INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

面白そうな新書2題。「商店街の歴史」と「海賊の歴史」

「商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道」 (光文社新書)

ブログ「琥珀色の戯言」より。
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20120622#p1

商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)

商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)

孫引きします

・・・商店街はまったく伝統的な存在ではない。現存する多くの商店街は20世紀になって人為的に創られたものだからである。

 20世紀前半に生じた最大の社会変動は、農民層の減少と都市人口の急増だった。都市流入者の多くは、雇用層ではなく、「生業」と称される零細自営業に移り変わった。そのなかで多かったのが、資本をそれほど必要としない小売業であった。

 当時の零細小売商は、貧相な店舗、屋台での商い、あるいは店舗がなく行商をする者が多かった。そのため、当時の日本社会は、零細規模の商売を営む人々を増やさないこと、そして、零細小売の人々を貧困化させないことが課題となった。こうした課題を克服するなかで生まれたのが「商店街」という理念であった

 要するに、20世紀初頭の都市化と流動化に対して、「よき地域」をつくりあげるための方策として、商店街は発明されたのである

神前結婚式だの、「錦の御旗」だの、処女崇拝など「日本の伝統?実は幕末〜明治に生まれたものなのだよ!」「な、なんだってー!」オチの話は猪瀬直樹呉智英の本で散々読んだパターンだが、「百貨店より商店街のほうが後に出来た」というのはさすがに驚いたデスよ。

で、自分のちょっと気になることは、つれづれに雑誌やブログを眺めていたら、金子勝中島岳志という、なかなか有名な知識人2人が「大店法改正が大失敗だった」「やはり大店の出店は規制し、商店街を保護するべきだった」と主張しているのですよ、最近。
しかしあの二人、けっこう思いつきでもモノを言うほうじゃないですか(笑)。
どれだけの根拠やエビデンスがあって、大店法による大型店規制はそのまま保つべきだった、といっているのか、と。

大型店のメリット、デメリットというのは結構みんな身にしみて判っていると思うの。80〜90年代ごろ、「近くにチェーンの大型店が進出してきた」を経験した人は多いだろうしね。
向こう三軒両隣、人情とおしゃべりのおかいもの。「おつかい?えらいね、このパンはサービス」も商店街ではあったろうけど「ハヤカワ文庫?うちでは置いてないなあ・・・まあ注文すれば、1、2カ月で…」とか、出入りの酒屋を基点に広がっていく、地域の「XX家の離婚危機」の現在進行形ドラマとか(笑)、夜7時には普通に閉店してるとか。
そんなデメリットを、大型店の品ぞろえとサービスと開店時間の長さを法律的に規制して保つのが良かったのかどうか?


こういう店が「人情あふれる古き良き店」か「馴れ合いと惰性で良質のサービスを放棄した店」なのかも議論の余地はあろう(笑)

それでも町は廻っている 3 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 3 (ヤングキングコミックス)

この新書に、ヒントがあるかもしれない。諸外国の例とも比較できていれればなおいいのだが。

「世界史をつくった海賊」竹田いさみ

ブログ「Kousyoublog」より
http://kousyoublog.jp/?eid=2657

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)

パイレーツ、バッカニア、ヴァイキング、コルセア、海乞食、倭寇、など様々な呼び名で呼ばれて歴史上に名を知られる様々な海賊たち、特に英国の黎明期に活躍した海賊たちに焦点を当てて政府と海賊とがともに協力して海賊国家を作り上げ、後の大英帝国の繁栄の礎を築く姿を描き出した一冊。

一六世紀のイングランド王国は、後の大英帝国の影も形も見えぬ、羊毛や毛織物を細々と輸出してわずかばかりの外貨を稼ぐだけの弱小国だった。軍事的にも百年戦争に敗北し、ヘンリ八世がイングランド国教会を独自に設立したことでカトリック教会とも対立し、欧州への橋頭堡であるカレーをフランスに奪われ、いつ大陸からスペイン・フランスがなだれ込んできてもおかしくない、さらに隣国スコットランド女王メアリが虎視眈々とイングランド王位を狙う。資源なし、財政破綻、軍事力弱小、外交的孤立・・・エリザベス女王即位当時のイングランドは滅亡寸前と言っていい。

そんな危機的状況にあってエリザベス女王が活路を見出したのが「海賊」であった。海上で略奪行為を行う彼らを使って新大陸から高価な品々を運ぶスペイン船やポルトガル船を次々と襲撃し、その略奪した金品がイングランドの財政を支え・・・

現代になって再び、海賊たちが憧憬のまなざしで見られるようになったのは、グローバリゼーションの進展に伴う社会の流動化と主権国家の地位低下という社会情勢の変化が大きく影響しているのではないか。既存の枠組みが揺らぎ、資本が高速に移動して、国境は徐々に無意味化していく。強力な権力に抗う反体制のヒーローがもてはやされた時代から、弱体化する秩序や権力から距離を置いて独立独歩、自分の力で世界を切り拓く・・・

自分はいまいち「制海権」というのがイメージできない。海はあんなに広いのに、数隻〜数十隻の船がいるだけでそんなにそこを支配できるのかなあ?と。でも「ヴィンランド・サガ」で主人公トルフィンが成長して始まった、第二部スタートの時は海賊の怖さを追体験できたな。
 
海の向こうから見慣れない船影が・・・なんだろう・・・あ、ありゃあ海賊じゃないか!この前西の村を破壊した!! 上陸したのは斧や剣を手に手にとり、完全武装したいくさ慣れした無法者たち。しかもそのmるあを長期支配するつもりも、インフラを活用するつもりもないから人からモノからすべて徹底的に略奪、破壊。
主人公トルフィンは斥候役で、しかも村人に親切にされたのだが、「逃げろ!」ぐらいの忠告しか出来ず、その村の破壊に手を貸す・・・

ああいうものが跋扈すれば、そりゃ村も武装自衛するだろうし、もっと大きな武装勢力たる「国王」や「領主」を頼むようにもなるだろうね。