最近、ちょっと必要があって岸信介の伝記や研究書をまとめ読みしました。
あんまり興味がある人ではなく、必要部分をさがして拾い読みするようなものでしたが、その本題とは別にちょっとアレな記述を見つけた。
…台北では毎年10月31日には、蒋介石総統の誕生祝いが盛大に催されていた。訪問客は…一流ホテル「円山ホテル」に宿泊する…岸には楽しみが無い。
毎年のように、行事が済むとホテルを抜け出し、台北市内まで車を飛ばして遊ぶのだという。
その晩は「円山」には帰らず、「アンバサダー・ホテル」泊まりというのがお定まりだった。その案内役を仰せつかっていた台湾人の元ホテル支配人が、実は、と言って話してくれたのが、間もなく八十歳になろうかという岸のタフな一夜の内容だった。
戦前、日本人街が華やかだった区画にある料亭に上がると、チャイナドレスの美人が数人席に呼ばれ、にぎやかな宴会が始まる。
台北で一番の美人ぞろいだという「東雲閣」「美人座」または「五月花」あたりがお気に入りで、同行の仲間とにぎやかな一夜をもうける。
(略)
芸妓は5人ぐらいついて、夜が更けたその先は個人の問題だから「分からない」そうだが、それぞれが芸妓を送って帰るのが慣例だった。
元支配人はもう一言つけくわえた。
翌朝、国民党の新聞局(広報部)担当者に会うと「岸先生は女性がお好きなんですねえ」と言ったというのだ。
彼の説明によれば、「岸さんをご招待するからには、ちゃんと用意万端整えてある、という意味ではないですか」というのだが。
(略)
北京外交が展開される中で、岸は精一杯の個人外交を台湾に対し示したが、夜の外交のほうもなかなか活発だったとの評判も高かった。
「ご高齢になられてから、女性とのコトは大丈夫だったんですか」
としばしば訊ねられたようだ。すると、笑いながらこう答えていたという。
「ナニ、あんなモンはね、ちょっと立てかけておけばいいんでね」
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先月文庫になっていたようですが、自分が読んだのはハードカバー版で451-453Pだった、とメモして置きます。作者の著書に関する信頼性は、自己判断してください。
うーむ、ひところの劇画における「右翼の親玉」「政界の黒幕」の描写には、「いい年をして女好きで、若い女性を臆面もなくはべらせて……というのがあるが、同書の記述を事実とするならなんとも典型的だな(笑)。
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そしてまた「スカルノ並みだ」というような連想をしてしまう。
私がスカルノを嫌いな理由 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/710060
अह्मद् तोदोरोकि @ahmadhito 2014-08-22 21:57:03
スカルノ嫌いの理由その1)女にだらしなさすぎる。一番はじめにこれをもってくるのはどうかと自分でも思ったけど、やっぱりこれだな。…(略)若い女に目がないスカルノはその後も根本七保子を筆頭に女をとっかえひっかえ。
「指導される民主主義」時代は特に酷くてデビ夫人をジャカルタへ戻すために東京まで大臣派遣とか公私混同どころじゃない、完全に国家の私物化。なんでプラムディヤがこういうスカルノのダメな点を等閑視できたのか不思議でならない。
まあ、女性との関係は人それぞれであり、岸信介だって「プレイボーイだ」「粋でもててた」という範囲で収まるのかもしれない。
だが、そもそも戒厳令を数十年続けた、おそるべき統制国家であった蒋介石台湾で、招待した外国要人が手配のホテルを抜け出して宴席を設け、別のホテルに泊まるといった行動を自由に認めていたとは極めて考えにくい。
上の文章では推測だが「国民党が「お膳立て」をしていた」こともありえるし、少なくとも監視や記録はしていただろう。そこで女性と不用意に関係を持つというのは、国益や外交でも問題がとても大きいことは容易に想像が付く。
「昭和の妖怪」たる本人はそんなの無頓着か、大物、粋人のあかし、ぐらいに思っていたかもしれないが、やっぱり日本全体がたまったもんじゃないよ、という思いはこれを読んで感じたものだった。