「チコちゃんに叱られる」でジンギスカンの普及について紹介されてましたね。
ある北海道の企業が肉屋にジンギスカン鍋をプレゼントしたことで、それが消費者に貸出されて広まった…という話。
ベルもいいけどソラチもね!
— orange A (@foo_lay_bow) 2019年7月12日
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ジンギスカンが北海道名物になった意外な理由 チコちゃんの解説の驚きの声も #チコちゃんに叱られる https://t.co/lTzLTwpV44
— ブラック大尉 (@fahira_dhike_48) 2019年7月12日
それはそれで個別には間違いじゃないんだろうけどもっと網羅的に紹介した面白い本があります。てか題名がそのまま「刺し身とジンギスカン」。
「ニホン人は昔から刺し身を食べていた」だって? ジョーダンじゃあない、食べていたのは海沿いの高貴な身分の人たちだけ。冷蔵・冷凍流通網が整った戦後になってから、新鮮な魚が日常的に食卓にのぼったのだ!
- 作者: 魚柄仁之助
- 出版社/メーカー: 青弓社
- 発売日: 2019/02/27
- メディア: 単行本
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「ジンギスカンって、モンゴルから入ってきたんだよね」って? とんでもない。1938年の月刊誌に東京・高円寺のマトン料理店の広告が。それ以前から、ジンギスカン鍋の写真も紹介しているのは東京の料理店。
さらに、チャプスイという名のアメリカ式中華料理、とろみ料理は、戦前に流行したにもかかわらず戦後には消えてしまい、幻の一品になってしまった。
「食の鑑識家」が、刺し身とジンギスカン、とろみ中華風料理の起源と移り変わりを雑誌を渉猟して追跡調査し、流通している俗説を覆してホントの歴史を教える痛快食エッセー。
ネット上で活躍する「昭和食文化研究会」さんのお好み焼きの方も面白かったがこの本も面白かった。たぶん一つの大きな流れとして、こういう本が今トレンドになり…つつあるかもしれない…ぐらいのムーブメントがあるんじゃないかな。
さて、ダラダラ書いてもあかんので、 この本での「ジンギスカン」についての 概要をまとめよう
・まず大前提として「ジンギスカンはジンギスカン料理を好んで食べていた」とか「モンゴル兵がカブトを調理用具として使って、肉を焼いていた。ジンギスカン鍋がああいう形なのはその名残」 とかいうのは、 プロレススーパースター列伝並みにフィクション。
・ジンギスカン料理が紹介され始めるのはだいたい大正時代頃から。
・ああいう鍋自体はモンゴルに実際にあったらしい。燃やす燃料は乾燥させた牛糞。
・肉を下ごしらえするのは同じ 。
・ただし満蒙ではジンギスカン鍋は見ないという証言もある
・北京などで食されたカオヤンロウ、という料理ではないかとも言われる
・鍋の形が兜に似ているという話は今回のチコちゃんでも登場していたが、モンゴル軍がかぶとを実際に料理に使っていたというのは怪しく、昔から「真偽は別にして」などと言われてきた。
・そもそも日本の羊の歴史は非常に浅い。本格的な羊毛産業も羊肉産業も日本にはなかった。
・ただ日露戦争を経て、軍隊の防寒着の充実の必要性が出てきた。また第1次世界大戦で 羊毛の輸入ができなくなり国産化を進めてきた。
・とは言っても羊肉が臭いという感覚は一般的であり、羊毛産業を育てるには肉も売らなきゃいけない。肉も売るためには、美味しい料理が作られなきゃいけない、その料理は何か…という、無い需要を喚起するための創意工夫が必要だった。
・戦前満蒙のことが日本に紹介されるにつれ羊肉料理も紹介されるようになった。
まあモンゴルっぽい料理だからジンギスカン、というのもたいがいだが、フランスではポッキーが「ミカド」の名前で売られ、逆に日本ではああいうお菓子類のあれが、会社が「ブルボン」ですよ…おたがいが、おたがいをゆるせ。
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刺し身…昔は「冷蔵技術が未発達の中、いかにおいしく食べるか」が課題だった。
