沖縄地上戦 国内唯一→国内最大 政府が閣議決定 2010年5月22日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-162452-storytopic-3.html
【東京】政府は21日、「沖縄戦」が先の大戦で国内「唯一の地上戦」とする表現に関し、「沖縄本島及びその周辺のみでそのような地上戦が行われたという認識は必ずしも正確ではない」とする答弁書を閣議決定した。その上で「沖縄戦」の表現を「国内最大の地上戦」とした。糸数慶子氏(無所属)への答弁。
県内の沖縄戦研究者は「なぜ今閣議決定か」と疑問を示し、米軍普天間飛行場の移設問題が大きな政治問題となる中「再び戦争に巻き込まれたくない」などと県民が県外・国外移設の理由に挙げる沖縄戦を「わい小化する意図」を指摘する声が挙がった。
糸数氏は5月10日の衆院沖縄北方特別委員会で、前原誠司沖縄担当相が山岡達丸氏(民主)の「日本国内では樺太などでも地上戦があった」との指摘を受け、「沖縄戦が国内唯一の地上戦であるという表現は必ずしも正確ではない」、「訂正した方がいい」と答弁したことを指摘。発言の真意をただした。
前原氏の発言について、政府は答弁書で「先の大戦でわが国の領土での地上戦は複数の地域で行われている」と説明。「沖縄戦」については「国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲となり、筆舌に尽くしがたい苦難を経験された」とした。
樺太ではソ連軍による避難船への攻撃や陸上での無差別攻撃で、計約3700人の民間人が死亡したとされる。
私の検索方法にミスがあるのか、残念ながら
「2010年5月10日、衆院沖縄北方特別委員会での糸数慶子議員の質問」はここでは発見できなかった。
http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_logout.cgi?SESSION=20789
これに関して、昨年の琉球新報は社説でこう書いている。
( http://d.hatena.ne.jp/makyabery/20100623/1277260315から孫引きする)
(略)・・・政府はことし5月21日、沖縄戦の定義について、国内「唯一の地上戦」としていたこれまでの表現を「国内最大の地上戦」と言い換えた。
樺太でソ連軍による避難船への攻撃や陸上での無差別攻撃により、計約3700人の民間人が死亡したとされるからだ。■「唯一の地上戦」
日本軍は住民に対し、米軍への投降を許さず、軍民が一体となって沖縄戦に突入した。
住民は米軍の攻撃で犠牲になっただけでなく、自国軍によるスパイ視、壕追い出し、幼児の絞殺、強制的な死に追い込まれた。沖縄戦研究者は、民間人の犠牲者数は軍人を上回ると指摘している。
沖縄戦とは、日本の領土で自国軍によって多数の住民が死に追いやられた唯一の地上戦と表現しても過言ではないのではないか。
「国内最大の地上戦」という定義では、無残で残酷な実相が伝わらないのではないかと危惧(きぐ)する。
沖縄戦から導き出された住民側の教訓として、私たちは「軍隊は住民を守らない」「命どぅ宝(命こそ宝)」と繰り返し主張してきた。
まあ私見を申せば、「事実」としては厳密にいえば樺太はどうなの、硫黄島はどうなの、占守島はどうなの、ということになれば「唯一」とは言わないほうが正確であることは間違いないでしょう。
はてなダイアリーには、政府が答弁を変更することに先立つ2年前、2008年に「唯一の地上戦」というはてなキーワードが作られ、「誤用表現」としている。
わたしが作ったんだけどね。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%A3%B0%EC%A4%CE%C3%CF%BE%E5%C0%EF
だが本日、政府の表現変化の経緯と、琉球新報の主張も追加した。
さらに私見を申せば、琉球新報的にまだ「唯一の」というなら、それはまあ「四捨五入して」というべきものなのだろう。占守島戦争は勃発の日付を考えれば、太平洋戦争とは別の戦争「ソビエト・日本戦争」とでも定義したほうがいいかもしれないわけだし、南樺太は結果的にサンフランシスコ平和条約で放棄させられたことで、当時日本領土であったことは疑いない事実としても、「国内」の定義ではない、ってことかもしれない。
まあ、そういうことを”四捨五入”して、敢えて自分たちは沖縄戦を「国内唯一の地上戦」と呼ぶ、というなら、上の本の再引用の通りだ。
「・・・だれもあなたに「中国をやめて支那を使え」と言いはしない。「支那」に不快を感じ「中国」に愛着をおぼえるあなたの選択をわたしは尊重する。それなのになぜあなたは、「支那」に愛着を持ち、もしくはこの語の使用に合理的理由があると考える者に対して「やめろ。中国と言え」と要求するのか。」
(講談社エッセイスト賞受賞作「本が好き、悪口言うのはもっと好き」文庫版P165)
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だから琉球新報が今後もこの表現を使うとしても、それは彼らの考えなら是としたい(というか、誤用表現だなあと思ってもやめさせる権限はもともと無い)。