朝鮮日報
【社説】韓国軍を動員して国民の対北ビラ散布を制圧しようという発想
民主平統(民主平和統一諮問会議)の首席副議長が、脱北者団体の対北ビラ散布計画に対し「そういうことが起きないように警察や、韓国軍の兵力を動員すべき」として「韓国政府が強力に阻止して防ぐ、そういうふうに映れば、(北朝鮮も)ちょっと静かにやり過ごすだろう」と発言した。韓国政府は、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)が「ビラ禁止法でも作れ」と脅しをかけると、すぐに「法律を作りたい」と言った。それでも足りぬと、今度は韓国の軍隊を動員して韓国国民を制圧しようという声まで上がった。民間人を相手に軍隊を投入するというのは「戒厳」を思い起こさせる。民主平統の首席副議長は、大統領の対北メンター(顧問)という人物だ。個人的な主張にすぎないとは決して言えない。
元大統領の息子でもある与党議員は「脱北者団体の中には会計が不透明なところがあり、一部は後援金を巻き上げるため(ビラ散布を)利用している面もある」と発言した。その一方で、発言の根拠を示すことはなかった。会計の不正を語るのであれば、正義連(正義記憶連帯)問題をまず明らかにするのが順序というものだろう。与党の中心人物は「対北ビラ散布は危険千万な騒ぎで、平和統一の精神に逆らう反憲法的妄動」と主張した。北朝鮮の労働新聞に出ていた言葉かと錯覚するほどだ。民主党の院内代表は「国会の院構成が完了したら対北ビラ散布禁止法を仕上げる」と語った。コロナ問題の克服など懸案が山積しているのに、「金与正下命法」を作るのが最優先なのか。
対北ビラが何の効果もないのなら、金正恩(キム・ジョンウン)政権がこれほど憤然とはしないだろう。あらゆる方法を動員し、北朝鮮住民に外部のニュースが流れ込んでいくようにしなければならない。時間がかかっても、最終的にはそれが北朝鮮の野蛮な体制を変化させ得る。現在、韓国政府と与党は「境界地域の国民の安全」を口実にしているが、最終的には金正恩兄妹の「憤怒」をなだめ、北朝鮮政権の安定のため韓国軍を動員しようとしているのだ。脱北者に対する根本的な拒否感も感じられる。脱北者を「裏切者」「人間のくず」と呼ぶ金与正の認識とどれほど違うのか。そうでなければ、「軍隊動員」「妄動」といった言葉は出てこない。
ハンギョレ
[社説]南北関係は「対敵関係」ではない、相手の立場から考えてみるべき
登録:2020-06-10 08:40 修正:2020-06-10 11:20
北朝鮮が脱北者団体のビラまきと韓国政府の対応を強く非難する中、各地でビラまきに抗議する青年学生らによるデモ行進が行われたと、「朝鮮中央通信」が9日付で報じた= 朝鮮中央通信のホームページよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社
北朝鮮が9日正午から南北間のすべての通信線を遮断・廃棄し、「対南(対韓国)事業」を「対敵事業」に転換すると宣言した。北朝鮮が「段階別対敵事業の最初の措置」として南北間のすべての連絡線を遮断したと発表し、追加の措置も予想される。朝鮮半島情勢が、南北関係が完全に断絶した2018年以前に戻るかどうかの重大な岐路に立たされている。北朝鮮の同日の措置は、一部の脱北者団体の対北朝鮮ビラまきを問題視した今月4日のキム・ヨジョン労働党中央委員会第1副部長の談話の延長線上にある。北朝鮮がこの日電撃的に遮断した通信線は、南北疎通の基本手段であるだけでなく、南北関係のバロメーターの役割を果たしてきた。朴槿恵(パク・クネ)政府時代の2016年初め、北朝鮮の4回目の核実験後、南北間の連絡チャンネルが途絶えたことで、南北関係も遮断された。文在寅(ムン・ジェイン)政府発足後の2018年1月3日、板門店(パンムンジョム)の南北連絡チャンネルが復元され、同月9日の高官級会談を皮切りに南北対話が再開された。
遮断された通信線のうち、東・西海の軍事通信線と大統領府-朝鮮労働党中央委本部庁舎の直通通信線は大きな意味を持つ。これらの通信線が断絶されると、南北軍事衝突の激化を防ぐ安全弁が機能を果たせなくなる。6月の西海(黄海)ワタリガニ漁のシーズンを控え、南北間の衝突が再燃しないか懸念される。
脱北者団体によるビラまきは、昨日今日のことではない。最近、北朝鮮が激しい反応を示したのは、韓国に対して積もった不信感と不満、北朝鮮の厳しい国内外の環境が積み重なったものとみられる。北朝鮮は2018年の4・27板門店宣言、9・19平壌宣言、9・19軍事合意を韓国が十分に履行していないと見ている。対北ビラ規制立法だけでは、最近の状況が解決できない可能性が高い。