この本は表題に歌っているようにジンギスカンの他「刺身の歴史」 についても紹介されている。ジンギスカンもそうだが、戦前の実際の料理本や雑誌記事を広くあたり、そのままの資料を紹介しているところが非常に興味深い。
様々に思うのは、美味しんぼが特にコンセプトとしていた「昔の料理や食材はとても美味しかったが、今の大メーカー主導の大量生産大量消費の食べ物は美味しくなくなった」というような考え方は、やはり巨視的に見れば間違いだということだ。それは冷蔵技術と冷凍技術という、重要な部分の進歩…それも文明開化の時代から考えれば、ほとんど0が100になった、以前は冷凍技術も冷蔵技術も「なかった」時代があったことを考えねばならない。
もちろん美味しんぼの言うことも逆から考えれば正しい面もあって、冷蔵冷凍技術がなかったからこそ、食材が痛まない範囲で調理して食べる、すなわちとれたて出来立ての食材と料理をのみ食べていたから、その範囲では結果的においしかったということはあるかもしれない。
ただ、 戦前や昭和30年代の刺身料理は、今よりマリネやカルパッチョ的な料理、また「たくあんまぶし」「昆布締め」「あらい」などひと手間かけた料理法も多かったんだ。それは刺身の鮮度が落ちた時にそういう油や調味料での味付けで上手く持たせた、ということに他ならない。
またこんにゃくや塩茹での豚肉、ナスなど、魚以外の刺身も多かった。
家庭料理としてのお刺身が食べられるようになったのは、 やはり電気冷蔵庫が一家に一台になったが故である。
そのことを感謝してもし足りない。そう思わせる本でございました。
あとひとつ、今はなくなった中華料理「チャプスイ」について
これに詳しく書かれている。
実はこれをメインに紹介する予定だったんだけど「チコちゃん」のおかげでジンギスカンの方を先に紹介、その勢いで刺身について書くことになった。
チャプスイについては時間があればあとで取り上げたい。
最後にAmazonから目次を紹介
目次
まえがき
第1章 刺し身
1 懐が深い和食の王道
2 一九〇九年(明治四十二年)、西洋婦人が刺し身を食べた
3 支那風のお刺し身
4 刺し身をおいしくする法
5 沢庵まぶし
6 鰯のあらひ
7 黒鯛の洗いマヨネーズ
8 鰯の手開き刺し身
9 刺し身の雲丹和え
10 翁和えという刺し身
11 昆布締め刺し身
12 刺し身のカクテル
13 刺し身とも塩辛とも言える「熟成刺し身」
14 鯛の安倍川?
15 豚肉の刺し身
16 茄子の刺し身
17 鰹の羊羹づくり?
18 鮮度信仰の勘違い&わんこ河豚
19 刺し身のまとめ
20 昔はトロよりも赤身が好まれた?第2章 ジンギスカン
1 ジンギスカン料理は和食?!
2 ジンギスカン料理のイメージとハテナ?
3 こんな広告を見つけました
4 道具としての成吉思汗鍋、その移り変わり
5 日本の羊肉料理
6 ジンギスカン料理の生い立ちを語る証言記事を時系列でみる
7 ジンギスカン料理、戦後の証言
8 第二期ジンギスカン料理の典型
9 日本のジンギスカン以外の羊肉料理
10 第二期戦後観光ジンギスカン――埼玉県飯能名物
11 ジンギスカンとは何か第3章 チャプスイ
1 獅子文六が食べたチャプスイ
2 支那料理教本の前書きにチャプスイが
3 カリフォルニアの支那料理店チョプスイ
4 「家庭百科重宝辞典」でチャプスイを引くと……
5 これぞチャプスイ! アメリカン・チャイニーズ・ライス
6 丸ノ内の有名店キャッスル自慢のチャップスイ・ライス
7 チャプスイに対する風当たり――「チヤプシイを食ふは恥知らず」
8 世界平和料理とされたチャブスイ
9 宝塚のスターはチャプスイが好きっ!
10 アメリカ生まれなのに「アメリカ風チャプスイ」
11 爛熟期・○○チャプスイの数々
12 うどんチャプスイ戦中と戦後の比較
13 アメリカの家庭料理としてのチャプスイ
14 来客向きのチャプスイ
15 時代に応じたチャプスイ、パンと魚肉ソーセージ
16 沢庵チャプスイ
17 戦後豪華版チャプスイ
18 そばがきチャプスイ
19 満蒙開拓団の訓練にもチャプスイが登場
20 チャプスイのおかげで筍缶の輸出拡大!
21 チャプスイの流行に利用された李鴻章
22 日本人の食を健康的にしたチャプスイ