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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「マジカル・ニグロ」或いは「token black guy」…補佐役的キャラとそのステレオタイプを考える。

マジカル・二グロといっても、マジカルバナナとは関係ない。「二グロと言ったら○○」「〇〇といったら▽▽」、とリレー形式で連想する言葉を言え、というゲームじゃないのだ。というかそのゲーム剣呑すぎるだろ。


…「マジカル・ニグロ(Magical Negro)」という白人の主人公を助けるためだけに登場する黒人のキャラクターだ。

ゴースト/ニューヨークの幻(Ghost)』(1990年)でウーピー・ゴールドバーグ(Whoopi Goldberg)が演じた霊媒師オダ・メイ・ブラウン(Oda Mae Brown)から、『パッセンジャー(Passengers)』(2016年)でローレンス・フィッシュバーン(Laurence Fishburne)が演じた宇宙移民船の甲板長ガス・マンキューゾ(Gus Mancuso)まで……「マジカル・ニグロ」は白人のメインキャラクターを助けるために、自らが持っている古くからの知恵や神秘的な力を差し出す……この役回りが多い俳優の一人と言えば、間違いなくモーガン・フリーマン(Morgan Freeman)…… しかし、ポップカルチャー情報ウィキサイト「TV Tropes」は、「それほど深い知恵を持っているのなら、マジカル・ニグロは何故、自ら立ち上がって世界を救わないのだろう?」との問いに「それは絶対に起きない」と書いている。
…ただし、グレゴリーが演じる役について共同プロデューサーのタラ・バターズ(Tara Butters)氏は、単なる白人の主人公のガイド役とは違うと話す。「放送回を重ねるにつれ、このキャラクター自身が気付くのは、自分がケビンを助けるためにそこにいるだけではなく、ケビンも彼女を助けているという点だ。この2人の登場人物は非常に面白い関係を作り上げることになる」

 またグレゴリー本人も、「そのような見方があるのは分かっている。しかし自分が演じるキャラクターは(いわゆる)天使なんかではなく、ダメなところだらけ。優しくもない。彼女は天使の様にはふるまわないし、天使のような口調でもない」と述べ、この役がマジカル・ニグロには当てはまらないと…

この記事を読んで、「あれ?クイントン・ランペイジ・ジャクソンが『マジカル・二グロ』に似たような言葉を使ってて、それをひねリンが紹介したことがあったな?」と思い出せる人間は世界でわたししかいない(笑)
探した探した、見つかった。
これだっ!

http://hinerin.blogspot.com/2004/06/ppv.html
・北米PPV本日の主役、ランデルマンの入場時に
「俺は最初にプライドにやってきたとき、こいつに嫉妬してた。俺がここのtoken black guyになりたかったからな。」
token black guyというのは、白人ばっかのハリウッド映画とかでかろーじて一人だけ出演するよーな脇役の黒人のこと。ストーリーにあまりからまないとこで、典型的な黒人英語をしゃべってステレオタイプな身ぶりを見せたりする。とっとと殺されたり。

※クイントン・ランペイジ・ジャクソンもランデルマンも、ともに黒人の格闘家で、日本の「PRIDE」で同時期に活躍していた。

ちなみに、これが書かれた(語られた)のは、2004年。いやいやずっと前から、この種の問題は言われていましてね。
はてな内でこれが書かれたのも2009年。

映画におけるマジカルニグロ(Magical Negro、魔術的黒人)キャラクターについて - Commentarius Saevus (id:saebou / @Cristoforou) http://d.hatena.ne.jp/saebou/20090719/p1


ともかくも、「マジカル二グロ」「token black guy」という言葉がある。
しかしまあ、こういう属性とキャラクター(キャラ付け)の関係に関しては、日本人をはじめとする東洋人の問題もあれば、女性の問題もある。

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

「男の中に女がひとり」は、テレビやアニメで非常に見慣れた光景である。その数少ない座を射止めた「紅一点」のヒロイン像とは。「魔法少女は父親にとっての理想の娘である」「(紅一点の)紅の戦士は“職場の花”である」「結婚しないセクシーな大人の女は悪の女王である」など見事なフレ-ズでメディアにあふれる紅一点のヒロインとそれを取り巻く世界を看破する評論。

ヘタリア」に代表される、いい加減で女好きなイタリア人に謹厳実直で融通のきかないドイツ人、皮肉屋で計算高い英国人に正直であけっぴろげでなちゅあるに傲慢なアメリカ人…みたいなものもある。


自分がこうやって、この問題をわざわざブログ記事にするのはそっち寄りの話…キャラクターの類型と属性に関するあれこれの一環として、である。だから過去に何度も記事を書いてるので論旨は重複するが、そこは了解してほしい。

とある属性のキャラが/出てこない/ステレオタイプのザコ悪役/ステレオタイプの大物悪役/ステレオタイプの頼れる主人公補佐役/ だと、どれがまだマシだろう?

