上で「自称ヒトラー10人分」の独裁者が出てきた流れで。
2013.08.11の「本よみうり堂」より。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20130812-OYT8T00734.htm
- 作者: 中垣顕實
- 出版社/メーカー: 現代書館
- 発売日: 2013/06/01
- メディア: 単行本
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ユダヤ人も多く暮らすニューヨークでは、東洋で幸運、吉祥を意味するとはいえ、卍の使用には大きなリスクが伴うという。ハーケンクロイツは反ユダヤ主義の象徴、というのが常識だからだ。東洋で二千年以上にわたって親しまれた幸運のシンボルは、いかにして歪ゆがめられ、貶おとしめられたのか。著者はヒトラーの『我が闘争』をベースに、その経緯をひも解いてゆく。そこから見えるのは、ヒトラーがスワスティカ本来のポジティブな意味を知りながらシンボルを借用し、ユダヤ人に対するキリスト教徒の聖戦という意味を付加して「ハーケンクロイツ」と呼んだことだ。彼にとってはあくまでも十字架だったのだ。ところが第2次世界大戦後、英語に訳された『我が闘争』では、「ハーケンクロイツ」が「スワスティカ」という言葉にすり替えられ、キリスト教徒がホロコーストを起こした印象が巧妙に隠された。仏教やヒンズー教、またはアメリカ先住民の聖なるスワスティカに邪悪なシンボルの汚名を着せることで守られたのは、もちろんキリスト教である
実は「ハーケンクロイツと卍」は法哲学的には少々複雑な問題で…「どっちが先か、先取権があるか」でいえば、数千年のスコアをつけて卍が圧倒している。使用範囲、使用人口も……。しかも裏返っているわけだから、やはり全くの別物。
これで、「ハーケンクロイツは悪のシンボルだから、卍(まんじ)のほうも自粛すべきだ、なんていったら、まずは少林寺拳法とアントニオ猪木の立つ瀬がない(笑)。
しかし、実際のところは上の本にあるように、正当性ある「卍」の側が恐れ入って、恐縮して使用を自粛する、というのが現状ではあるのだ。
(そういえば、腕をナナメにあげる「ナチス式敬礼」も本当は民主制、共和制の本流である古代ローマの「ローマ式敬礼」なんだよな。ダヌンツィオやムソリーニが復活させたのが悪かった(笑)…と思ったら創作説もあるのが面白い。→ローマ式敬礼 ナチス式敬礼)
この問題に関して…「卍とハーケンクロイツは別物だ! 似てるから卍も自粛せよ、というのはアジア、仏教に関する不当な差別じゃないか!!」という論陣をかつて(ほぼ唯一?)宮崎哲弥氏が張ったことがあったな。ポケモンの中に卍マークが入ってた、ということだっけ。
12/03 09:03 ポケモンの「卍」に待った ユダヤ人抗議で使用中止 外信28 #01
【ニューヨーク2日共同】世界的人気の日本アニメ「ポケットモンスター(ポケモン)」の日本語版カードゲームに印刷された「卍(まんじ)」の記号が「ナチス・ドイツの紋章『かぎ十字』を思い出させる」と米ユダヤ人団体から抗議を受け、米国任天堂は二日までに、この記号の使用を取りやめることを明らかにした。
「卍」は日本製カードゲームの一部に付いているものの、米で製造された英語版にはない。しかし、昨年来ポケモンが大ヒット中の米にはオリジナルの日本語版が輸入され、高値で取引されている。「卍」はもともと功徳などを表す仏教上の記号だが、かぎ十字の裏返しの形をしていることから、有力ユダヤ人団体の名誉棄損防止組合(本部ニューヨーク)が「西洋では明白に否定的な意味を持つ」と抗議。ポケモンの米での著作権を統括する米国任天堂は今後、日本語版からも削除することを約束した。
同社は「日本のカードゲーム制作者は『卍』は肯定的な意味があると信じているが、誤解を招く恐れがあることも理解しており、不幸な事態を避けるため削除に同意した」と説明している。
まあ、それはともかくだ。
もし本当に「戦後になって、『ハーケンクロイツ』だとキリスト教の『十字架』のイメージまで悪くなるので、よってたかって異教のシンボル『スワスチカ』の用語を使い、クロスとの分断を図った」というこの本の見立て(※すいません、新聞書評からの孫引きで、原文は未読。その前提で)が正しいとしたら、実にけしからん権謀術数、ひどい策だす。
このへんって、まず事実かどうかについて、いろいろチェックや議論を待ちたいところだ。よくも悪くも、ナチスは研究者がごまんといって、ファクトチェックはネットに投じれば自然としてくれるだろう。
それにこれも「名称の自由」、すなわち広い意味での「見なしの自由」が絡んでくる。
「ヒトラーは自らのシンボルを『ハーケンクロイツ』と呼んだのだからハーケンクロイツが正しいんだ」に対し、「麻原彰晃こと松本智津夫」のように「うるさい、お前なんかスワスチカだ!」ということなのかもしれない。いや、そんなことされたら迷惑だって!!
ま、とにもかくにも、事実だったら
欧米にとっての「不都合な真実」である
『十字架との関連性を隠すため、欧米はナチのシンボルも「スワスチカ」と呼ぶようになった』という説、今後も注目と検証が必要かと思います。
そういえばゴルゴ13に「裏切りのスワスチカ」ってエピソードがあった。
http://golgo.blog.ocn.ne.jp/blog13/2007/04/611_ca1f.html
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<解説>
ドイツ外務省安全保障担当補佐官リヒャルツ・ゼルが襲われた。犯人はその場で射殺されたが、手の甲にはチベットのシンボル正鉤十字マーク「スワスチカ」の刺青が。後日再び襲われるゼルであるが、襲撃したチベット人の最期の言葉は「グルカ」であった。
ヒトラーとその側近ヘスの思想的指導者はミュンヘン大学のカルル・ハウスホーファーであったが、ハウスホーファーに影響を与えたのがチベットで修行中ゲオルギー・イワノのビッチ・グルジェフであった。チベットの正鉤十字スワスチカを元にナチスの逆鉤十字がデザインされたという。
第二次世界大戦末期、チベット人支援部隊はドイツにてソ連軍を迎え撃つが、隊長のグルカは敵前逃亡、チベット人兵1500人が全滅した。グルカはヒトラーの日記を持ち出し・・・