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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「残酷な写真・画像は子供の心の傷になる」が確定なら、従来の「平和教育」「食育」の一部も再検証されるだろう

ダーイシュの人質事件に関連して、いくつかの学校でそういう話が出てきた。
個別の話はあんまりどうでもいいので、なぜ見せたのかを抜き出してみよう。

教諭は「情報発信の在り方や命の大切さについて考えてもらおうと思った」と話しているということです。
教諭は日ごろから授業で時事ニュースを取り上げているといい、今回は「非人道的な行為をしないでほしいとの思いで見せた」
「報道の在り方を考えさせるとともに、命の大切さに目を向けさせたかった」
「非人道的行為に怒りを感じてほしかった」
「テロ行為が許されないことを学んでもらうとともに、国際的なニュースに関心を持ってほしかった」


いや、これを聞いて思ったのだが…ほんの一昔前は、これで通じた風潮もあったのだよ。それは経験的にも分かる。


このときには…やはりかつての「サルまん」内の劇中漫画「戦争とてえま」を提示したい。自分はhttp://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090625/p3で以前紹介したので、再紹介となる。



うーーーむ(笑)。
反戦とか平和を祈る、といった建前で、通俗的な娯楽メロドラマ、あるいは残酷・恐怖・グロ描写を提供する…ということも確かにあるし、後述するが、「書いてる当人大マジメ」ながら、結果的にそうなることもあるだろう。

おっと、マウスがすべった。

http://www.tv-tokyo.co.jp/tx_drama_eienno-zero/
Osamu_info ‏@34_Liza
向井理永遠の0
おはようございます。いよいよ今夜第1話が放送ですね♪

のテレ東テレビ番組
永遠の0」遂に今夜!放送直前SP!、15:30 〜
テレビ東京開局50周年特別企画 ドラマスペシャル「永遠の0」第1夜、20:54 〜
是非観てください。観ましょう!

しかし、ここからが本題

【仮説】「死体画像とかを見た子はPTSDになるかも」は”科学・医学”の領域。見せる動機が反戦でも好戦でも関係ない。だから批判される。


「命の尊さや、テロの非人道性を訴えるために、あえて残酷な画像、記録を見てもらう。」
あのね、ちょっと前なら、それ確かに通用したところもあった!!!
だけど今は、それが通じなくなっている…それはイデオロギーの話はちょっと置いといて「見た子供がPTSDになったら、トラウマになったらどうするんだ!!」という批判が”最近”出てきたからだと思うんですよ。
不思議なもので、そういう症状が昔は無かったわけもないと思うんですが(笑)、PTSDという言葉もそんなに昔から一般化してたわけじゃないし、子供向けの残酷表現は昔のほうが緩やかだった、というのも一面の事実(ゾーニングも未発達だった)。


以前から小生、「医学は正義(或いは民主主義)の上に立つ」をひとつのキャッチフレーズにしている。
「子供たちに考えてもらうため、戦争やテロの悲惨さを訴えるため(あるいは逆に「自衛力の大切さを訴えるため」でもいい)、敢えてその悲惨な画像を、その光景を見てもらう、聞いてもらう」
これは”正義(民主主義)”の言葉として、そんなに突飛ではない。ひとつの論だと思う。

だが
「でも残酷、悲惨な映像を見た子がPSTDになる危険性あるで」
という”医学(科学)”の言葉がカウンターで出てきたら、こっちのほうが強い……と思う次第だがや。
今は医学的見解の進歩や普及途上の、ある種の過渡期だと思うんですね。だからその風潮に疎い人たちが取り残されてこういう批判を浴びているのだと思う。全国で同時多発しているのもそういうことが背景にあるのかと。

この話は以前も書いてました。「出産」や「屠畜」も同一地平上にあるかと。

政治的に正しいグロテスク」と、その教え方に関する考察(「はだしのゲン」&「銀の匙」…または「肉喰う人々」考察編 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130824/p2