昨年2月にハノイで開かれた朝米首脳会談で合意が見送られて以来、朝米対話には成果が見られない。国際社会の対北朝鮮制裁に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)防疫のために北朝鮮が国境を閉鎖したことで、今年上半期、北朝鮮の経済事情がさらに悪化したという。北朝鮮は「自力更生による正面突破」に住民を動員する名分が必要な状況だ。北朝鮮としては、内部引き締めが切に求められるうえ、「最高尊厳」である金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長を露骨に非難する対北ビラまきは容認できないだろう。
このような困難を考慮しても、北朝鮮は韓国の苦しい境遇も易地思之(相手の立場に立って考えること)しなければならない。韓国政府は国内の政治的負担を甘受してまで、キム・ヨジョン第1副部長の談話後、速やかに対北ビラまきを阻止する方針を示した。ところが、北朝鮮はこれを無視してすべての通信線を遮断し、連日の発言で韓国への圧力と非難を強めている。今月5日、北朝鮮統一戦線部報道官談話で韓国政府に向かって「敵はやはり敵」だとし、「行き着くところまで行ってみよう」と警告した。北朝鮮のこのような態度は遺憾極まりない。
南北いずれも行き着くところまで行ってはならない。南北は互いに対敵事業の対象ではない。遅々として進まなくても、対話を通じて問題を解決しなければならない。
中央日報
【社説】韓国を敵と規定した北朝鮮…対北政策を見直す時
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.06.10 10:0512 글자 작게
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北朝鮮が昨日、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)ホットラインと軍の通信ラインを含む、すべての南北通信・連絡チャンネルを遮断すると明らかにした。さらには金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長の指示だとして「対南事業」を「敵対事業」に転換すると明らかにした。韓国全体を敵と規定したのだ。対北朝鮮包容政策と和解政策を進めた金大中(キム・デジュン)政権以来20年ぶりに登場した表現という。韓国を敵に規定しただけに、北朝鮮が言葉ではなく行動で挑発する可能性がいつよりも高まった。北朝鮮は南北軍事合意破棄を予告したのに続き、段階別「敵対事業」計画も審議したと明らかにした。休戦ラインや西海(ソヘ、黄海)での低強度局地挑発のほか、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)試験など戦略的挑発を敢行する可能性に安保当局は徹底的に備えることが求められる。
時計の針を南北対決時代に戻そうとする北朝鮮の強硬な態度は、一次的には金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対する非難を含む脱北者団体の対北朝鮮ビラ散布計画に起因すると考えられる。「他の問題でなくその問題に関しては容赦や機会などあり得ない」「最高尊厳はいかなるものとも代えられず死守する」という言葉から北朝鮮の意中を読み取ることができる。しかし脱北者団体の行動で南北首脳の合意事項である軍事合意の破棄を話すのは正当化できない。
北朝鮮の思惑は対北朝鮮ビラを口実にした緊張の形成、対南挑発の名分蓄積、さらに韓国政府の手懐けなど多目的の布石から始まったと見るべきだろう。案の定、政府と与党は金与正副部長の声明直後からビラ散布禁止法案の推進に入り、これをめぐる賛否で与野党の対立と世論分裂が表れている。北朝鮮が表面上では怒りを見せながらも、内部では笑っているに違いない。
政府・与党が北朝鮮を擁護して低姿勢を続けていれば、北朝鮮の態度を変えることはできず、挑発も防げない。3年間にわたり相手の反応に関係なく対話に固執してきた対北朝鮮政策がもう限界に達したのではないか、政府は根本から省みる必要がある。北朝鮮が露骨な言葉で韓国当局を嘲弄し、韓国排除戦略で一貫しているのは、文在寅政権は断固たる対応を取ることができないという無視によるものでなければ何だろうか。
対北朝鮮政策の見直しと同時に北朝鮮の予想される挑発には徹底的に対応しなければいけない。最近、軍の紀綱弛緩事件が頻発しているのを勘案すると、本当に徹底的な対応体制を整えているのか憂慮せざるを得ない。政府と軍当局、さらに我々の社会全体は、北朝鮮が韓国を敵と規定したという事実を重く受け止めるべきだろう。対北朝鮮楽観論では「敵対事業」にまともに対応できない。対話もよいが、さらに重要なことは北朝鮮の狙いを看破し、挑発にスキのない対応体制を整えることだ。
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