蔵書整理をしてたら、唐突に本が出てきたシリーズ。
内容(「BOOK」データベースより)
- 作者: 有田芳生
- 出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ
- 発売日: 2008/03
- メディア: 新書
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深刻なイジメやあいつぐ少年事件。その背景には、過去10年余りの間に、劇的に発展したメディアの影響があった。オウム真理教による一連の事件が人々の記憶から風化していくなかで、当時繰り返し流されたニュース映像を見続けた子どもたちの心は、大人が気づかない間に蝕まれていた。インターネットや携帯電話など、個人に向けて発信されるメディアからの情報が氾濫する現代、親はわが子をどう守っていけばいいのか?TVでは言えなかったメディアの危険性に対する警告。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
有田/芳生
1952年、京都府生まれ。出版社勤務を経て、フリーとなり、「朝日ジャーナル」で霊感商法批判キャンペーンに参加。「週刊文春」などで統一教会報道。都はるみ、テレサ・テンなどの人物ノンフィクションを執筆。テレビ番組のコメンテーターを続けた後、2007年の参議院選挙では新党日本から立候補する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
この本は、2012年にこのブログで紹介したあと、どっかに見つからなくなってしまったのが、今回の蔵書整理で再発見された。
そいで、パラパラと読み直したのだが。
・・・・・・・その期間に流行って、その間に批判書も出て注目を浴びた「江戸しぐさ」とダブって見えてしまったりもした。
2012年は穏当な表現にとどめたのだが、もう少し具体的に再紹介したほうがいいと思い、再度記事にする(手抜きでブログのネタを再利用、という面もなくはない(笑))
では、過去の文章を少し転載し使用。
現在活躍している、国会議員の著作にあるのだが・・・
いろんな人にインタビューしてコメントを引用しつつ、自分の考えも述べる形式の文章だが・・・小見出しは
「テレビを消して想像力を取り戻せ!!」
とある。
ルナ子ども相談所所長の岩佐京子さんは「テレビを消せ」という指導を、30年以上前から行っている。
「保健所で3歳児の心理相談をしていたとき、子どもたちの異変に気がついたのです。しゃべらない、理解力が低い、落ち着かない。多くは自閉症だと診断されるのですが、私が見てきた限りではそう単純ではなかった。」
岩佐さんが行った指導とは、テレビやビデオをともかく見せるな、というものだった。
「異変のある子どもたちの生活は、とにかくテレビ漬けでした。しかしテレビを消すことで症状が緩和される子どもがたしかにいるのです。必然的に親の目が子どもに向かうというメリットも見逃せない」
自閉症が報告されるようになった昭和30年代が、テレビの普及率の高まりと重なっていることにも岩佐さんは注目している。
・・・(略)川崎医科大学の片岡直樹教授は警告する。
「小児科医を30年近くやっていて痛感するのは、生まれて3、4カ月したらずっとテレビを見ている子どもが増えていることです、こういう子どもたちはテレビを切ると泣き、つけると泣きやむ。多動や言葉が出なくなる原因はここにもある(略)」
い、い、いいのかなあこれ。
少なくとも著者は、これらの意見を批判的に検討するとかではなく、全体的に賛同、肯定的な文脈で取り上げていることは間違いない。少なくとも直接的な疑念の表明はない。
これと似たりよったりのアレではないかなあ?
■維新の会「わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できる」
http://www.tokuteishimasuta.com/archives/6177381.html
■維新の会に続く“発達障害”誤解発言、議員連盟「予防は簡単」
http://www.ikuji-support.com/news_UXHcwS1FS.html
というか、さっき引用した本の著者(その後国会議員になった)は、アメリカの小児学会が1999年に「子どものテレビ氏長時間が1日に1−2時間を越えないように指導するのは、小児科医の役割である。とくに2歳未満の子どもにはテレビを見せるべきではない」と勧告し、その理由として「暴力や性描写のシーンが子どもの行動を歪めるだけでなく、2歳未満では脳の発達に問題が生じる」とした例についてこう述べている。
この勧告に対して科学的な実証性に乏しいとの批判が出された。
科学的実証は必要だ。しかし子どもたちを育てている両親や教育関係者にとっては、そこに「きざし」があれば対策を求めるのは当然のことだ。特定の子どもたちに問題シーン満載のテレビを長時間見せ続け、数年後に「問題あり」との結論が出たならば、誰が責任を取るというのだろうか。神戸の少年事件が社会を震撼させていたとき、著名な精神科医が「こういう事件は10年に1度くらい起きるんです」と私の横で語ったことを思い出す。日々子どもと接しているものが知りたいのは、統計的事実ではなく、「わが子(孫)」ができるだけ問題行動を起こさずにすくすくと育つ道筋なのだ。「100人の死は悲劇だが100万人の死は統計だ」と述べたのはナチズムを支えたアイヒマンだ。人間を巻き込む事件を統計的に捉えるところからは、問題解決への方向は見えてこない。
・・・こういうふうに主張しているから、やはり岩佐氏の自閉症とテレビの関連付けにかんしても、似たスタンスなのではないかと思われる。
い、い、いいのかなあ。
敢えて好意的にみるなら
まあ「疫学的論議(仮説)」はある程度の”不謹慎”や”不都合な真実(政治的に正しくない)”を感じても、それで萎縮するよりはとりあえず提示し、検証を待つべきだ・・・という話も分からないではないのですよ。
麦飯とかっけ予防の関係、医者や看護婦の手洗いと患者の死亡率だって最初は鼻で笑われていただろうし。
また「実証性っていっても、こどもを実際に2標本に分けて、片方に俗悪テレビを見せて比較するわけにはいかないじゃないか」というのも、確かに社会学のある弱点をついてはいる、のだが・・・・
さすがにそれ(仮説)にしたって、ピンからキリまであるんじゃないか?とは思うのだが。
「自閉症が報告されるようになった昭和30年代が、テレビの普及率の高まりと重なっている」というのも偽の相関じゃないかなあ・・・
アリバイも作りたいことであるし、「でもぼくは、自閉症(と診断される症状)はテレビ視聴とは関係ない、肉体的な病気だと思いますよ」、とは言っておきたい。小児科一筋30年、とか、昔保健所勤務、いま「子ども相談所所長」の人より、実例を見る数は少ないけれども。