少し話を整理する。
・「はだしのゲン」の中にある、性暴力などを含む残酷描写
・牛などの出産(人も含むか?)
・牛、鳥、豚の屠畜、解体、食肉化
 
などについて、いまとくに「こどもの教育」という面では、「非常に重要なことである」「社会的に価値が高い」「だから子供にも、包み隠さず見せようじゃないか」という議論がある
しかし、これに関しては、「でも実際に(出産や殺人シーンは)気持ち悪いもんは気持ち悪いんだ!自分の子供には見せたくないんだ!」「(屠畜や漁で命を失う)その対象…魚や獣たちをかわいそうと思う心(さらに一部発展して、そこの行為への罪の意識)は自然と出てきちゃうよ」という人も出てくる。
あ、さらに言うと、この種の映像や体験には、医学的な?意味かどうかは知らないけど、本当に生理的反応としての忌避をする人もいるようだ。

ベネトンはだしのゲンプライベートライアン、原爆の図…「ショッキング反戦」は医学的批判に耐えられるか?(その他右派系軍事ものも同様)

(注意:以下、ショッキングな画像があるかもしれません。了承の上お進みください)

ベネトン広告】
http://www.ne.jp/asahi/box/kuro/report/benettonad.htm

ボスニア紛争で戦死した若い兵士が着ていたシャツとズボンを撮影したもの。ユーゴスラビアの内戦の激しかった時期に、UNHCRと共同で反戦と難民の救済を呼びかけ、そのキャンペーンポスターとして使用された。(略)…血まみれの遺品は見る者へ投げかけてくる。このポスターもまた映像の衝撃の大きさから、ヨーロッパ各国でメディアへの掲載が拒否されたが、その一方で、日本やアメリカでは高く評価され、日米で広告賞を受賞した。日本では、1994年に一度だけ朝日新聞の30段広告として掲載された…
 

 

プライベートライアン
https://twitter.com/ak74u_mpl/status/274071745592438785
プライベートライアンはもともとNC-17(日本でいうR-18)の予定だったが、スピルバーグ監督が「17歳以下の子供も戦争に行ったんだ」とMPAAを説得した結果、ノーカットでR指定(日本でいうR-15)を獲得。日本版も全年齢でノーカット

 
http://machiokoshi666.blog.fc2.com/blog-entry-34.html
町山 『プライベートライアン』ていうのは、今言われてるのは、映画史上最大の残虐描写に挑んだと言われてるんですよ。
松本 ・・凄かった・・・
小西 最初の・・・20分か30分ぐらい、腸が飛び出るやつですよねえ?
町山 もう、頭が吹っ飛ぶわ、腸が飛び出るわ、腕はもげるわ・・・
松本 う〜ん・・・
小西 ノルマンディーの、あの、海の、ねえ、海岸線のところで、
町山 要するに、なんていうか、人間に弾丸て物が当たると、どういう風に人体を破壊するかっていうのを、解剖学的に見せていくような映画でしたよねえ。

 

【原爆の図】
http://www.aya.or.jp/~marukimsn/top/genindex.htm
1950年、《原爆の図》発表

それから5年後、『原爆の図 第1部 幽霊』が発表されます。
数年間描きあぐねた「原爆」を、水墨画家の位里と油彩画家の俊の共同制作で、やっとかたちにすることができたのです。
はじめは1作だけ、その後は3部作にと考えていた「原爆の図」は、とうとう15部を数えました。
最後に〈長崎〉が描かれた1982年までの32年間、夫妻は「原爆」を描き続けたのです。
 
 
丸木美術館では《原爆の図》1部から14部を常設展示しています。
(第15部〈長崎〉は長崎原爆資料館が所蔵しています。)
写真パネルを制作し、貸出をしていますので、平和学習、集い等でご利用いただければと思います。
原画の貸出と「原爆の図」展のご相談にも応じますので、どうぞお問い合わせください。

 
はだしのゲン

はだしのゲン閉架問題取材報告by朝日新聞武田肇記者
http://togetter.com/li/552852
(略)…ある時点までは、はだしのゲン平和教材として無条件に高く評価し、ゲンを撤去せよという外部の要求については断固拒否ということで意見一致していた。ある時点までは…。
 
