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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

自動車産業と出版産業は、新技術でいったん「リセット」されるか。日本はその時・・・

トヨタ車の、それも「プリウス」のリコールという話は、まわりにプリウスも無いためあまり実感がない。私もトヨタ車だが、古すぎてブレーキのプログラミング制御がどうこうという話ではないしさ。

ただ、この騒動でのTOYOTAのイメージダウンとあわせて、この前紹介したばかりの電気自動車のエントリーを見ると・・・
http://blog.satorum.jp/201002/article_3.html

http://blog.satorum.jp/201002/article_2.html
■電気自動車にシフトすると部品数がエンジンの1/3で済んでしまって、日本の製造業壊滅?
「自動車の部品数は、2〜3万。それが数千ですね。少なくとも、自動車産業のピラミッドは崩れます・・。 」

「電気自動車は、極端に言えば、車体にモーターと電池を積めば、できあがりなんですよね。アメリカでは小規模電気自動車メーカー(というか、組み立て=アッセンブラー)が乱立しはじめていますね。」

「モーターをタイヤの中に組み込む、イン・ホイール・モーターが、これからの電気自動車技術なので・・。」
「慶応の清水教授開発の電気自動車は、タイヤ8つ!!で、時速300キロ超。インホイールモーターが一番高効率なのです。」


いや、すごいけど・・・今のところ押しも押されぬガソリン車での技術の蓄積が、
「はい、電気自動車技術になったのでブレイク、リセット。つぎは一から電気自動車お願いしマース」ですよ。
島田裕二レフェリーのブレイクがどうこうどころじゃありませんよ(笑)


いや、イチからってことは絶対ありえなくて、4割ぐらいはたぶんガソリン車の技術が役に立つだろうし、実際に開発をしているのが自動車メーカーなんだから。しかし「下克上の世の中、来たる!!」で、もう10年後、街中を電気自動車が普通に走るとき、それがメイドイン・コリアだったりメイドイン・チャイナだったり・・・あるいはメイドイン・NZやメイドイン・トルコ、メイドン・ブラジルだったり、そういう意外や意外なところが、EV車の生産地だったり、画期的なアイデアと特許をもとに知的財産で稼いでいるかもしれない。

何しろ松原氏いわく「部品数が2〜3万から数千になる」「極端な話、モーターを車体に積んで組み立てれば完成」なのだ。
部品がたくさんあればあるほど、その部品をひとつひとつ丁寧に仕上げて品質をよくする、匠のわざと労働力の良質さが求められる。たいへんな半面、それは日本の世界の中での強みだった。
だが部品が簡単で、組み立ても簡単になればなるほど・・・・例をひとつ挙げればいいか、「パソコン」と同様に、日本での生産は太刀打ちできなくなるかもしれないですね。
そして、三度三度のご飯が食べられる先進国・日本は過去の姿になるかも・・・


これこそ、格闘技観戦なみに外野から苦労せず応援するしかないのだけど、日本の技術陣の皆様、どうか奮励努力を。
これこそ本当の意味で「絶対に負けられない戦いが、そこにある。」のかもしれない。

出版業界の話もしかり。アマゾンの「キンドル」が本格的な日本語書籍のラインナップをそろえ、たとえば有名作家の漫画などまで入ってくるのは1年先か、2年あとか・・・それはわからんけど(佐藤秀峰が先鞭をつけるか?)、
なんだ
神田、神保町、
という前に・・・圧倒的に「便利」で、「低コスト」のものがはやらないわけが無いのである。取って代わらないわけが無いのである。
出版業界、書店業界は戦々恐々としているが、案外それ以上に印刷・製本の業界こそが最初にダメージを受けるかも・・・・。

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キンドルの衝撃

キンドルの衝撃


実は今回発売された別冊宝島「プロレス真実一路」、カンバンの原田久仁信劇画はプロレスではなく、昨年だっけ?の「ナイガイスポーツ倒産」劇を描いている。
ああ、いまコマの引用ができないんだけど、古い時代の「伝説の整理記者」である永島勝司(ゴマシオ)が、取材もウラ取りも必要なしで(笑)、「朝青龍、ついに総合格闘技転向!」などとハッタリ見出しを鉛筆でさらさらと書いていく。現場の若手記者が、「あの人、一生パソコン使わないつもりか?」とあきれるところを含め、古きよき時代の仕掛けで時代にあらがっていくところが見ものだ。


しかし、それもついに力尽き、おなじみの怪しげな債権者たちがうごめくようになり、遂にある日突然「今日でわが社は倒産です。もう本日の号は出ません」と宣告される。ゴマシオは「何十年もつづいた新聞だぞ!せめて最後の号を出して、読者にアイサツさせてくれ」的なことを必死に頼み込むが、その紙代や印刷代をも同社は払えなかった。

・・・ほろ苦い物語だが、これは「同社」の話だけではない。
これから10年間、おそらくは何度も繰り返される話の先駆けであるように思われる。
だからこそ、今この物語に接して、心の準備をしておくことが読者も含め必要かもしれない。せめて後につづくものは、最終号を出せる経費を準備しておきたいものだ。

