数年前…2015年か、正続の「漫言翁 福沢諭吉」という本を紹介したことがあった。
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別に「さよなら1万円札」というわけでもないけど(笑)、再読する機会があってな。
そこからちょっと引用紹介。
「下関戦争」というのご存知ですかね。たしかこれも数年前…西郷どん、真田丸の前だったから3年前かな。
テロサーの姫こと「花燃ゆ」というNHK大河ドラマでそのシーンがあったとか
この戦争は、さすが長州だけあって「言うだけ番長」(このネタわかるよね?)だったかの藩はぼろ負け…その後の戦闘民族サツマ人がイギリスと闘った「薩英戦争」とは違ってぼろ負け(薩英戦争については、また別個に論じねばならんだろう)。
ま、それはともかく…実はタイクーンの幕府から明治のミカド政府になり、文明開化も進んだ明治16年…1883年(かな?)アメリカは、この下関戦争で得られた賠償を日本に返還してくれる、という一件があったのだった。
今見たら、このページが大変くわしい。
下関賠償金、返還、下関戦争、賠償基金、スワード、スーワード、Japan-US Encounters 日米交流
でまあ、憲法発布と国会開設を控えた日本ではやっぱり返してくれたってことで、米国への好意的ムードが一気に高まり、ならばこの返還されたお金を国際親善、日本と諸外国の友好のために使おう、なんて意見も出ていたらしい。
その時に、早すぎた風刺コラムニスト、福沢諭吉がかいた文章は…
以下は「続」のほうの「条約改正騒動」と題する章からの引用。
一筆啓上仕り候.
下関の賠償金を今回米国政府において返還相成り候につきては、 小生も日本3600万人中の一人として米国人民のため一言恐悦申し述べたく候.
かくてこそ世界第一の共和国民、我々日本人の親友なりとて世界万国の人に吹聴致し候ても愧 かしらぬことと存じ候。しかし先日、貴社時事新報にも論述相成り候通り、今回この世界第一の米国人が大に前年の非を悟りて 取るべからざるの金子を返却したるは至極神妙なることにして 多諸国民が不正金を呑み込みて吐かざる者とくらぶれば論も表情もなきことながら米国人はすでにその日を悟りたり さとらば即ちズンと悟りて全く非の字なきやういたしたしと申すは、 この元金78万円を火の国に利用して、20年の間に生み出したる利子は100万円にも相成りおおるよし。母金が取るべからざるものならば、子金もまた取るべからざるものならん。
隣の孕み牛を無理に生け捕り、我が家に安産せしめて、母牛の価78円になるはお返しもすが、子牛の価は100円にてもこちらに生まれたるものなれば、こちらのものなりとのご挨拶は、ちと分かりかねる次第に候。
(略)
さて我が日本人民中には、この78万ドルの使用上に関して色々と心配するものあり。あるいは横浜に飛脚船を横付けにする桟橋を築き、米国人はもちろん当時の相棒 英仏蘭諸国人が日本渡来の節、上陸の便利不足なからしめんには、長く米国人の好意の紀念物たるべしと。
その他何といいかんといい、妙案山のごとしといえども一向に感服すべきものなし。
小生の考えにては、この金を何か一廉の紀念用に消費するはもちろんのことなれども、桟橋や飛脚船の如き普通一般の有用品に消費するは甚だ見苦しくしておもしろからず。もっか幸いに軍備拡張の折柄につき、この78万ドルを持って下関海峡の左右に堅牢至極の砲台を築き、今より以後、我が大日本政府の禁制を犯し、ほしいままにこの海峡を通航船とするものあるにおいては、前年、毛利氏の不始末に倣わず、ただ一発のもとに木造軍艦にても鉄装軍艦にでもご遠慮なく破砕微塵にすべしと、かねて世界万国に広告しおくべし 。
この工事落成の上はその名をワイヨミン砲台と称し、さる文久三年、並びに翌元治元年この海峡にて砲戦の始末、及び折って300万ドルの償金強奪の顛末より、今回米国政府が元金返還の次第まで 明細に石塁の前面に彫刻し、子孫百世の紀念碑に代用すべし。
以上、小生の愚案に候。他年、一日、 下関海峡ワイヨミン砲台の前を鞠躬如として欧米軍艦の通行するを目撃せば、我々日本国人たるものはいささか多年の鬱憤を慰し申すべきか。
あえてこれを愛国の士に質す。頓首再拝明治16年4月30日
時事新報編集長 机下
著者名は「相模太郎」 元寇を迎え撃った北条時宗の異名で、頼山陽「蒙古来」で「相模太郎 肝 甕の如し」とうたわれている。
ま、こんな皮肉のコラムを書いた福沢諭吉、一万円札の肖像であってもそうでなくても「ただものではない」と…この前と同じギャグを再現しました。
ちなみに、この前段階「生麦事件」をくわしくかいた「風雲児たち」が月末発売
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