一つ前の記事で、司馬遼太郎が「センゴク」の主人公仙石権兵衛秀久を「よくこの程度の人物でも大名になれたものだ」と、別の意味で感心した、って話をしましたけど(笑)、それを逆手にとって「英雄でもなく大失敗もした、等身大の戦国群雄」として彼を主人公に据えたこの作品が、司馬小説などとは別の魅力を持つことはいうまでもない。
で、先週、戦国に一時の終止符を打つ「秀吉の小田原攻め」編が完結した。ここがクライマックスの予定だったらしいが、「もうちょっと続く」らしい。
で。
このシリーズで、基本トーンだったのは「北条家は5代にわたり善政を敷き、法の支配も厳格かつ公平で民に慕われていた」という話です。
むろんセンゴクは、別に史実に完全忠実ではなく、かなり伝奇的な部分もあるし、特に個々の武将が掲げる「理念」部分には、何か史実とは別の、盛り上がりそうな架空の概念を当てはめて、理念同士の疑似闘争を行わせる傾向が強い。
さりとて
と、見開きで書かれるほどだし、
別のところでもぽつぽつ読んだ記憶があるんだよね
記憶で断片的に書くと
・まずは税金が安かった
・家康が北条家の後をついで関東に来た→かつての北条家より、税金などを重くしたら叛乱が怖いので、基本北条支配を踏襲→家康が天下人になり、それが江戸日本でスタンダードになった
・検地の体制とかがしっかりしてた(検地がしっかりしてると、民衆には困ることもあるが…)
・もともと伊勢新九郎こと北条早雲が、「領民の面倒をしっかり見る」という戦国大名の基礎、お手本だった
・・・・・・といった話を聞いた記憶があるのだけど、最後のが司馬遼太郎エッセイだった、意外はソースすら思い出せません。
自分、ずーーと後北条家は、「まあ、どうでもいいわ」扱いしてましたんで、彼らをメインに扱った歴史書とかも読んでないや。
北条氏政辞世の句/北条家から徳川家にわたった「吾妻鏡」(※正確には黒田官兵衛経由)
水を差すわけじゃないが
『吾妻鏡』は、治承四年(一一八〇)四月の源頼政の挙兵から、文永三年(一二六六)七月、前将軍宗尊親王の帰洛までの鎌倉幕府の事績を編年体にしるした史書である。その成立については、源家三代とそれ以降を分けて考えるなど、欠失部分を含めて見解が分かれるが、成立の下限は鎌倉時代後期を降るものではない。
本書は世に「北条本」と称し、『〈新訂/増補〉國史大系』の底本となった本で、鎌倉時代史研究上の基本史料として知られている。いわゆる「北条本」とは、もと小田原北条氏に伝わった金沢文庫本系の写本で、天正十八年(一五九〇)小田原和議交渉の礼として北条氏直から黒田如水に贈られたものを、慶長九年(一六〇四)三月、如水の遺品として長政から徳川秀忠に献上された本である。本書は家康が翌慶長十年にこれを底本に伏見版『吾妻鏡』を印行せしめたことにより、近世版本の祖本となった。
bunka.nii.ac.jp
なので、「今後の政治のお手本にどうぞ(秀吉の世の次は、あなただ)」、と関東を次に統治する家康に、北条氏直が手渡したというのは、後付け逆算のフィクションですな。「センゴク」は、この範囲でのフィクション化を行っている作品だ、ということ。そこに「統治・支配」の政治哲学を描写しているという点で良いフィクションだと思いますが。
辞世の句なども、この機に書き留めておく。
吹きと吹く 風な恨みそ 花の春 紅葉も残る 秋あらばこそ
sakuramitih31.blog.fc2.com
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追記 北条から徳川に「民を頼む」と託した手紙や、水路資料などは実際にあったらしい
不確定情報ですがネット上に北条氏政がめっちゃ水路図を家康に送りつけた説がありました!
— 鈴木課鈴木コース (@Suzukikka00) May 6, 2020
これには書状が残っているっぽい…? pic.twitter.com/PUtBbwEkpO