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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

感染症と「要請」と人権と。(シミュレーション小説)

某県の、県庁近く。多くのメディアが詰めていた、この記者室はいろいろと慌ただしかった。
なぜなら、新型コロナウイルスが、ついにこの県でも発見されたからだ。
知事が深刻な顔をして、会見したその数時間後、ニュースとしてそれをまとめるのに、みなてんやわんやであった。


そこに、ひとりの男性がやってきた。40-50代ぐらいであろうか、特にとりたてての特徴は無い、平凡な男だった。

「ここが、記者さんたちのいるクラブ?ちょっとお知らせしたいことがあるんだけども」
「リリースですか?ちょっとすいません、今いろいろと手が離せなくて。資料があったら、置いていっていただければ…」
普段から、イベントや自費出版の本や、デモ行進の予定など、多くの個人や市民団体もここに情報リリースを行っている。それだと判断した記者が、とりあえずそう応答した。


「なんだ、ここで記者会見とかできると思ったんだけどな…ひいふうみい、6人しかいませんか。でもまあいいや、即興でここで会見しちゃおう。わたし、たしかこの県で初の、新型コロナウイルス陽性者でしてね」


「!!!!!!!!!」

みな、そのひとことで一斉に注目した。もちろん自分で感染しては大ごとだ、とっさに口をふさぐものもいたが、たしかに会見やインタビューに値するニュースバリューだ。

「そ、それは大変でしたね。少しお話を伺えますか」

数メートルの距離をおいて、記者たちが遠巻きに輪を作る。

「もちろんです、というか、私のほうから言いたいことがありましてね…。わたし、県から陽性だということで、自宅待機を要請されたんです。陽性だから要請、ははは。……いや、あんまり症状は無いんですよ。うーん、でもちょっと熱っぽいかな?」

熱っぽい、の言葉に、思わず後ずさりする記者もいた。
そして、このことに気づいたものがいた。
「…あれ?そうするとここに来ていいんですか?なにか許可をもらったとか?」

「いや、要請を無視してるだけですよ」
男は、ちょっとにやっと笑い、そう言った!!

「!!」
予想外でありつつ、そりゃそうかの答えに、質問には「追及」色が強まる!!

「それで誰かに病気を移したら、犯罪じゃないですか!!」
「責任をどう考えているんですか!!」

男は、動じなかった。
「それを訴えるために、来たんです…よその県…A県でしたか、私と同じ陽性の患者さんが、飲食店とか行って批判されましたよね。でも県がその人や私に言ったのは『要請』でしょ。熟慮の結果、そのご陽性、いやご要請に沿いかねる、と判断しただけです。ザッツ・オール。何か間違いですか?」

「なぜ、そうするんですか!理由を教えてください」

「それはもちろん、権力の野放図な拡大を憂慮し、抗議するからですよ。権力は、最小限に行使されなければならない。自由な個人の行動を制限するからには、国民の代表が議論して意志決定し、法を定め、その方に基づいて最低限の強制力を加えるべきでしょう?野放図になんでも『お願い』『要請』して、しかもそれが『空気』や「同調圧力」で、実際には強制力として働くとしたら、それは自由な社会の脅威になりませんか?」

なにやら、へんに理論だっていた。これはちょっとした一言居士かもしれん・・・。


「それとね、私はちょっと法律を素人ながらかじってましてね。私のこの行動が何か違法なのかに興味があるんですよ。A県の話、ワイドショーで、さっきどなたが仰ったように『犯罪だ』とか『賠償を請求される』とかコメンテーターが言ってましたね…まあ、あそこはその人がヤケのヤンパチだったのか『うつしてやる』とか放言してたそうですね…わたしはそんな、他者を危害する意図はないですよ。皆さんも含めて、うつってないことを祈ります、ふふふ」

「なら、そのように行動してくださいよ!!」

「どうなんですか、わたしのやってることは犯罪か何かなんですか?」

「うーむ…」


「では、ここで記者会見はおわりにします。ありがとうございました。これから、どこかのお店で食事して、買い物して帰ります」

「ま、待て!!」


去っていく彼のスマホから、音楽が流れてきた。わざと周囲に聞こえるように設定したのだろう。
Little Glee Monster の『Catch me if you can』だった。
www.youtube.com

(終)


参考

コロナ感染者「自分は陽性」、飲食店で吹聴か
 新型コロナウイルスの感染が確認された愛知県蒲郡市の男性が市内の複数の飲食店を訪れ、自分が陽性だと話していたことがわかりました。

 蒲郡市に住む50代の男性は、4日、陽性と判定されたあと、愛知県から自宅待機を要請されたにもかかわらず、市内の飲食店を訪れていました。

 「県の指導によっての自宅待機の状況が守られてなかったのは、大変遺憾。市民に感染の危険があったことは遺憾」(蒲郡市 鈴木寿明 市長)

 その後の取材で、男性は店内で自分が陽性だと話していたことや、複数の飲食店を訪れていたことがわかりました。男性に目立った症状などは出ておらず、現在は県内の医療機関に入院しているということです。

news.tbs.co.jp


このツイートにインスパイアされました


はよ@hayohater
「これはお願いです!命令強制ではもちろんありません!もちろん自己判断で開催等々行っていただいてももちろんかまいません!」(ただ、その場合の責任ってあなたとれるんですよね?)って話法。

はよ@hayohater
法律に基づいた強権なんぞよりも無形の「民意」からなる同調圧力・抗議・風評のほうが圧倒的に強力っていう。

はよ@hayohater
もっと言ってやるなら、それをさんざん日本的なるものwwwジャップランドwwwって嘲笑して全否定してたはずの連中が結局ホンマモンの疫病リスクによるソレには対抗どころか従っておいてあとでブツブツ言ってるのなw


あと、上に出てきた「要請に従わないで飲食した愛知県の男性は傷害罪。店も賠償を請求できる」云々は、午後のワイドショー(ゴゴスマかミヤネ屋のどっちか)で言われていました実際に(あの一件は「うつしてやる」なるうそかまことかの放言がったから例外的かもしれんが)