上のAFPB記事に僕がつけたはてブコメント。

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.afpbb.com/articles/-/3139133
gryphon しかし最近ステレオタイプだからこの役を少数民族にするのはやめた」といって、原作ではマイノリティだったのを変更した例があったぞ(つまりその分、マイノリティの役が減った)…エンシェント・ワンとかいう役。

マーベル映画がアジア人キャラを白人に変えた本当の理由は、中国市場重視だった(猿渡由紀) - Y!ニュース http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160502-00057287/

マーベルのキャスティングが、新たな衝撃を呼んでいる。オリジナルコミックでアジア人男性だったキャラクターに白人女優を起用したことが非難されたのが始まりだったが、今度はその言い訳に注目が集まっているのだ。
(略)
チベットが(たしかに存在する)場所であると認識し、このキャラクターがチベットの人であるのだとしたら、10億人の観客を失うリスクがあるんだよ。中国政府が、『世界で一番大きい映画市場のひとつがどこか知っているのかい?君らが政治的な方向を選んだせいで、僕らは君らの映画を見せないことにしたよ』というかもしれないじゃないか」と、カーギルは説明する。
(略)
…事故で腕を怪我し、精密な動きができなくなってしまった脳外科医のストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)が、チベットにいるエンシェント・ワンと呼ばれる魔術師を訪ね、魔術を身につけるという設定だ。原作コミックで、エンシャント・ワンは、長いヒゲをもつチベット人男性だが、マーベルは、この役に、英国人女優ティルダ・スウィントンを選んでいる。先月半ば、マーベルが最初のトレーラーを公開し、その2日後、追い討ちをかけるように、パラマウントとドリームワークスが、スカーレット・ヨハンソンが主演するハリウッド版「攻殻機動隊」の写真を公開すると、アジア人の役を白人が奪うことに対するバッシングの声が起こった。
しかし、最近になって、「Dr. Strange」の脚本家C・ロバート・カーギルは、doubletoasted.comへの独占インタビューで、キャスティングの裏にある本当の事情を明かした。カーギルは、非難の声が上がっていることを十分認識しているとした上で、「抗議するほとんどの人は、最後までしっかり考えていない」と述べている。そもそも、原作コミックのエンシェント・ワンは、人種のステレオタイプそのものだとカーギルは指摘。


ぶっちゃけた話、エンターテインメントの多くは「架空のお話」なので、そこに登場するキャラクターの人種も性別も性格も作者の意図ならざるものは反映されない。
いい役も悪い役もだ。

ただ、それで少数民族とか性的なマイノリティとかが、その属性のイメージを生かして登場する際に、「主人公の補佐役というかっこいい役」を与えられるのって、本当にネガティブなものと言えるのかねえ…?
もちろん「じゃあなんで主人公じゃないの? そういう人自身が世界を変えるというお話にはならないの?」という主張もわからんではないけどさ。

なんといっても、主人公は客を呼べなきゃいけない。
その場合は、どうしたって、なかなか実際上も少数のキャラクターは、あんまり受けないのではないか…もちろん、その少数性を商品にして成功したものもあるし、多数派的な、いわゆる「共感を呼ぶ」キャラクターをいわゆる”ワトソン役”にするとう作劇術も、すでにサブカル、エンタメ界は完成させてはいるが、厳然と「あまりマイナーな属性の人は主人公にすると興行的にね…」と。
「やっぱり日本人横綱がいないと大相撲は盛り上がらない」とか「他県から転入してきた生徒ばかりの高校じゃ、甲子園に出ても地元は盛り上がらない」は厳密にいえば狭量な偏見かもしれないが、まあ事実というものでしょう。



さらにぶっちゃっけて、、これって「ジャッキー・ロビンソン」じゃないのかねえ…最初の黒人大リーグメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンは非常に模範的な人格者で、「あまりに優等生すぎる」的なことも言われているが、パイオニアとしてはそういう模範生である必要があったし、それを突破口にして「悪童」「ならずもの」的な奔放なクセのある黒人選手も、その後は輩出され、そのままでヒーローになり得たりしてるわけで。

