同時テロ犠牲者にも盗聴?=英大衆紙、米議員が調査要求
【ワシントン時事】盗聴スキャンダルで廃刊となった英日曜大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドが、2001年9月に起きた米同時テロの犠牲者が携帯電話で残した音声メッセージの盗聴を図った疑惑が浮上、米上下両院議員が相次いで司法省などに調査を求める事態となっている。英社会を揺るがしている盗聴スキャンダルが米国にも波及した形だ。
英紙デーリー・メール(電子版)は11日、ニューヨークの元警察当局者の話として、ニューズ・オブ・ザ・ワールドの記者がこの当局者に金銭を与える見返りとして、同時テロで犠牲になった英国人の携帯電話番号などを聞き出し、音声メッセージを入手しようとしていたと報じた。
これに対し、米下院国土安全保障委員会のピーター・キング委員長(共和)は13日、モラー連邦捜査局(FBI)長官に書簡を送り、同紙の親会社である米ニューズ・コーポレーションに対する捜査を開始するよう要求。報道が事実なら違法行為に当たるとして、「法に基づき最も厳しい制裁を加えるべきだ」と主張した。(2011/07/14-14:12)
盗聴やら警察官買収によって情報を得て、それを記事にする。
現在は大体、どこのメディアも”禁じ手”とする手法だ。
で、一番似ているのは・・・「ウィキリークス」だよ(笑)。
片方は無政府主義的な自由主義思想、片方はどちらかといえば保守的なオーナー(といってもこの男も国の枠にとらわれないという点で”無政府主義”的だが)が率いているという点では違うが
「秘密の情報をつかんで、それを公にする」
「その時の手段が非合法・反社会的でもお構いなし」
という点では、一番重要な部分があまりかわんねーのよ。
これが対権力ならいいが権力追従ならけしからん、とか、そういう岡留安則チックな分類で解決できるもんでもない。アフリカの独裁政権に対して外務省が行っている工作に市民団体が協力している活動を警察が監視した記録・・・とかは何が反権力、やらだしな。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080412/p6
で紹介したが
- 作者:達也, 森
- 発売日: 2006/10/30
- メディア: 文庫
森達也氏は、下山事件の取材の際(最終的に映像ではなく本になった)、矢板市の市教委に「郷土史のドキュメンタリーを作りたい」と真っ赤なうそを並べ、同市が管理する、下山事件に関係したとの説がある人の生家を撮影機材を持ち込み、素材としてカメラに収めた。(略)…たしか「騙すのは相手に申し訳ないが、騙した自分だって傷ついている」みたいな感じで正当化?しているくだりがあり「おいおい、それでいいのか」とちょっと心でツッコんだ覚えあり。
で、結局そういう糸をたぐっていくとお馴染み「ひそかに情を通じ」の西山記者にもつながるわけ。
- 作者:澤地 久枝
- 発売日: 2006/08/17
- メディア: 文庫
- 作者:西山 太吉
- 発売日: 2007/05/22
- メディア: 新書
- 作者:日垣 隆
- 発売日: 2009/07/28
- メディア: 新書
戦争でたとえると分かりやすいかな。
戦争では一応、毒ガスとか生物兵器とか、民間人のふりをして攻撃したりとかが戦時国際法で禁止されている。
ただ、それは戦争の正邪とは別物。
長年の植民地支配から独立を願い蜂起した人達、長年の独裁者を倒すために決起した反政府交戦団体、侵略軍に立ち向かう防衛軍…のほうが「俺たちにどう考えたって正義はあるだろう!!手段を問わず攻撃して何が悪いんだ!!」ってことで、上記のような国際法的には非合法の手段で攻撃するかもしれない。
逆にまったく大義名分の無い侵略戦争に臨んだ軍や、独裁者の命を受けた鎮圧軍のほうが、上記のレベルでの非合法手段は取らず、逆にそういう攻撃の被害者であるかもしれない。
しかし、そうであっても基本の枠組みは変わらないですよね。
「彼らは悪の侵略軍・独裁者軍か?/正義の防衛軍・革命軍か?」
という話と
「彼らは毒ガスや民間人偽装のような非合法の軍事行動をしてるか/してないか?」
は、また別の枠組みの話なんすわ。
ニューズ社やウィキリークスの、盗聴やハッキングによる内部機密資料の獲得、西山記者の「ひそかに情を通じ」ての沖縄密約取材、森達也の「郷土史のドキュメント作成」と偽ってのカメラ持ち込み、草薙厚子「僕はパパを殺すことに決めた」での、調書の極秘撮影・・・
いろいろ、あらあね。
追記。今はてブに書きながら思い付いた
ハードボイルドの刑事なんかを例にしても良かったかな。
「あいつが犯人だった。証拠の銃も見つかったぞ」
「貴様、共犯者をリンチして取った証拠じゃ公判は無理だ!」
「俺が奴を犯人だと分かればそれでいい」
みたいな。