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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

超朗報!”10年に一度の本”こと「銃・病原菌・鉄」が待望の文庫化

ついに、ついに・・・であります。

「10年に一度の本」というのは根拠無しのハッタリで言ってるのではなく、この前朝日新聞が「ゼロ年代の50冊」というのを選ぶ企画をやり、そこで1位に選ばれたのですよ

アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞朝日新聞ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。


http://book.asahi.com/zeronen/TKY201004070204.html

■人類史の根源に迫る大著

 ゼロ年代から次の新しい10年に入ったいま、この10年でどんな本が出ていたのか改めて記録しておきたいと、この間に出た本から50冊を識者アンケートで選びました。1位はジャレド・ダイアモンド著『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(草思社、倉骨彰訳、上下各1995円)です。

 1972年、進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏は、研究のために訪れたニューギニアで、現地の親しい政治家に聞かれた。「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」

 熱帯の海岸で投げかけられたこの問いを、著者は人類史的に根源的な疑問として受け止めた。なぜ南北アメリカの先住民やアフリカ大陸の人々らがヨーロッパ系やアジア系の人々を征服するというような、我々の知る歴史とは「逆」のことが起きなかったのだろう。一体なぜ、世界文明のありようは我々の知る結果と異なる方向に進まなかったのだろう――。

 そして25年後。著者は生物学、地理学、考古学、歴史学言語学、人類学など超人的なまでに学際的な知見を投入、それらを壮大な時間軸の中に編み直すことで「答え」を導き出そうと試みた。それが本著である。

 97年にアメリカで刊行され、98年度のピュリツァー賞を受賞、世界的な話題の書となった・・・・・・

著者インタビュー
http://book.asahi.com/clip/TKY201011010253.html


僕にとっては、実は基本コンセプトは新知見ではなかった。というのが司馬遼太郎が、「鉄」ということに着目して日中韓を比較する論を展開していて「鉄がたくさん有るといろんな農具、工具が開発されて創意工夫、イノベーションへのモチベーションが生まれる。ただ、前近代の鉄生産は薪が必要だ。台風が毎年雨をもたらす島国日本と、中国・朝鮮では森林の回復力が違い、鉄の普及が変わってくる。鉄がないからこそ、現状維持といにしえをとうとび、好奇心をさげすむ儒教思想によって社会が停滞した。日本は鉄があるからこそ、創意工夫と好奇心の風潮を維持できた」と・・・
当事者の中国や朝鮮から見たら異論があるかもだろうが、『鉄の生産』『その鉄のための森林を維持できる気象条件』が文明の差に繋がるという視点は、かつて無条件に朝鮮差別の風潮があったことへのカウンターパンチという部分もあるんでしょうか。
逆に、日中韓知識人の鼎談では「古代に、その鉄を作るための森や砂鉄を探して、半島からわたってきた集団が日本を開拓したのでは」と司馬氏は言い出し、韓国の知識人の機嫌がたいへん良くなったと記憶している。同じことをうまく表現、使い分けてるな彼(笑)


まあ、ともかく、そんな視点があったので「銃・病原菌・鉄」の作者の

 「たまたま欧州に根付いた人々だけが、環境に恵まれて定住農業がうまくいき、家畜がもたらす伝染病に免疫を持ち、鉄と銃をほんの少し早く手にできたため」。白人は環境面で運がよかったにすぎないという見解である。

という、環境論は面白かったのであります。

あ、あとゲーム「シビライゼーション」ファンも、間違いなくこの本には興味をひかれると思います

シヴィライゼーション V 価格改定版

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今はこれが最新版か。

ほかに、読んで欲しい読者層

藤子・F・不二雄の、結果的には晩年の作品になったといえるが「T・Pぼん」の愛読者にはぜひ読んで欲しい。タイムパトロールというお馴染みの設定枠組みながら「歴史を大きく改変したらいけないので、ごく自然に見せかけながら昔の人を助ける」というちょっとしたルールを定め、面白い作品になっている。また想定読者の年齢層がやや高めなので、ドラえもんなどよりもっと歴史の細部を、リアルに描写しているほか、それへの「説明」部分も高度になっていて面白かった。

この作品では、何度か原始社会や古代社会が舞台になっているエピソードもあり、「文字」「権力者」「人々の移住」などを描いている。中には、ヒッタイト王国を舞台にそのままずばり「鉄」がテーマのエピソードもあるのだ。

ぜひとも、そんな興味の下に読んでみてほしい。


※【註】この作品も何度か単行本化・文庫化されましたが、なぜか未収録作品などがあります。たぶんこの「全集」なら全話収録だと思いますが・・・
かつての作品の未収録作品に関してはこちらを参照
http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20081112