INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

日常体験はトリックに使えるか&特殊な知識はどこまでがフェアか〜芦辺拓氏の回答も収録(ミステリー特集3)

twitterを再構成

【ミステリー特集4】

1:作家は「日常の謎」やトリックを、実生活の体験から思いつくことってあるのだろうか
2:どこまで「一般性のない知識」をトリックにしていいのだろうか

…について(いいかげんに)考えたい。


とある「日常の謎」っぽいtogetterから…だけど解決には特殊な知識が必要?

四カ月前、こういうtogetterが話題になった。

【この意味わかる?】綺麗なお姉さんがレジの最後尾でやってしまった行動 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/828394
 
ヤマネコ @ume_yamaneko 2015-05-29 21:01:01
今起こった事をありのままry
値引きで混雑した某所レジ。お店のスタッフらしきおじさんが「レジ最後尾」の…

当方、これにコメント付けてる。
『自分は全然謎が解けなかったが、例えば創作者がこういう話をうまくアレンジすると、「日常の謎ミステリー」ができるんだろうな。/しかしどこまで、一部で知られてる知識はトリックに使ってもフェア判定なんだろう』


これは、とあるホームズ譚が念頭にあった。
そのホームズ物って、これな。

http://www.221b.jp/h/croo.html
自分は小さい頃、小遣いでホームズ文庫本を買った。
そして、それがそもそも間違いだといわれるとひと言もないが「まじめな謎解き」として読んだら「なんじゃこりゃあ、XX知ってないとわかんないだろ!」と。

「そうだ。知っての通り、◆◆◆は時々道を踏み外した。そしてある時、XXXXXXXXXXXと同じ過ちを犯した。XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXを知っているだろう?僕の◇◇の知識は少々錆付いているかもしれないが、XXXXXXXXXXXXXXXXXXにその話があるはずだ」

しかし大人になれば
「…XXの話は少なくともイギリスでは一般常識、教養なのだろう。知らないのはこっちの責任かもな」と思ったのだった。
日本だって、短歌知識が必要な某大家の有名作品があるしね。


日常体験からミステリーは作れるか?プロの推理作家に聞いてみた&回答

で、元に戻って上のtogetter、やはり解決には特殊知識が必要となるがフェアだろうか?(フェアもなにも、別に書いた人はミステリーのつもりじゃないだろうが)


特殊知識の話から、最初に書いた『実体験を元にミステリーのトリックは生めるか?』の話のほうに戻るが、自分のブクマ検索したら
※【注意】最近の当ブログ、リンクを貼るとURLは正常なのに404になったりして読めませんが、実際は先方のページは生きています。ご注意の上検索など適宜工夫を

団地の公園で19:00になっても遊んでいる子どもと談笑しているお母さんに関する推理。 - http://houta.hatenablog.com/entry/2014/07/26/200000

という記事があってな。
上記事、ブクマは
「著者は他人の家をあれこれ(非難がましく)詮索するな」と評判が悪かった。
http://b.hatena.ne.jp/entry/houta.hatenablog.com/entry/2014/07/26/200000


まあ、それはともかく本当に日常の中で、これはトリックに使える!
みたいな何かってあるのだろうか。多分あるんだろうな。
自分も生涯で何度か「あ、これトリックになるわ」と思ったことあった。相手やこっちの勘違いや言い間違いがネタ=トリックの宝庫。


しかしまあ、一般人はすぐ忘れるのね、そんなの。自分もひとつぐらいしか覚えていない。プロはこういうのを忘れなかったり、ちゃんとメモとかを取っているのかもしれない。


私が本職推理作家とtwitter上でもやり取りできるのは、本日に一作紹介した 芦辺 拓氏 @ashibetaku だけなので、ここは図々しくも、おそるおそる聞いてみる。

「Q:日常生活での体験が、ほぼそのままトリックになった経験ってあるでしょうか?」

どうなんでしょうね。


【回答!!】

https://twitter.com/ashibetaku/

芦辺 拓@ashibetaku
零細探偵小説家です。仕事はhttp://bit.ly/jfXjYy またの名を森江春策Pと申しまして、ニコマス動画、ラブライブ!、AGC38など、どこでも平均年齢を押し上げてます。

