INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

映画化決定であらためて考えた、岩明明「寄生獣」随想

伝説の漫画「寄生獣」を山崎貴監督が2部作で映画化!染谷将太×深津絵里が参戦
2013年11月20日
http://eiga.com/news/20131120/1/
[映画.com ニュース] 累計発行部数1100万部を突破する岩明均氏の人気漫画「寄生獣」が、山崎貴監督(「ALWAYS 三丁目の夕日」「永遠の0」)のメガホンにより、2部作で実写映画化されることがわかった。同作は、2005年に米ニューライン・シネマが原作権を獲得したため、日本では“手が出せない”企画として伝説化していた。しかし今年に入って契約期間が終了したため、日本で数十社による争奪戦が繰り広げられ、東宝が映画化権を取得した。

寄生獣」は、月刊アフタヌーン講談社刊)に1990年1月号〜95年2月号に連載されていたSF漫画で、連載終了から20年近く経った現在も多くのファンから愛されている。ある日、空から飛来した正体不明の生物「パラサイト」が、鼻や耳から人間の頭に侵入、脳に寄生して全身を支配してしまうという設定。主人公の高校生・泉新一は、右腕に宿ったパラサイト「ミギー」と共生することにより数奇な運命をたどることに…

これは一気のまとめ買い、まとめ読みを推奨したいが

現在売られているのは少し大きめの版か。まだ現役で売れそうだから、文庫にする流れは無いだろうな。
寄生獣 完全版全8巻 完結コミックセット

寄生獣 完全版全8巻 完結コミックセット

キンドルもね
寄生獣(1) (アフタヌーンコミックス)

寄生獣(1) (アフタヌーンコミックス)

本来だったら「寄生獣」の感想といったらがっちり読み直して、がっちり長文を書きたいけど、余り時間も無い。最近映画感想なんかでやってる、あえてtwitterを経由し、140字を積み重ねていって結果的にやや長めの感想を書く・・・そんな試みをしてみました。少し文章は変えています。

@gryphonjapan
映画化記念とブログ用に「寄生獣」に関して断片的に雑感。
1:まずは映画化はめでたい…かなあ。まー、出来に正直不安はあるけど、やっぱり90年代の作品だからな。どこかで話題になって、人の目・・・とくに新世代の目に触れるのはたいへんいいことだ。あの作品は古びたくても、古びようが無い。
posted at 20:43:53
  
 
@gryphonjapan
寄生獣雑感2:
今夏の「はだしのゲン」騒動のときに半分冗談で書いたけどhttp://d.hatena.ne.jp/gryphon/2013088/p2
寄生獣」は、実際中学校や高校の図書館とかに置かれてしかるべきだ。「ゲン」の閉架措置反対の主張で「たしかに描写は残酷だ。だが重要なテーマを語るための必然性がある」という議論があったが、それが本気なら、これだって認められない道理が無い。。

  
 
@gryphonjapan
寄生獣雑感3:
あの作品では、最終的には作中でも言われてたように「ちょっと強いゲリラやテロリストに対処するようなもの」と見なして、それを自衛隊や警察の共同作戦によってひそかに掃討する・・・という小規模軍事行動のシミュレーションとしての面白さもあった。のちの「ヒストリエ」でも、そういう描き方うまいものな。
ゲリラ、テロリストといっても見た目はまったく善良な市民と分からない・・・という判別のためのサスペンスもあるし、その判別がなされたら主人公は、意識までのっとられていないのに敵扱いされる。隠し通せるか!?のサスペンスもある。
 
 
@gryphonjapan
寄生獣雑感4:
寄生獣は「感情」が無い。だから寄生獣仲間の連帯感もないし、人間における肉親間の愛情や自己犠牲、正義感のようなものもない。しかしそのパラサイトの「〜〜は無い」というリストが、そのまま裏から「人間(人間性)とは何か?」のリストであり、作品はそれを描くことになる…だからさっき書いたように「中学生に読ませたい作品」なのだ。残酷描写があろうと。

 
 