プロレス 真実一路 (別冊宝島 1678 ノンフィクション)

プロレス 真実一路 (別冊宝島 1678 ノンフィクション)

そして今こそこれを読め!!「おじいさんのランプ」

こういう文学があることは、産業構造の激変を目前にして、ひとつの救いかもしれない。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/635_14853.html

・・・・ランプは、その頃としてはまだ珍らしいガラスでできていた。煤けたり、破れたりしやすい紙でできている行燈より、これだけでも巳之助にはいいもののように思われた。
 このランプのために、大野の町ぜんたいが竜宮城かなにかのように明かるく感じられた。もう巳之助は自分の村へ帰りたくないとさえ思った。人間は誰でも明かるいところから暗いところに帰るのを好まないのである。(略) 巳之助は今までなんども、「文明開化で世の中がひらけた」ということをきいていたが、今はじめて文明開化ということがわかったような気がした。

・・・巳之助はお金も儲かったが、それとは別に、このしょうばいがたのしかった。今まで暗かった家に、だんだん巳之助の売ったランプがともってゆくのである。暗い家に、巳之助は文明開化の明かるい火を一つ一つともしてゆくような気がした。

・・・「何だやい、変なものを吊したじゃねえか。あのランプはどこか悪くでもなったかやい」
と巳之助はきいた。すると甘酒屋が、
「ありゃ、こんどひけた電気というもんだ。火事の心配がのうて、明かるうて、マッチはいらぬし、なかなか便利なもんだ」

巳之助は、今になって、自分のまちがっていたことがはっきりとわかった。――ランプはもはや古い道具になったのである。電燈という新しいいっそう便利な道具の世の中になったのである。それだけ世の中がひらけたのである。文明開化が進んだのである。巳之助もまた日本のお国の人間なら、日本がこれだけ進んだことを喜んでいいはずなのだ。

「わしの、しょうばいのやめ方はこれだ」
 それから巳之助は池のこちら側の往還(おうかん)に来た。まだランプは、向こう側の岸の上にみなともっていた。五十いくつがみなともっていた。そして水の上にも五十いくつの、さかさまのランプがともっていた。立ちどまって巳之助は、そこでもながく見つめていた。
 ランプ、ランプ、なつかしいランプ。
 やがて巳之助はかがんで、足もとから石ころを一つ拾った。そして、いちばん大きくともっているランプに狙(ねら)いをさだめて、力いっぱい投げた。パリーンと音がして、大きい火がひとつ消えた。
「お前たちの時世(じせい)はすぎた。世の中は進んだ」
と巳之助はいった。そしてまた一つ石ころを拾った。

おじいさんのランプ (新美南吉童話傑作選)

おじいさんのランプ (新美南吉童話傑作選)

半年以内に「キンドル」について語る新書が5種類は出るでしょうね。

キンドルの衝撃

キンドルの衝撃

を紹介したが(某大書店ではすでに平積み)、これは新書向きのテーマでしょう。ツイッターtwitter)を論じた新書も3種類かそこら出て、いいセールスを記録したようなので、もうすでに執筆依頼はどこもやっているだろうか。
いや・・・それこそ自分の首が絞まるという無意識もあって、電線導入直後の「おじいさん」のように躊躇しているかな?

参考リンク

■【活字利権2010】日本が再販に固執する間に、電子書籍はどんどん進化していく
http://blog.livedoor.jp/saihan/archives/51694055.html
電子書籍の流通支配に出版社はいかに立ち向かうべきか
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/mediabiz.aspx?n=MMIT12000008022010

さらにおまけで紹介したい。文庫「漫画版 世界の歴史」6巻(集英社文庫)より

まんが「世界の歴史」というのも各社が各時代で出しているのだが、数年前、偶然図書館のこどもコーナーで目にした、2002年ごろに集英社から出された「世界の歴史」シリーズが、驚くほど質が高かった。
その質の高さ・・・・というか、無駄なところでがんばりすぎている(爆笑)点についてはおいおい論じたいと思っているが、ここのイギリス「産業革命」の項も、古き伝統にこだわる上流階級と、強引な新興資本家勢力と、理想化肌のリベラル系資本家が愛憎うずまく関係を持つという、なんともムダながんばり方のドラマを展開させていてトテモ面白い(笑)。

ちょっとここの、産業革命のところがテーマに即している気がするので紹介

 


絵柄も含めて(笑)「無駄な頑張り」感が伝わるだろうか。
このシリーズは総合的に、あるシーズンにあわせて再度論じてみたい。

漫画版 世界の歴史 6 フランス革命と産業革命 (集英社文庫)

漫画版 世界の歴史 6 フランス革命と産業革命 (集英社文庫)

ちなみに、http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20081130#p3で紹介したこの絵柄も、同じシリーズだ(作画家は複数)。