この前、イラン外交では不思議なほど日本は粘り腰を見せる、という話を書きましたが
m-dojo.hatenadiary.com
それなりに中東での存在感は拡大している、と見て間違いない(安倍政権だけの方向性ではなく、民主党時代も含め全国家的なものであるとは言っておく)。
だが。一方で…
دولت ایران باید به گروههای حقوق بشر اجازه بدهد حقیقت کنونی اعتراضات در جریان مردم ایران را نظارت کرده و گزارش بدهند. نباید شاهد کشتار دوباره ی معترضان مسالمت آمیز و یا قطع اینترنت باشیم. جهان نظاره گر این اتفاقات است.
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) January 11, 2020
Trump、英語のツイートをペルシャ語で2回ツイート
— Treky (@trek_7) January 13, 2020
内容はイランの指導者に向けてになっているが、明らかにイラン国民を意識したもの
一般人がツイートにアクセスに出来ない北朝鮮や中国へのとは全く違う pic.twitter.com/5ZOF4YH9eY
イラン国内のデモを励ますトランプのペルシャ語のツイートが、英語のツイートの10倍超の速さでRTされている。
— 日本の改革 (@5Vlmw7nc5NFGBzo) January 12, 2020
翻訳機能、ほんとに便利。 https://t.co/SAXQuEO8tQ
トランプ氏、ペルシャ語でイラン国民の抗議を支持
アメリカのトランプ大統領は11日、イランがウクライナ機の撃墜を認め、国内で抗議デモが発生していることを受け、ツイッターに、ペルシャ語でイラン国民の動きを支持するメッセージを投稿しました。
トランプ氏は11日、ツイッターにペルシャ語で「イランの、勇敢で長く苦しんできた人々へ」としたうえで、「私は大統領に就任して以来、皆さんの側に立ってきた。私の政権は皆さんと共に立ち続け、皆さんの抗議を支持し、その勇気に励まされている」と投稿しました。トランプ氏は同じ内容を英語でも投稿しましたが、ペルシャ語を使ってイランの国民に直接呼びかけたのは異例です。
また、トランプ氏は、「平和的に抗議する人々の虐殺やインターネットの遮断はあり得ない。世界が見ている」と‥(後略)
news.tbs.co.jp
これは自身の大統領選も見据えたトランプのエゴから来てるものであろうし、逆に言うとあの男が本気でそこまでイラン民衆に共感してるとはさらさら思えないのだけど…、それでも、結果として民主化を求め、イランの強権政治に抵抗する民衆を励ましているのはトランプのアメリカで、アベの日本はそれに対して沈黙している、というのが実体化した事実である。
当然ながら、安倍政権だけでなく、むしろ安倍政権に批判的で、もっとイラクとアメリカやサウジの仲介外交、平和外交をなぜやらない!とか、中東に海自を調査研究で派遣するのは緊張を高める!という論者も「もっと日本はイランの民衆抗議を励まし、イラン政府を批判せよ!!」…とは言わぬ。実際、それをやったら日本とイラン(政府、原理主義宗教指導者支配体制)の友好関係は現在より損なわれるのは間違いないわけで。
これは今回、皇太子と安倍首相が会談したサウジアラビア(その皇太子のカショギ殺害問題は結局まだ何も解決していない)もそうだし、さらに言えばベネズエラでも、香港でも、日本がそういう問題の人権問題に対して、少なくとも先頭に立つようなことはあまりない。対北朝鮮ですら、「拉致問題」が絡む時はまれに先頭に立つこともあるが、それ以外は結構スルーしてるし、今は対話路線とも絡んでそこですら影が薄い。
そういう政府の尻を叩くというか攻撃材料にするはずの野党も、そういった国を政府与党以上に批判攻撃し、「そういう立場を示さない政府与党はだらしない」というふうな批判はあまり行わない。
この前、立憲民主の枝野幸男氏が「習近平国賓待遇問題」を取りあげたのはちょっと意外だった。
立民・枝野氏、中国・習国家主席の国賓待遇来日を批判
2020.1.12
立憲民主党の枝野幸男代表は12日のNHK番組で、春に来日予定の中国の習近平国家主席の国賓待遇を批判し、政府に再考を求めた。「香港や中国新疆ウイグル自治区、チベットなどの人権問題でなかなか納得しがたい問題を抱えている。『実務的、政治的関係は密接にやるべきだが、国賓としてお招きするのにいかがなものか』という声が国内外にあることについて、私は十分理解する」と述べた。
さて、この「理解する」というのが中々に微妙だが…反対ならいろんな方法がある。国賓の来日に合わせ抗議デモや集会を開くこともできるし、慣例上たぶん行われるだろう夕食会に招かれたら(どうなるかな)欠席表明をするもよし、国会決議を行うもよしだ。
イギリスではこうやっている
www.jiji.com
日本でも、最大野党が「理解する」から一歩進めて、正面切っての「国賓来日反対!」に舵を切り、争点化するならかなりのインパクトがある。
では、あるが、
結局戦後日本の「平和外交」は、このへんの問題に首を自分からは突っ込まないことで成立してたのも、おそらくは事実だろう。
今回の中東での調査研究海自派遣だって、間違いなく言えるのは「自分から積極的に、ペルシャ湾が危険だから、世界各国で軍艦などを出そう!と言い出すことはなかったろう」ということ。これが受身形のもので、米国との「友好関係」維持のためのものなことは明白だ。<友好関係を維持する>ということでは、調査研究で出すのも、ロウハニ師を招いて理解を取り付けるのも、サウジで賛同の言質をとるのもあまりかわんない。
そこは、日本は「小物」なのだろうし、小物であることは悪くない…いや、大物として力をふるえればそれはそれで爽快だろうが。
そんな日本は、香港やイランやベネズエラの「民衆」の心強い味方にはなり得ない。そこは申し訳ないのひとことだ。
だが…、安倍首相がペルシャ語で『イランの、勇敢で長く苦しんできた人々へ』というメッセージを発して、「イラン政府」のほうを激怒させる、なんてなことをやるべきかい?