@gryphonjapan
寄生獣雑感5:
ああいう形で、全く外からの視点、文化を設定してこの社会の「普通」を相対化し、あらためて説明させる…というのが多くの古典で描かれた、SFの原初的な面白さだけど、そういうSFのある意味「ベーシック1」的な懐かしさって、読んでる時もあったよね。むろんヒクソン・グレイシーの「マウントからのチョーク」が、ベーシックだが最強のパターンであり、誰でもできるでものではない・・・というように。

 
 
@gryphonjapan
寄生獣雑感6:
この作品が描かれた時代の風潮もあって、一番外側のテーマとしては分かりやすく「自然環境(保護)vs人間第一主義」…が一見打ち出されていた
。けど、実は猫の埋葬の挿話にもあるように「人間第一主義=自然でない」からこそ「猫の死体は「死んだ以上ただのゴミ」じゃなく、丁寧に埋葬して、弔う対象になる…。ヒューマニズムは、そもそも自然と対立するエゴだが、そんなエゴから「動物を殺したくない」とか「自然は美しいから無くしたくない」と考えることもできる…とこのへんは当時、浅羽通明氏のメルマガ「流行神」で読んで、印象的だった指摘。

 
 
@gryphonjapan
寄生獣雑感7:
市長や死刑囚、寄生獣が化けた女教師などの悪役描写も秀逸だったな(このへんは稿をあらためて描きたい)だれが死刑囚役演じるんだろう。
で、それに対抗する主人公は……所謂「主人公+相棒」のバディもの。
また素朴な「平凡な俺が、超能力を手に入れて、隠れたヒーローになった!」的な願望を描く少年漫画としても、かなり高い水準だった。それを、深いテーマと両立させたのは凄かった。

あ、「俺は超能力があるけど、それは秘密にしなきゃ!バレたら大変だけど、当局がそれを追い求めて・・・」といったヒーローものとしての魅力も、「幼なじみ、ツッパリ少女、旅先で出会った子…といった、いろんなタイプの女の子に惚れられた!」という話も盛り込んでいるんだよな(笑)。ライトノベルも参考になるかと。


@gryphonjapan
寄生獣雑感8:
バディものとしては…「バディは能力あるが、ちょっとクール(冷たい奴)すぎる。主人公の『俺』は、そいつに足りない人間性や人情で、結果的にバディを導く」というものだ。ちょっと違うが「相棒」でこのタイプもメインストリームになったねえ。
でもホームズ・ワトソンコンビまで考えると王道なのかな。
たぶん、主人公「僕」を設定するとき、能力のあるスーパーマンはバディが提供、「僕」は「素朴な人情、人間性」の提供役とするなら、読者と距離が近く共感を呼ぶのだろうな。
自分は「ガンバ」「ブラックラグーン」「パンプキン・シザーズ」なんかもその仲間だと思うけど、「理想主義や素朴な正義をぶちまけるが実は無力な主人公」+「それに最初は反論したり聞き流したりするが『やれやれ』と協力する、強力なバディ。実はそういう素朴な人情こそ、彼に欠けているものを補ってくれているのだ」。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20110311/p2
というパターンが、やっぱり王道なのかな。



@gryphonjapan
寄生獣雑感8.5(余談) 
上の話から続く・・・バディもの、それも人間(素朴な理想や正義にのっとって行動)+非人間(その正義を肯定しないが、バディとのいきがかりで協力する)だと考えると、今思えば「うしおととら」とも、ほぼ同時代だったよな。当時、藤田和日郎先生は「寄生獣」を意識してたりしたんだろうか小学館講談社だし、案外、当事者は気にしてないかもだが。これは勝手な想像である。

※補足。その後、藤田和日郎氏はめっちゃ寄生獣を高く評価していたことが判明。息子に強力に薦めていた
m-dojo.hatenadiary.com


 
@gryphonjapan
寄生獣雑感9:「映画化権利は海外にある」という話はずっと聞いてたが、契約期間が満了して元に戻ってくるとは思わなかった。こうなったら名作が出来てくれ、と本当に願う。(おしまい)