(以下、まさかとは思うが、歴史モノでネタバレとかいうんじゃないぞ。そういう前提で書きます)
みなもと太郎「風雲児たち」潮社版の27巻では、佐久間象山の松代藩を紹介するのにかこつけて、作者が書きたかったであろう真田物語をちょっと漫画化している。(京都人のみなもと氏、やっぱり根底では徳川ギライの豊臣びいきが基層にあるとおぼしい)
大坂夏の陣まで描かれているが、今回のドラマの場面も・・・
ドラマ的にも盛り上がるでしょうが、
「一族、あえて敵味方に分かれよう。そうすればどっちが勝ってもお家は残る」
という戦略、
そうそうとれるもんでもない。
というか、そういう例はあるだろうけど、本当に権力争いや憎しみで敵味方に分かれたのか、上のような意識で分かれたのかなんてわからんじゃん。
大河ドラマ・保元の乱で「一族が敵味方になれば平家自体は安泰じゃ!」の新解釈。そして徳川水戸家も?? - 見えない道場本舗 http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120526/p2
ただね、真田家はその後、勝った信幸が必死の助命嘆願をして、真幸・信繁親子が命をながらえた(その結果、家康の命があぶなくなったのだが(笑))という結果的な事実が残ってる(よね)ので、少なくとも憎しみあっての敵味方ではない、ということが状況的にわかるわけ。
それは貴重な歴史の一風景であろう。
そして、話はとぶけど、
上のリンクにあるように、
実は水戸藩が尊王論の総本山になったのは、家康によって「未来にもし、天皇家vs徳川将軍体制の内戦が発生したら水戸藩は天皇家につけ。そうすればもし将軍体制が滅んでも、最低限徳川家の血は生き残る」という密命を帯びていたゆえだった…という、今では検証のしようもないだろう壮大な伝奇的仮説も、ここで再度思い起こしてほしい。
「真田丸」はフィクションだが、あれぐらい濃密に徳川が真田を意識したと仮定するなら「関ヶ原の真田を見て、家康や秀忠は『対皇室内乱を想定したスペア戦略』として、水戸家の尊王化を進めた」なんてことも想像できるではないか。
三谷幸喜とみなもと太郎
三谷がきわめてみなもと太郎をリスペクトし、新選組!のシナリオをかくときも「冗談新選組」を参考にしたと公言しているのは周知のとおりだ。
で、このレベルの「参考」は、描き方やキャラ造形もさることながら「壮大な歴史物語の中で、どの場面をピックアップするか」も関係してくる。
今回の真田丸、みなもと太郎が風雲児たちのセルフスピンオフ作品として、作品が始まる前の戦国時代に焦点をあてて描いた「風雲児たち番外 風雲戦国伝」とのエピソードチョイスのかさなりが面白かった。
もちろんみなもと氏は司馬遼太郎など多数の歴史作家をリスペクトしているし、たとえば司馬良太郎は徳富蘇峰の「近世日本国民史」のエピソードの取捨選択を多いに参考にしているようですね。
※以下参考↓
「司馬遼太郎はどういう風に、シロウトをだましてきたのか?」(※褒め言葉) - Togetterまとめ http://togetter.com/li/986379
家康など、歴史小説等の「出典・元ネタ」話〜山岡荘八、司馬遼太郎、田中芳樹、そして徳富蘇峰 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/653638
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※放送後のツイート
ネタバレをやっぱり懸念して、上と同じこのコマを放送後にtwitterに投稿したら、反響が大きかった
#真田丸 見ました。
— gryphonjapan (@gryphonjapan) 2016年9月4日
みなもと太郎がギャグにしたこの場面を、もっと感動的に描いたという感じですね。
家の分裂でなく「保険としての両軍所属」「勝敗が決した後の相互救援」に重点を置く描き方でも、作家によっていかようにも変わる。 pic.twitter.com/sNbIJKHv7x