「Q:日常生活での体験が、ほぼそのままトリックになった経験ってあるでしょうか?」

A①:狭義のトリックは日常感覚と無縁では成り立たない場合が多いので、体験が土台になることは珍しくないのですが、そのままというのは希少かも。
 
A②:こないだ25年ぶりに創元推理文庫に入れてもらった『殺人喜劇の13人』は、その後消えたり、執筆時すでに消えつつあったアイテムを意図的にトリックに使ってるわけだけど(8ミリ映写機、風呂のガスコックetc)、それで何か実際トリックじみた現象が起きたわけではなく、以降の作品も同様。

 
A③:かといって絶無というわけではなく、『月蝕姫のキス』冒頭の“歩く順番”の錯誤は、自分が実際にした行動が他者からはどう見えるかと考えたことがきっかけ。『歴史街道殺人事件』の電話トリックは、新聞社に入って研修で社会部か地方部の電話番をしていたときにやった失敗から思いつきました。
月蝕姫のキス (ミステリーYA!)

月蝕姫のキス (ミステリーYA!)

 
A④:「七つの心を持つ探偵」の非効率な新幹線の乗り継ぎは、ネットの乗換案内などなかったとき慌てて窓口で指定してしまったもの。「田所警部に花束を」の大阪−名古屋の移動も自分が実際に使っていたものですが、これでわかるのは現実の体験は捨てトリック、せいぜい話の枕にしかならないということ
 
A⑤:現実生活で起きる錯誤がミステリのトリックに使えるほどのものであれば、そもそもそういうことが起きたと気づかないものでは。というわけで、日常生活の体験での体験が、ほぼそのままトリックになった経験はあるけど、どれも大したもんじゃねえ――が答えであります。 
 
A⑥:このことは、いわゆる「日常の謎」ものを書こうとしている人たちに肝に銘じてほしいことだけど、まぁ自分に一生縁のないジャンルに差し出口することもありませんでしたか。おしまい。
 
A⑦:あ、思い出した。『迷宮パノラマ館』所収の十代のころ書いた森江探偵もの「二つの扉」は体験が元になったと言えるかな。
迷宮パノラマ館

迷宮パノラマ館

ベッドを少しずらすだけで起きた錯覚にヤッター!と喜んで「幻影城」の新人賞に送ったんだけど、お読みになればわかる通り大したものではない。現実の体験なんてこんなもの。

gryphonjapan@gryphonjapan

ほんのひとことでも頂ければ幸いだと思っていたのに、実に詳しいご回答恐縮の至りです。ありがとうございました。
あとで、ツイッター以外の場所でも紹介させていただければと思います。
@ashibetaku

「五十円玉二十枚の謎」

コメント欄で言われて、紹介し忘れに気付いた。といっても自分は原典を読んだわけでなく、何かのミステリガイドに紹介があったのです。
そのままウィキペを

wikipedia:五十円玉二十枚の謎
五十円玉二十枚の謎(ごじゅうえんだまにじゅうまいのなぞ)は、推理作家の若竹七海が大学生のときに体験した奇妙な出来事を巡る謎。その奇妙な出来事とは、若竹七海がアルバイトをしていた池袋の書店で、毎週土曜日になると50円玉20枚を握りしめた男が現われて、千円札への両替だけ済ませるといそいそと帰っていったというものである。今までに多くの推理作家がこの謎に挑戦しており、解答の一般公募も1991年と2000年の計2回行われている。
 
競作 五十円玉二十枚の謎[編集]
1990年、若手推理作家数十人が集まって雑談をしていた際に、若竹七海が「五十円玉二十枚の謎」の話を持ち出した。その後、東京創元社の編集者(当時)・戸川安宣から、そのテーマで競作するという提案がなされ、年刊のオリジナル・アンソロジー鮎川哲也と十三の謎'91』(東京創元社、1991年12月)に若竹七海による「出題」、法月綸太郎「解答編Ⅰ」、依井貴裕「解答編Ⅱ」が掲載された。また、同書で一般公募の告知がなされた。
一般公募作品は締め切りまでに36編が寄せられ、またプロ作家からも新たに4編の解答編が寄せられたことから、当初予定していた『創元推理1』への掲載をやめ、別冊として単行本化することになった。
一般公募での受賞者の中には、翌1994年1月に東京創元社から単行本デビューすることになる倉知淳や、同じく1994年に第1回創元推理短編賞を受賞してデビューする剣持鷹士がいた。

競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)

競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)