この前、コラムニスト天野祐吉氏が逝去された。中島らも氏「明るい悩み相談室」と一緒の曜日に掲載されたときは、読み比べて「……」と思うぐらいだった(まあ比べる相手が悪すぎる)、そんな非熱心な読者だったが、お悔やみ申し上げたい。
この人の「CM天気図」(最後から一つ前。最後のコラムではない)が、この前の日曜TBSの人気番組「サンデーモーニング」のコーナー「風を読む」で朗読の形で紹介された。
ほんとなら全部紹介したいのだが、もちろんそうもいかないので、全文は
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201310080553.html
明治神宮外苑の国立競技場をぶっ壊して、8万人を収容する“世界一”の巨大な競技場をつくるんだそうで。かと思ったら“成長最優先”なんていう首相の言葉が、派手に新聞に躍ったりして。待てよ、この風景、どこかで見たことがあるぞと思ったら、そうだよ、50年ほど前の東京の空気にそっくりじゃないか。あのときは、オリンピック向けの工事で東京は騒音と粉塵だらけに……
(略)
…時代はあのときとすっかり変わっている。いまどき成長なんて無理があるんじゃないの?「“成長は善である”とはなんたる言い草か。私の子供たちが成長するのなら至極結構であろうが、この私がいま突然、成長し始めようものなら、それはもう悲劇である」と、経済学者のシューマッハーさんも言っている。成長から成熟へ…
(略)
……むかしの中国では、品評会などで……審査のモノサシでははかれないが、すぐれて個性的なものを「別品」と呼んで評価したという。別品。いいねえ。世界で1位とか2位とか、何かにつけてそんな順位を競い合う野暮(やぼ)な国よりも、戦争も原発もない「別品」の国がいい……別品の国に8万人の競技場はいらない…
そしてやや古い文章ですが、ここにリンクを張る。
2006-11-03 経済成長の意味。
■経済成長は、ぼくたちの努力や成長の総和でしかない。
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20061103/p1もう経済成長はいらないとか、お金だけがだいじなのではない、とかを他人に対して(それはたとえば「日本は」とか「人々は」とか「先進国は」といった表現になることも多い)口走る連中は、みんな衣食足りているどころか飽食している人々だということ。そしてその人々が、そのだいじでないはずのお金を手放そうとしたりすることはおそらくほとんどないということ。
が、それより重要なこととして、そうした人々の多くは想像力が欠如していること。経済成長ってことの意味がまったく理解できていない。
ぼくたちが経済成長するということは、別にぼくたちがお金を貯め込むということではない……(後略)
あらためて、氏のご逝去をいたみます。