学生の感情を害すな:米大学のニューノーマル http://jp.wsj.com/articles/SB12258386103811603570704582653001640244814
……近年、何百もの大学が偏見対応チームを立ち上げ、さまざまな政治的思想の学生たちから寄せられる何千件もの苦情に対処している。苦情の内容は人種、性別、性的指向、政治観を巡って侮辱または中傷を受けたというものだ。一部の大学では、教授が過激な左翼思想を持っているとみなした保守的な学生が、それを暴露しようと講義の映像をネットに投稿したりもしている。
大学教員で構成する各団体は教室での動画撮影禁止を要求し反撃に出ているほか、一部の州では構内で言論の自由を保護するための法案が提出されている。しかし、言論の自由に基づくアカデミックな議論という理想と教室に忍び寄る自主規制との板挟みで身動きが取れなくなっている教員は日に日に増えている。
南メソジスト大学の法学教授で、言論の自由などについて定めた合衆国憲法修正第1条の専門家でもあるデール・カーペンター氏は、こうした変化の一因は2011年に教育省公民権局が学校に対し、性的嫌がらせから学生を保護しなければ提訴されるリスクがあると勧告する書簡を送付したことにあるとみている……
はー、やっぱりそうでありますか、と思うのでした。
二度ほど、この話は取り上げたことがある。
学校教師の脱線・個人的主張授業をどうするか&ハングル雑談 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110828/p4
公立高校の倫理授業で教師が「朝日新聞の罪」というプリントを配って自説を開陳?【未確認情報】 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150124/p4
うむ、うまいぐあいに”両方向”の例を取り上げていたから、やりやすいな。
ただ、自分はその授業内容そのものではなく、もっと大きい環境的な問題に興味があるのです。その部分を再掲載したい。
「教室密室時代」は終わり、こういう話はダダ漏れする。それ善でもあり、悪でもある。
「県教委へのメールで発覚」と新聞記事にはあるが、その前に2ちゃんねるで「体験談」的な情報が流れ、資料画像も出てたんだってね。
むかし、たとえば自分が少年時代のこういう逸脱授業があまり公にならなかったのは、こういう経路が無かったからでもある。
言うまでもないが、教室において教師は絶大な権力を持つ独裁者であり、専制君主である。どこかの敬称でいえば「大佐」かもしれない。
合法的な権力を振るうこともあれば、そこでの行状が外に漏れない「密室」なために、本来は問題視されることが隠蔽されたこともあったろう。あるいは支配される生徒が、「それは客観的には問題である」ということを比較対象もなく認識できないのかもしれない。
ただ、当時「2ちゃんねる」があって、ICレコーダーがあったら…たとえば自分もインターネットで、「XXXXとうちの授業で先生言ってんだけど、これってアリ?」みたいに情報を漏らしていたかもしれんのう(笑)。
これは「ダダ漏れ民主主義」の成果であり、アラブの強権社会がフェイスブックによって破られていくのと同様なものかもしれない。少なくとも生徒がそういうふうに教室の情報を、だれもが見られて意見を言える場所に持っていくのが悪いことだとは言えない。
教師は、だから脱線授業に関しては「(不満な)生徒が(批判的に)脱線授業のことを外に漏らすかもしれない」ということも覚悟完了した上で「でも、やるんだよ!」とやるか、あるいは生徒間の相互監視・密告システムを構築し、機密が教室共和国の外に流れるのをカンペキに防いだ上で行う…のが、このITクラウドグローバルメガトン社会の流儀かもしれない。
この前も、密室の取り調べを見事にICレコーダーひとつが粉砕したわけだけど、世の中いまや、「ペンは剣よりも強し、そして録音はペンよりも強し」。なのだ。
特に録音録画は問題発言が出るのをじっと待っていればいいわけだからね。
そういえば、政治家の失言問題がたびたび政局になるのは以前からではあるけど、物理的にどんな小さな会合でも、「何がしかの音源が存在する」ことがそれを強化する背景になっていると思うのです。