ある時点とは昨年10月、この五人が、陳情を審査した市議会対策として、はだしのゲンの全巻を読んだときだ。この五人には、ゲンを平和教材として授業で使ったことのある元教諭も含まれるが、五巻までしか読んでなかった。
(略)

全巻、具体的には10巻目を読んだとき、五人の心がガラリと変わったという。特に衝撃だったのは、旧日本軍兵士の性暴力の描写だったという。「これが、同じゲンかと思った」。取材に応じた幹部はこう明かした。別の幹部は記者に「あの描写をお子さんに見せられますか?」と問いかけてきた。

市教委の古川康徳副教育長は「歴史認識の問題ではなく、あくまで過激な描写が子どもにふさわしくないとの判断だ」と説明。「平和教育の教材としての価値は高いと思うが、要請を見直す考えはない」と話している。

(3紙の社説がまとまっています。引用は朝日新聞
http://shasetsu.ps.land.to/index.cgi/event/1508/

当時の教育長ら幹部5人がゲンを読み直した結果、旧軍のアジアでの行為を描いた最終巻のシーンが「残酷」との見方で一致し、閲覧制限を小・中学校に求めることにした。
 発達段階にあるからこそ、子どもたちが本を自由に読む機会も、最大限に保障されなければならない。市教委事務局の対応には、その点への目配りがあまりに欠けていた。
 戦争は残酷だ。そこを正面から問う本を、教育にどう生かしていくか。知恵と工夫を重ねる必要があるが、戦争を知らぬ世代に残酷さから目を背けさせるばかりでは、平和の尊さを学びとれない。

(2紙の社説がまとまっています。引用は毎日新聞
http://shasetsu.ps.land.to/index.cgi/event/1503/
作品に残酷な描写があるのは、戦争や原爆そのものが残酷であり、それを表現しているからだ。行き過ぎた規制は表現の自由を侵す恐れがあるだけでなく、子供たちが考える機会を奪うことにもなる。今回のような規制が前例となってはならない。


上のような作品は、教育や広告批評の場面で積極的に評価されているということで並べてみたが、例えば最近アニメと映画で再度ブームが来ている「寄生獣」も同様。
自分は、あの作品を流れるテーマもその描写もすばらしく、中学生にはぜひ読んでほしい、と思っている
藤田和日郎氏も中2の息子に勧めている。
https://twitter.com/Ufujitakazuhiro/status/429569682790547457

のだが
「パラサイトが人を切り刻み、人肉をくらう場面を読んだ子供がPTSDになったらどうなる」と科学・医学の立場から言われたら是非もなし。

そういえばあれ、年齢制限ないんだよな?さすがクールジャパンのマンガだぜ。
この話も以前しました。

学校図書館の「ストライクゾーン」に入るような、入らないような漫画を妄想してみると… - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130828/p2
 
藤井誠二原作「17歳。」は、犯罪の悲惨さを子供達に伝えるため、子供たちに読む機会を与えるべきか? -http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130829/p4

結論・まとめ

・「残酷、ショッキングな映像を子供に見せると、PTSDの危険がある」というのは、いちおう政治的なイデオロギーとは関係のない、”科学・医学”の議論、視点である。
  
・これが事実なら「残酷な場面だが、戦争の悲惨さ(あるいは勇敢なわが軍、残酷無道な敵軍)を知るために…」とか「命をいただく以上、その肉がどう生まれるべきかは見ておくべきだ」という”正義”の議論より強い。
 
・これは最近の知見なども含めた「新しい概念」(の部分もある)。だから、「かつてはOK、セーフ、むしろ推奨」だったアレコレが、この『子供がPTSDになる危険』という視点によってアウトになることが出てくるだろう。
 
・それはある意味、政治的な左右や上下前後に関係なく、すべての「残酷」なものを踏み潰し、排除していくことになるかもしれない。
 
・是非もなし。



(おしまい)