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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

特捜ヤメ検弁護士・田中森一著「反転」のすごい記述を、淡々と引用するエントリ。

初版が出たのはもう6年も前で、当時も読んで「すげーこと書いてるなー。あとでブログで紹介しよー」と思ってたけど慢性的にネタがありすぎる当ブログ、後日の課題としたまま放置してしまいました。
その間、田中氏は刑務所での服役を終えて出所、この前「獄中で読んだ『論語』」みたいな本を何か出してパーティを開いていたですな。世間的には初版の年に総理の座にあった安倍晋三氏が首相の座を追われ、そして再び出所の時には総理の座にある(伏線)。

そんなこんなで、この古い本を引っ張り出したら、あらためて(この記述が真実なら)すごいことが書いてあるなあと思ったので、淡々と引用しようと思いました。

反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫)

反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫)

数々の事件を手掛けた伝説の特捜エース検事は、なぜ闇社会の代理人となったのか。極貧の幼少時代から、弁護士転身後に親交を深めた安倍晋太郎ら政治家との秘話、裏社会に広がる黒い人脈、七億円のヘリコプターや豪華マンションを棟ごと購入したバブル時代の享楽まで赤裸々に告白。石橋産業事件で許永中とともに、現在服役中(※文庫発行当時)の男の衝撃的な自叙伝。
 
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
田中/森一
1943年長崎県生まれ。岡山大学在学中に司法試験合格。71年検事任官。大阪地検東京地検特捜部などで活躍し、伝説の辣腕検事として名をあげ、88年弁護士に転身。2000年石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に逮捕、起訴され、現在服役中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

それではスタート

(1) 検事はこうやって調書の”リアリティ”を作る

…たとえば、調書の中にいくつか訂正した跡を意図的につくっておく。できれば訂正箇所は取るに足らない事柄だと余計に都合がいい。たとえば前日の調書では
「朝、田中森一から挨拶されました」
と書かれた調書を、翌日
「いや、あれは佐藤の間違いでした」
と訂正する。調書は被疑者に署名させる前に検事が読んで聞かせ、供述内容に間違いが無いかどうか、を確認することになっている。裁判官がこれを読んだときどうなるか。
「朝の挨拶なんてどうでもいいのだが、そこまでチェックさせたのか」
それで、取り調べの信用性がぐんと増す。検事の言っていることは正しい、調書は正確に取られている、となるのだ。
(略)
・・・検事は現場の細かい状況をつかんでいる・・・正確な図がえきあがる。が、あまりに正確すぎるとおかしいので、ここでも少しだけ間違わせる。たとえば花瓶の位置とか、花の種類とか…そのほうがより信憑性があるからだ。
・・・贈賄事件の密談現場などを調書で再現する際の工夫もある。…「1000万円を渡しました」だけでは信憑性がない。だからその場の会話をさりげなく入れる。たとえば
「○×先生、以前からお気に入りだったあの彼女とはどうなっていますか」
「いや、あの娘には振られてしまったよ」
なんて失敗談が入っていれば、より臨場感が増す・・・
(略)
…多くの被疑者はいざ裁判になって、記憶を取り戻して言う。
「それは検事さんに教えてもらったのです」
だが、それではあとの祭りである。調書は完璧に作成されている・・・

(2)裏捜査日誌・・・(あの”かもめ”の事件?)

捜査日誌を使い分けていた有名な検事もいた。ひとつは調書にあわせ、創作した捜査日誌で、もうひとつは事実をありのままに書いたもの。これは検事自身が混乱しないよう、整理をつけておく工夫のひとつだ。それを見せてもらったこともある。
「五時間も正座させられて、ついしゃべってしまいました」
政界を揺るがせたある贈収賄事件の主犯に対する取り調べ経緯を正確に記した日誌にはそう書かれていた。だがもうひとつのほうにはもちろん「正座させられた」とか「ついうっかり」などという言葉はない。

(3)「知事が共産党になる」で捜査がうやむやに

「これ(※汚職事件)は知事までやれる事件やと思います」
(略)
「お前は、たかが5000万で大阪を共産党の天下に戻すつもりかっ」(略)
「いや、共産党がどうこうではなく事件としてやろうと・・・」
言葉を返すと、さらに声を張り上げた
「そんなことは聞いとらん。共産党に戻すかどうか、聞いてるんや」
岸知事が倒れれば、大阪府で長年続いた共産党政権に戻るという趣旨なのだろうが、それで納得がいくはずがない。
(略)
(※知事にまで不正がつながるキーマンの)出納長が突然辞任。理由はガンとのことだった。(略)
「田中君、こういう診断書が届いているんやけど、見てみ。余命いくばくもないやつを捕まえても始まらんのとちがうやろかな」・・・(略)出納長の診断書は真っ赤な偽物。私が東京に転勤になって間もなく退院し、今も元気に暮らしている。

(4)住銀と読売

住銀と検察の関係は古く、強い。大阪で検事清華検察庁を退官して弁護士になるとき、住銀と読売新聞が責任をもって何十社に及ぶ顧問先をつける。それが習いになっていた。

(5)山口組若頭の渡仏、安倍パパが助ける

「先生、フランスへ日帰りしたんは、俺だけとちゃうやろか」
射殺された山口組の元若頭、宅見勝組長が生前、よく冗談交じりにこう話していた。
(※同組長がフランスへ病気治療に行くも入国拒否されるという事件。拘置の執行停止中に異例の出国ができたことも波紋を広げた)
実は、宅見組長のフランス逃避行は、あの安倍晋太郎事務所がずいぶん助けてくれたのである。
(略)彼も肝臓疾患を抱えていたため、拘留の執行停止が認められ・・・(略)24時間マスコミの監視にあり休養どころではない。そこでいっそこのこと海外の病院に入院させてしまおう、そう思いついたのである・・・(略)そのとき頼んだのが安倍事務所だったのである。
そうで頼むなら、ヨーロッパの病院がいいと思い、言った
「安倍先生、フランスあたりで、肝臓病治療のいい病院知りませんか」
驚いたことに安倍晋太郎は細かいことは聞かず、秘書に言っておくと快く引き受けてくれた・・・そして(※駐仏)大使がみずから大物やくざが入院する病院を探してくれたのである。
(略)安倍晋太郎に頼んでみようと考えたのである。むろん、ヤクザノの渡航相談ということも話している。にもかかわらず、快くひきうけてくれた。(略)安倍晋太郎は優等生タイプで、私などからすれば面白みにかけるところがあった。しかし、さすが派閥を率いる領袖だけはある。実に大胆な一面も兼ね備えていた。
(略)
「日本のマフィアの親分がやってくる」
現地のマスコミがそう大騒ぎしはじめたのである。おまけにそれが日本にも伝わってきた・・・

まだいろいろあるんだけど、こんなところで、
どのエピソードも、出るところに出て・・・たとえば当時、新聞や雑誌だったら単独の記事となって世の中で騒がれていた話だが、まあ時期も十数年、数十年前のエピソードであり、また執筆者が受刑者だから「こんな人の発言は論評に値しない」でも済む。
それに何より、こういう話が一冊に集まってると濃すぎてひとつひとつに反応できない(笑)。ということでベストセラーになったものの、こういう記述があらためえて話題になることはなかった。
ただ、やっぱり個別に見ていくといろいろ今の社会にも関係していて・・・というか出版から時間をおいて、少し距離を置いてみると「おいおい、これいいんかいな」と思うことができる。そういうわけで本人の出所もきっかけにして、6年前のベストセラーを紹介したしだいです。