これが一点。

もうひとつは、これも何度も書いた話だけど
「ありきたりじゃ面白くないから、テンプレのやつを敢えてずらしてみるか!」ということだけで、どんどんとキャラのイメージは変わってしまうのではないか、というね。

高度に発達した「テンプレ破り」は、ポリコレと区別がつかない(俺は)。女性、民族キャラクターなどを例に…… - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160508/p3

あずまんが大王で「大阪」が人気キャラクターになったとき、
「大阪出身のキャラクターは抜け目がなくてがめつくて、金勘定にキビシイというのがお約束なのに、おっとり(というのか)したボケの子が出るなんて!」みたいな反響があったと記憶しております。

大阪万博

大阪万博

その「パターンやぶり」の結果、こんなホンマで、いやこんな本までできる人気キャラクターになった。


なにしろ、自分の大阪イメージも、パーやんに加えて主にこれだ(笑)


思えば「ダイ・ハード」で、日系企業の厳重なコンピュータ・セキュリティを破る、つまり知的でナードなハッカーがアフリカンアメリカン、いわゆる黒人だったですよね?


このひとが演じたタイプのハッカー描写は、今では別の意味で「あまりにステレオタイプ」だとしていじられてるけど(笑)、それはそれとしてこのへんはちょっとしたテンプレ破りですかね。まあ、特攻野郎Aチームでも、コングは「大統領でもぶんなぐってみせらあ」な肉体派でもありつつ「メカの天才」だったけれどな。

(↑最近の「ステレオタイプでベタすぎるハッカー」のいじられ方)

これがアジア系だと、同じマイノリティであっても、とたんにステレオタイプ的になる。


「整備士として油まみれでメカのメンテナンスに取り組む、ややオタク気質の女性」なんてのは、登場時には、どう考えても従来のステレオタイプを脱した画期的なものだったと思うのですが、あっという間に、別種のテンプレにもなって、しかも整備士という職業上、エースパイロットの主人公をサポートする別種の「マジカル・二グロ」になった、と言えるかもしれない。

英国のエリザベス女王は第二次大戦中、自動車整備兵として活躍〜当時の写真色々&「整備士ヒロイン列伝」 - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1134037


さらにいうと、ややマッドの入った「はかせ」役も、女性が担うこともある。

シン・ゴジラで女性性を強調しない登場人物(尾頭課長補佐)が人気に見えるのは、ポリコレ的に大変いいこと…なのかしら? - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160810/p2


キャラクターの「パターンを破る」のと「偏見の打破」の関係について(再論)〜「進撃の巨人」を例に - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20160603/p1

それはそれとして補佐役は「最終回で死ぬナイスなおじさん」とも言い換えられる。この系譜に敬意を。

ここにマイノリティの属性やステレオタイプを付加することの是非はさておき、この「最終回で死ぬナイスなおじさん 」の系譜や、キャラクター、ストーリーの進化にはあらためて注目・分析する必要があるのではないかな。仮に今までのがポリティカルコレクトの面で問題だとして、その問題を打破するためにも、過去の事例の分析は必要だ。

最終回で死ぬナイスなおじさん - Togetterまとめ https://togetter.com/li/745881
事実上の渋谷凛 @honest_sigyn 2014-11-16 10:21:00
40代手前か半ばくらいでチーム最年長、落ち着いているけどユーモアもあり、昔敵軍の攻撃で家族を失ったみたいな設定もある。主人公の精神的支柱だけど最終回で死んで主人公覚醒のきっかけになる感じのロボアニメのナイスなおじさんに憧れるのをやめろと言っているんだよ


事実上の渋谷凛 @honest_sigyn 2014-11-16 10:22:12
そういうおじさんにワイルドターキー飲ませたりラッキーストライクを吸わせるんじゃない


事実上の渋谷凛 @honest_sigyn 2014-11-16 10:23:52
あとなんかそういうナイスなおじさんに子供がいる場合、高確率で娘なの何故なんでしょうね


事実上の渋谷凛 @honest_sigyn 2014-11-16 10:25:11
貴方達はそういうおじさんと新人の主人公のチームの中にいる、長身細身で嫌味ばかり言ってくるタイプの人だよ現実を見ろ

 
エリア88」におけるマジカル二グロはキム王子かもしれないが、それはそれ。