蔵書整理で古い資料が見つかったよシリーズ。
蔵書整理中に、集英社が出してるPR雑誌「青春と読書」2016年6月号が出てきた。何か理由があって保存していたわけではなく、偶然だろう。
廃棄処分にしようと思ったが、逆にそうなると、何かメモすべきものはないかと読みたくなる……で、メモすべきものがあった。
当時、集英社は明智小五郎の登場する江戸川乱歩小説を「発表順ではなく、事件発生順に再構成する」というシリーズを出してたらしい。もちろん、全部の事件に年代が書いている訳もなく、順番はさまざまな資料から推計し、仮説をたてる。これはシャーロック・ホームズものでもよくある試みであり、そちらのほうはある種のコンセンサスがある。
明智小五郎事件簿 1 「D坂の殺人事件」「幽霊」「黒手組」「心理試験」「屋根裏の散歩者」 (集英社文庫)
- 作者:江戸川 乱歩
- 発売日: 2016/05/20
- メディア: 文庫
- 作者:江戸川 乱歩
- 発売日: 2017/04/20
- メディア: 文庫
で、その編集協力者だった平山雄一氏…この前書評を書いた「ホームズからシャーロックへ」でも監修を務めた_
m-dojo.hatenadiary.com
※これは計4本ある紹介記事の4本目です。
_このひとが、エッセイでこういう論考をしている。
画像部分だが、以下箇条書きに
・明智小五郎が生まれたのは1894年ぐらい(日清戦争の年だね)
・これはホームズが行方不明になっていた時期(「最後の事件」から「空き家の冒険」の間)と符合する。
・「小五郎」は武道「バリツ」を学ぶホームズが、講道館で嘉納治五郎から稽古をつけてもらった縁で、”五郎”の名をもらった
・「明智の顔は西洋人みたいだ」との描写がされている。
※例
ここは明智探偵事務所の所長室です。かべいっぱいの本だなに、金文字の本がビッシリつまっています。その前の大きなデスクにむかって、名探偵明智小五郎がこしかけているのです。デスクの表面は、鏡のように、ツヤツヤして、明智の顔がうつっています。黒のせびろ、薄茶色のネクタイ、れいのモジャモジャの頭、西洋人のような、ひきしまった顔。
明智は、いま、デスクの上にある卓上電話の受話器を、耳にあてて、何か話しているのです。
www.aozora.gr.jp
ホームズがいわゆる大空白期に日本を含めてアジアを訪れたことは、さまざまな資料でほぼ裏付けがあるが(チベット入国は、本人が告白している)
ホック氏の異郷の冒険―日本推理作家協会賞受賞作全集〈44〉 (双葉文庫)
- 作者:加納 一朗
- メディア: 文庫
- 作者:加納 一朗
- メディア: 新書
そこで子供をもうけていたとするなら、また新しい発見であろう。
なお、その後、壮年期の明智小五郎はしばらく消息が分からなくなるが、その時期が「陸軍中野学校」創設時と重なるのだという。
関連書籍情報(ご本人のツイート)
ご紹介恐れ入ります。ご興味がありましたら拙著の明智の伝記「明智小五郎回顧談」(ホーム社)https://t.co/qFbbg2AwUL
— Y Hirayama 平山雄一@ヒラヤマ探偵文庫 (@ShosoinHirayama) May 27, 2020
をご覧ください。
また年代考証の詳しい過程については
「明智小五郎読本」https://t.co/PAMScEMIGq
に寄稿しています。