードがいくつかある。「デッドクロス殿下」では、デッドクロスの作ったロボット「ラグ」が大統領選挙でデッドクロスに勝ってしまい、怒ったデッドクロスが「ラグ」を襲うという物語だった。
 鉄腕アトム自体が手塚治虫本人が白人から差別的扱いを受けたという原体験が元になっている、というのは周知の事実であり、多くのエピソードで、人間対ロボットの図式で、差別が表現されている。

ほかに思い出すのは「超能力者への反発、恐怖、迫害」を描いた

七瀬ふたたび (新潮文庫)

七瀬ふたたび (新潮文庫)

とか。

星新一なんか、それをさらに一回転させた「コビト」という作品を・・・あれ?(※後を参照)

ひとにぎりの未来 (新潮文庫)

ひとにぎりの未来 (新潮文庫)

筒井康隆の短編「こぶ天才」も味わい深い

宇宙衛生博覧会 (新潮文庫)

宇宙衛生博覧会 (新潮文庫)

筒井康隆で現在流通しているのは再構成されたものだから、今は別の文庫に収録されているかなあ・・

サトラレ」も最終的な出来はともかく、志はけっこう高かった。

サトラレ(1) (イブニングKC)

サトラレ(1) (イブニングKC)

永井豪が描いた「鬼」は、今では電子データのダウンロードで読める様子
http://dl.rakuten.co.jp/prod/800219688.html


上のラインナップを見れば分かるように、わたしはもう、SF界内部の水準でいうなら白帯ですよ。アメリカあたりで水晶玉とか黒道着をギミックに、あやしげな東洋ムードで売っているいんちき空手家みたいな(笑)。
ホンモノのSFマニアが「えーいぬるい、SFでマイノリティ問題を描いた作品はこれじゃ!」とラインナップしてほしい。

そうか、星新一「コビト」をそう使うか・・・予想外な…

上で、さすがに星新一の作品がどこに収録されているかまでは把握してないので

星新一 コビト

でグーグル検索。するとこういう結果が出た。

「ひとにぎりの未来」という書名を見つけるのに苦労したよ。
わざわざAAにした人もいる。モナーを使っての漫画化の構成力もかなり優れているし、そもそも他の作品もAAにされていてこれ自体に政治性は無いようなんだが
http://www.toofectarts.com/videoshelf/shortshort/400/494.htm
【一覧】
http://www.toofectarts.com/videoshelf/shortshort/sorted_index.html


今の、2010年の、ど真ん中の時事問題と絡められての言及がかなり多いのだ。なるほど、元から法哲学的な意味ではすごく優れた短編だが・・・・・・これには触れないでいようかと思ったが、見て驚いたものを、見なかったふりをするのも負けたようで悔しいので書いておくわ。
そういう文脈でのニコニコ動画(というのか?)なんかもあった
http://www.nicovideo.jp/watch/nm5278587
NHKのあの番組でドラマ化されたかと思ったらテキストが淡々と表示されるのみ。コメントは批判的なもの多し。

しかし星新一のSSがAAになる(ややこしい)と、ついつい読んじゃうわ

テーマのマイノリティとかとは関係ないが、例えばやっぱりこういうのおもしれー。
「友好使節
http://www.toofectarts.com/videoshelf/shortshort/100/goodwillenvoy.htm
「古代の秘宝」
http://www.toofectarts.com/videoshelf/shortshort/200/204.htm
「友情の杯」
http://www.toofectarts.com/videoshelf/shortshort/400/465.htm