ICレコーダーの小型化、高性能化、長時間録音化などの、テープレコーダーと比較しての機能向上はいずれも程度問題ではあったけど、結果的に社会を大いに変えている。
これ、週刊誌の記事なので本当にこんな人がいるかどうかわからんのだけど、ビジネス社会の中ではICレコーダーを回しっぱなしにして、24時間会話を録音する人がいると。
この人が、さまざまなトラブルに直面したとき、圧倒的に優位に立てるのは間違いないだろう(もちろん会話の中では自分だって放言や問題発言をするし、相手も立派なことや正論を言っているだろう。しかし、どの「問題発言」を録音と共に公にするかの選択権は、録音者にあるのだから…)
「24時間録音族」急増の背景 ICレコーダーの小型・高性能化│NEWSポストセブン https://www.news-postseven.com/archives/20121102_152227.html
何気ない会話がいつの間にか記録され、それが自分に不利な材料として使われる――。いま巷では、ICレコーダーで会話や物音を録音し、それを“武器”として使う「録音族」が急増している。もはや「口が滑った」では済まされなくなった実態はどうなっているのか。
都内在住の30代男性は、セクハラを認定され退職を余儀なくされた。
「若くて可愛い女性のバイトに一目惚れしてしまったんです。人懐っこいから、僕に好意があると勘違いして、遅番で2人きりになったような時には『肩でも揉んであげるよ』なんてスキンシップしていた。
そうしたらある日、“これまでのセクハラ発言を録音した”といってレコーダーを突きつけられたんです。もう真っ青ですよ。職場にはいられなくなり、辞表を出しました」
かように現代社会は「録音」の脅威にさらされている。本来は会議などに使われるICレコーダーを、トラブル回避など“自己防衛”のためだけでなく、相手を攻撃する材料として利用する人が急増しているからだ。
背景にあるのはICレコーダーの小型化・高性能化だ。
大学教授が講義で「問題発言」がないか、隠し録音や録画で監視する―これは「卑怯で陰湿なスパイ・監視行為」か「重要で勇敢な取材活動、ジャーナリズムの鑑」か?
twitter上でこんなやり取りをしたりしました。
学生の感情を害すな:米大学のニューノーマル https://t.co/1llvlMJG6S
— さとうしん (@satoshin257) 2017年8月24日
「一部の大学では、教授が過激な左翼思想を持っているとみなした保守的な学生が、それを暴露しようと講義の映像をネットに投稿したりもしている。」
gryphon(まとめ用RT多)
これからどんどん、教室で双方が「問題発言」がないかと録音し、それをアップロードとかする動きは増えるだろうなあ。
壇上で語る側がそれを前提に、放言を慎むほかないし、生徒がそれぐらい゛生意気゛なのも悪いことじゃないだろうけど
さとうしん @satoshin257 19 時間19 時間前
で、余談を慎んで粛々とカリキュラムに定められた通りに講義が進められることになると。
gryphon(まとめ用RT多)
昭和の御代や平成初期の古きよき「名物教授」の多くは、ストライクゾーンの判定が緩かったから成立していたというのも一面の事実ですね。
さとうしん @satoshin257 19 時間19 時間前
まあ教育がゆるゆるというのはそういう利点もあるんですね。休講連発でも大学側から特に何も言われなかったんでしょうし。
AIS、ドライブレコーダー、そしてICレコーダー…記録装置が完全に普及した社会とは - Togetterまとめ http://togetter.com/li/617125
なんてまとめもしたわけだけど、以前から言うてますように、お互いが、あるいは講演者が「この会話(講演)を録音されているかもしれない」という緊張感の下で話しているなら、ポリコレに反した差別発言も、あるいは「トランプとその支持者なんか撃ち殺せ!」的な扇動発言も、みなが慎むようになり、いまより差別や暴言の減った平和で丁寧な世の中がやってくると思うのです(笑)。
これがいわゆる「恐怖の均衡」だと(笑)。
そして大学教授さんが、机の下で回るICレコーダーと共に発言を左右から監視される社会は、いったん到来したら、二度と過去には戻らないでしょうね。