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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

星新一、二つの『遂に』… 浅羽通明の本格作品論スタート(ちくまウェブ)&「ひとつの装置」漫画化!(コミック星新一)

上の記事で筒井康隆について触れたから、次に星新一・・・というわけではない。
さっきはてなアンテナ経由で

■『時間ループ物語論
http://d.hatena.ne.jp/gaikichi/20121231#p5

時間ループ物語論

時間ループ物語論

を見た(ちなみに自分も何回かこの本を紹介しています)。
ところがそこの記述に

本年末は急に『週刊文春』で取材される側になってしまった浅羽先生

とあり、ん?なんだなんだ?こういうのはグーグルよりtwitter内の検索がいいな・・・→確認して数分爆笑(失笑)
のついでに、このちくまウェブでの連載を知ったというわけだ。
「開始」と書いたが、よく見ると隔週連載でもう4回目、11月にスタートしていたのだな。書籍の検索通知機能はあるが、ウェブ連載の告知機能はないものな。

星新一の思想 −とうにユートピアを過ぎて
http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/asaba/01_1.html
(からリンクが伸びています)
第1、2回 秀頼世代のための序章─「城のなかの人」精読(上)(下)
第3、4回 「商品としての小説」と「革命的自営業者(ブルジョワジー)としての作家」(上)(下)

自分はこれを熱望していた。
過去の文章を再録すると

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120626/p3
(略)・・・一部の星新一ショートショートは、突き詰めていくとマイケル・サンデルばりの正義論、法哲学論議になると前々から思っている。
浅羽氏の過去の著作にも、そういう議論のために星SSを引用していた箇所がたくさん有り、一度本格的にそういうのを、まとめて書いて欲しかったと思っていたのだ。このブログでもそういうことを何度か書いていたかな。
エア新書で作ると

こんな感じ。(タイトルがちょっと長いと「エア新書」は字がはみ出るので、センスなしの題名になってしまったが・・・)

どれぐらい連載が続くのかは分からないが、これは楽しみだ。
こんな講演映像もある。

「コミック星新一」第三弾では『ひとつの装置』が漫画化されている

星新一ショートショートを基にした漫画を大家、新鋭取り揃えて描き綴っていく「コミック星新一」、てっきり二冊で終了した・・・と思い込んでいたのだが

コミック☆星新一空への門

コミック☆星新一空への門

コミック☆星新一午後の恐竜

コミック☆星新一午後の恐竜

なんと8年ぶりに、ことしの夏に「3巻目」が出ていたのココロよ。
コミック星新一☆親しげな悪魔

コミック星新一☆親しげな悪魔

表紙でも分かるように、今回「それでも町は廻っている」の石黒正数氏が参戦!!
「それとも石黒正数は 超大物ではないかな?」(一部ウケ)

ま、彼は哲学的な作品というより落語的な味わいの「ねらった金庫」の漫画化を担当したんだがね。表紙で連想される名作「親しげな悪魔」は武蔦波氏の担当(ちょっとペテンっぽいよな、それ…)。


それはまた、別にして。
表題にはならないが、この巻の巻頭を飾るのが、「ひとつの装置」である。

この題を聞くとき・・・自分は12歳だか11歳だったか、とにかく中学に行く前、小学生の記憶に戻る。
甲本ヒロトの歌で 
レコードプレイヤーが 「スイッチを入れれば必ずお前を十四歳にしてやる」と言ったんだ・・・という歌詞があるが、自分にとっては星新一SFがそれに当たるのかもしれない。
どういうふうに読んだかは、今でも覚えている。
何度かこのブログでも書いたポプラ社の、筒井康隆が情熱的に書いた少年向けSF入門書「SF教室」には、ブックガイドがついていた。
当時、地元の図書館は子どもルーム大人ルームが完全に分かれていた。
そのブックガイドにある名作、なまじ古典の名作なら子供用リライト版があったが、現役作家の星新一小松左京筒井康隆の紹介本は当然リライト版なんてない。
そこで「大人ルーム」にいくとSF全集(どこから出てたんだろう?)があり・・・星新一は通常出ている短編集をバラして再構成した「傑作100」というものだったはずだ。
それを図書館内で読んだとき・・・どれもが当然傑作だったが、この「ひとつの装置」に流れる哀しみ、風刺、詩情・・・すべてに度肝を抜かれたことを、昨日の様に思い出す。


世界的な名声を博している高名な科学者が、ある装置の開発に極秘に乗り出した。研究所の経費を流用し、さらに私財も投入して始まったこのプロジェクトは、のちに「完成まで、装置の内容は博士以外一切知らない」ままで、膨大な予算をつぎ込んだ国家の支援する公的事業となる。

そしてその装置は完成したが・・・

これ以上の内容紹介は、ストーリーとテーマの根幹に触れるから差し控えたい。だがこの装置の意味、そしてここに「へそがある」ことは、この原作者が<人間の本質>に関して持っていたユーモラスな諦観と愛情を感じさせて実に秀逸だった。その装置をどうビジュアル化するかって大変なところだが、なんとなく自分が脳裏に浮かべていたイメージに似てもいるし、想像しなかった斬新な部分もあるのだよ。
(この作品はNHKのショート番組でも映像化されたが、わざと映像を抽象的に作った演出がなされ、個人的には評価も低いし、そもそも番外扱いすべきものだと思っている。)

その他の作品も

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「ある意味、ソーシャル・ネットワークの予言かもしれん。しかしまあ、こんなロマンチック・コメディも書いてたんだよなこの人」「諸星大二郎の作品みたい」「いい話を、最後にぶちこわすか(笑)」「アフリカの武器商人を扱った某映画と、星野之宣『宗像教授』の第1巻を思い出した」・・・などなど。
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