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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「キャラクターや設定(=アイデア)を丸ごと借り『筋書き』がオリジナルな作品」について

この話、本当は世情とブログ界隈で政治のごたごたが落ち着いたらゆっくり、腰をすえてやろうと思っていたのだが、ホットエントリに類似の話題が出ていたので、じゃあ連動しよう、と思って急遽書き始めた。
その連動したい話題とはこれ。

Kindleストアでは著作権法が及ばない「2次創作まがい」が一大ジャンルを築く可能性がある。
http://d.hatena.ne.jp/timagawa/20121114/1352884808

記事で語られているのは、我流でまとめると以下こんな話。

・ある世界的ベストセラーが、実は誕生したときは、有名作家の名前を借りた2次創作だった
 
・といってもの登場人物の名前だけを借りて中身は全く別物。だから名前もオリジナルにして出版でき、好評となった。
 
・2次創作というのは、ゼロから作りるより敷居が低い。自分の好きなキャラクターで書けると筆が進む。
 
・KDP(Kindle Direct publishsing)は個人が、キンドル上で自作の文章を売る仕組みがある(で、いいよね?詳しくないのでちょっと誤解あるかも)
 
・出版社という、法律遵守を強く意識せざるを得ない関門が無いので「2次創作まがい」がKindleで売られるかもしれない。
 
・ただし、「商業出版されている作品のキャラクター名や世界観を流用した」と明白ならAmazonが承認しないだろうけど・・・しかし「まがい」「もどき」は氾濫するのでは?

さて、自分が08年に書いた文章だが・・・

■キャラ、人物を借りてストーリーは全くオリジナルの「二次創作」が持つ著作権問題は?
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080510/p3

という話です。
実際に読んでもらうのがいいのですが、要約がわりに最近のtwitterを見てもらおうと思う。
もとは、とある有名漫画家がこんな提言をしたところから始まる。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1212/13/news055.html

作家が2次創作同人誌を公式に認めるための新ライセンスを、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)に提案した。・・・日本がTPPに参加し、米国が求めている知財条項が導入された場合にも、漫画用の2次創作文化を絶やさないための提案・・・

こういうアイデアは、実際上どんな意味があるかとかに関係なく感心させられ、敬意を払うが、その一方で思ったことが以下のつぶやきの通り。140字の制限で言葉を詰め込んでいるので、一部補足修正や改行。

関連話題なので、長年の疑問を誰か教えてほしい。、
【問】:漫画は登場者が具体的「絵」で描かれるからまた別だろうけど、例えば元が小説ならキャラだけ借りて、筋書きは独自のものなら元々創作するのは自由では?(平成4年ポパイ判決からの類推 です

その、ポパイ判決を引用する。
登場人物のいわゆる…キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念…それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができない
/ “判例:漫画キャラクターの著作物性” http://htn.to/2zwYa3

このあと、実際の創作家であり、広告映像などにも携わる藤岡真氏とやり取りできた。以下は原文どおりで。

藤岡真 ‏@shinfujioka
@gryphonjapan 不正競争防止法の混同惹起とか、著作者人格権に抵触するのでは。

常識的感覚では「元ネタの人に許可権とか、何かの権利があるだろ」と思うのですが平成4年のこの判決http://park2.wakwak.com/~willway-legal/kls-c.case.006.html の「キャラクター」論をこれまた素人感覚で素直に読むと『あれ?自由だよって言ってる気がするなあ』と。何でしょうね? @shinfujioka
 
先ほどのはてブツイートに関連しているので、08年に書いた文章だけどブクマを付け直します。コメント欄では「合法です」と断言されてるんだよなあ。・・・? / “キャラ、人物を借りてストーリーは全くオリジナルの「二次創作」が持つ著作権問題は…” http://htn.to/3SsPB3

藤岡真 ‏@shinfujioka
@gryphonjapan 著作権著作権者の死後五〇年でパブリックドメインになります。商標権を取得していると、二五年ごとに更改されるので、半永久的に権利があります。混同惹起というのは「涼宮ハルヒ」のキャラで小説を書いた場合「谷川流」の作品と間違えるということで規制されます。

ありがとうございます。ただ、だとするとまず商標登録されていないキャラや作品なら、さっき書いた話が適用されるのか? と。或いは「二次創作XXシリーズ」とタイトルとかに明確に記記した場合は・・・?  @shinfujioka

藤岡真 ‏@shinfujioka
@gryphonjapan 「二次創作XXシリーズ」は意味がありません。「分かっててやってるんだ」というだけのことですから。五〇年過ぎたら自由です。ポパイも営利目的じゃなくて、個人のblogなどに貼るなら問題ありません。

