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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

9.11テロから五周年。

時は容赦なく過ぎていき、あのビル崩落から5年が立った。当然ながらというべきか、世界の騒乱は収まる気配はない。
さて、それを特に意識したわけじゃないのだが、中野翠のコラム集をまとめて読む機会がありました。
「ほぼ地獄。ほぼ天国。」
「あんまりな」


ほぼ地獄。ほぼ天国。

ほぼ地獄。ほぼ天国。

あんまりな

あんまりな


の2冊で、これが2001年から2002年にかけてのコラム。
ご存知の通り、中野女史は主にサンデー毎日の見開き2ページで毎週書いている人だから、最近は「偽隠居」を気取って日々の時事風俗より古典芸能に傾いているとはいえ、あとから読み直してみると「日本の定点観測員」としてやはり得がたい人材である。本質的なところではぶれないしな。
この人はある意味、理想の女性・・・・というと、写真とかを見た人が当方を特殊な趣味の持ち主と誤解するやもしれず(笑)。だから付け加えて言うと、その倫理的矜持、内面の話です内面の(笑)。
ついでにいうと、彼女の映画評、映画ベストは驚くほど自分の選ぶものと違っている。マイナー好み過ぎ。


さて、話を戻すと、中野氏はやはり9.11直後にはこの話題一色(そのすぐ後、古今亭志ん朝が亡くなられたため同時並行でこのふたつの悲しみと向き合うことになっているが)で、いろいろテレビの前で印象に残ったことを記録している。
こういう場面、きちんとテレビに映ったものも、実はあっというまに情報の洪水にのまれて消えてしまうんだよな。
とり・みきのように事件報道をビデオにとっている人も少数派だし。


その中で「ほぼ地獄・・・」の中の一節が、印象深かった。

巷のアメリカ人たちの仲で、今、特に印象に残っているのは、ニューヨークのあるおやじが言った言葉だ。
「俺たちはこんなことで負けない。世界貿易センタービルの跡地にモニュメントなんて建てない。あの双子ビルを建て直すんだ。今度は三本建ててやる 」


私は「はあっ」とのけぞった。そうか、そうなのね、そういう発想なのね。(略)それがアメリカ的なガッツというものじゃないだろうか。
私はこういうガッツを持った人たちが好きだ。そのたくましさ、しぶとさ、無邪気さにホレボレしてしまう。愛すべき人たちと思う。
愛しているけど・・・とてもついていけないとも思う。私にはそういう種類のガッツはない。


はは、なるほど。
実はレーガンが、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故に対して演説し、史上に残るスピーチとして歴史に残っている言葉も、要は「われわれはやめない、まだ宇宙探索を続ける」というものだった。これに関係した話、最近読んだな。何だったかな。読みすぎて何の本かわからねえ。
昔読んだ中では黒岩徹「不思議な英語の国」がこの話を書いていた。



また、繰り返し(2004年にもこのブログhttp://d.hatena.ne.jp/gryphon/20040912#p2で触れている)になるけど、このテロ事件直後のWWEの宣言というのも読み直したい。(ひねリンルポ)

http://www.kansenki.net/report/01/0913wwf_hine.html
ビンス・マクマホンはこう語った。

「今夜、アメリカの魂はここ、テキサス州ヒューストンに生きている!(大歓声)
このアリーナにいるみんな、世界中でテレビを観ている視聴者達のために、我々は、この火曜日のNYとDCでのテロ行為の被害者、被害者の家族友人達に、哀悼の念を捧げたい。
我々の国の指導者達は、我々に日常、アメリカの日常に戻れと言っている。我々の憲法で定められた権利を行使せよと言っている。そして私はこれが、あの火曜日の悲劇以来初めての、この規模での人々の集まりだと思う。大切なのは、われわれのこの集まりがテロリズムに送るメッセージだ。それは単純に『我々は、恐怖に怯えながら暮らしたりしない!』ということだ。
ヒューストンの人々は恐れない。
テキサスの人々は恐れない。
そして、アメリカ国民は恐れない。
我々は誇り高き国民だ。我々自身に、我々の国に、そしてアメリカ人であることを誇る(会場再び大「USA」コール)。
そして我々は闘う。
我々は我々の家族のために、
我々の権利のために、
そして我々のこの偉大な国のために。
アメリカの心は傷ついた。しかし我々の魂は輝く、ちょうど我々の自由の灯火が決して消えないように。ワールドレスリングフェデレーション(註:当時)は、このコンパックセンターに来てくれたあなた方一人一人に感謝する。ワールドレスリングフェデレーションは、これをテレビで観ているあなた方一人一人に感謝する。そして我々は、あなた方の前でパフォーマンスをできるという名誉と特権に対して感謝する。」

中野翠

ニューヨークおやじの一言に、私はアメリカへの愛も違和感も、両方激しくかき立てられた。

と結んでいる。