50年経過後は仰る通りですね。/それで当方が現在わからないのは『まだ50年過ぎてないけど、他人の創作した「キャラクター」「世界観」は使うものの筋書き・物語自体は自分のオリジナル…』の場合はどうか?と。(絵の場合はややこしいので、漫画でなく小説とします)@shinfujioka

藤岡真 ‏@shinfujioka
@gryphonjapan イデアには著作権はないので基本的にはセーフです。しかし、ネット社会では「あれってパクリじゃん」と書かれた時点でおしまいということもあります。ミステリの『鉄鼠の檻』『聖アウスラ修道院の惨劇』は、『薔薇の名前』と同じ構造でしたが無問題。

ああ、それに関する類似例、、以前ブログにかかれてましたね。@shinfujioka
  
一例ではH・G・ウエルズは1946年没ですが、ヨコジュン先生が世界観を「宇宙戦争」に沿って描き、火星人という「キャラ」も出る傑作「火星人類の逆襲」は80年代の発表ですよね。

火星人類の逆襲 (新潮文庫)

火星人類の逆襲 (新潮文庫)

ウエルズ遺族が許可したのかもですが、或いはこれに許可はそもそも不要かも?と。  @shinfujioka

藤岡真 ‏@shinfujioka
@gryphonjapan ヨコジュンはそこまでの意識はないでしょう。アイデアだから問題にならないというか、ウエルズの遺族の目に止まらなかったというレベルの話でしょうね。宇宙人の侵略物はその間大量に発表されたので、ことさらどのアイデアという話でもないでしょうし。

無数の侵略ものから、ご自身の好きな明治痛快人を絡めるために「あのウエルズの火星人の、別の場所での事件として描く!」と考えた経緯は非常にわかるし、だからこそ楽しめるのですけどね。ぎりぎりの法律論ではセーフ。だけど周囲の目があるよ、はいいバランスなのかも。 @shinfujioka

12月15日 藤岡真 ‏@shinfujioka
@gryphonjapan ごく最近まで、知的財産権に関しては作家も出版社も無頓着でした。「パーマン」の「スーパーマン」とか。「ライオンキング」が「ジャングル大帝」のパクリと言われますが、そもそも、元ネタは「バンビ」ですよね。


さて、2008年に最初に書いた記事を実際に見てもらうとわかるのだが、コメント欄にて、記事を読んでくれたとある人から「それは合法なんです」と断言をいただいている。


そして今回、小説の創作や映像広告を実際にやっている方からも「アイデア著作権はない、基本的にはセーフ」と言っていただいた。


もちろん断り無く、他人が苦労して考えたヤン・ウェンリーなり天下一大五郎なりのキャラクターや「銀河帝国vs自由惑星同盟」の世界を借りて、筋書きだけは一応自分の頭で考えた小説や漫画を書いて(※漫画→漫画だと否応なく「デザイン」を模写することになるから、ちょっと別物と考えてください。)、それで例えば商業的に成功したりしたら「ブーイング」を浴びること、文句を言われることは予想がつく。
 
でもまあ、それはそれとして「違法」なんですか?
という、話です。
とりあえず数回、この問題を提示して、「(法律的には)問題ないでしょう」という反応のほうが多かった。うーん・・・

皆さんももう一度、この判決を読んでみて。15年前に出たばかりの判決だ。
どこかに、素人としての誤解があるのかなあ・・・

http://park2.wakwak.com/~willway-legal/kls-c.case.064.html

 著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。

書きながらぼんやりと感じてきたけど、ここかな?

基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴

なんかも保護されるっぽい・・・のかな?ああ、この判決が出た裁判というのは、
「ポパイの初登場はだいぶ古いので、そこから起算すると著作権が消滅している」
「だけどポパイはその後描き継がれた。その描き継いだ作品から起算して”新ポパイ”の権利があると主張し、それが侵害されたと訴えた」

という裁判みたいだな。
だから逆に、特徴や設定、主人公の性格なども保護される=一定期間が過ぎたら権利が消滅する、ということになるのか。その後、いかに新作が描き継がれようとも。
正直、ここらへんなんか否定論に見えてややっこしいわ。
 ↓

キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができない

でもまあ、この文章を書きながら自分的にはなんとなく納得し、当初の予想と違う着地点になった。

追記

最初に紹介したリンク先で、この記事を読んで頂き、新たな補足の文章がUPされた。

■「盗作」という造られた罪悪観念が障壁になっていた、いままでは。
http://d.hatena.ne.jp/timagawa/20121220/1356012056