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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

未解決性犯罪事件の周辺地域で、警察はレンタル店のアダルト貸出履歴を把握してる…という話から広げて

【2009年11月13日 追記】
同種同類の事件および捜査の問題が出てきたので、新たなリンクを加えました。
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20091113

〜〜ここから最初の文章〜〜
千葉県東金市の女児殺害事件で容疑者が逮捕された。あまりくわしくこの事件を追っているわけでは無いが、いたましい事件だ。
容疑者に知的なハンディキャップがあるんじゃないか、という言説もネット上ではかすかに読んだが、この真偽も詳しくは知らない。

そんな折にこんなエントリを読みました。
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20081208

んで、こんな報道も出ています。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081208/crm0812080001001-n1.htm
(略)

勝木諒容疑者の自室は「聖闘士星矢」の単行本やポケモン戦隊もののグッズで埋め尽くされていた一方、今回のような特異な犯罪の誘発をうかがわせるソフト類はなかったことが7日、東金署捜査本部の調べで分かった。容疑者がよく利用していた自宅近くのレンタルビデオ店で借りていたソフトも特撮ものや洋画のヒット作などだった。
(略)

「特異な犯罪の誘発をうかがわせるソフト」ってなんだよ。またひぐらしか? 「ソフトによって犯罪が誘発される」なんていつ証明されたんだ? いつもいつも思うんだが、レンタル屋で借りたソフトがなんの証拠になるんだ?

レンタル屋だって、そんな情報を警察に渡す義務はないと思うんだけどなぁ。

じゃあアレか。もし、うちの近くで胸の大きな女性が襲われる事件があったら、警察がレンタル屋に履歴を照会して、その結果、オレが疑われることになるってのか?


ここで「グリフォン・ファイル」から資料をば。
これ、いつか紹介しておこうと思って積んでおいた本からです。

情報系 これがニュースだ (文春文庫)

情報系 これがニュースだ (文春文庫)

この本の弟19章に「DNA捜査の落とし穴」という1996年のレポートがある。
これはDNAが逮捕の決め手になった草分けの事件で、そしてその分だけ当時の精度が科学的に粗かったため「本当に信頼できるのか?」という冤罪問題も出ている「足利事件」の報告なのだが、DNA捜査に行く前、まだ容疑者の特定ができない時点での、大きく網をかける捜査方法についても記されている。

P375,376
捜査本部は犯人像を、「土地勘のある、B型の、ロリコン男」と断定、八班に分かれた捜査員184名は足利市内全域にローラー作戦を展開した。(※女児連続誘拐殺人事件の発生した)両パチンコ店の常連客1500人を特定しただけでなく、事件発生当日にパチンコ店にいた約1400人、運動公園にいた約700人、河川敷にいた約350人、釣りをしていた約20人のすべてに面接調査を実施。
群馬県警の協力も得て、性犯罪前歴者のみならず周辺のレンタルビデオ店ロリコンものを借りた男性のデータを各店長に「任意提出」させて、約1500人にアリバイを問いただした
(略)B型の男はみな疑わしい目で見られ、ましてや一度でもロリコンものに手を出したとなれば窮地に追い込まれる、といった事態も決して冗談ではなかった

ということで、日垣隆氏のレポートが正しいのなら、またこの後、全国の警察が手法を反省し、こういうやり方をしないことを決定しない限り、同じように続く、未解決の連続性犯罪・殺人事件があったとき、同様に各都道府県警や警察署が、周辺のレンタルビデオ店から、関係すると思われるテーマ・ジャンルのビデオ貸し出し記録を「任意提出」させて、それを資料として把握している…と考えても不自然な部分はなさそうであります。
これはとりあえず是非を論じる前にとりあえずの現状、事実としてそうだと。少なくともそういうノンフィクションの記述があると。
皆さんもひとつの豆知識、日常的な知識として今後、覚えておいていいでしょう。


そこから図書館、そしてアジールと特権を考える

これに類似したシチュエーションで、しかもまったく正反対の態度を見せているのが公共図書館だ。
一度書いたことがある。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080630#p6

■人気ドラマ「相棒」にも封印作品がある 人気ドラマ「相棒」にも封印作品がある
(略)今映画版が興行収上半期ナンバーワンを独走する「相棒」にも封印作品があるという。スペル・・・いやいや(笑)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E6%A3%92

欠番

Season3第7話の「夢を喰う女」は、閲覧者の個人情報を図書館の司書から聞き出す[14]場面が、日本図書館協会や世田谷区の図書館など図書館関係者から抗議が寄せられたため、欠番となっている

テレビ朝日は、2004年12月15日付で日本図書館協会などに「令状を見せる場面を省略したことは不適切だった」とお詫びを表明したほか、謝罪テロップを放送している。

このストーリーについては、オフィシャルガイドブックでは「シーズン3第7話は欠番です」と記されているのみで、地上波などでの再放送、番組販売は行われておらず、DVDにも収録されていない。また、Season3テレビ朝日公式サイトのあらすじのバックナンバーからも削除されている。ただし、これらの措置は協会側ならびにその関係者が欠番を要請したものではなく、あくまでも番組サイドの自主的な判断によるものである。

この「図書館から情報を引き出し手がかりを掴むミステリー」→「図書館は個人の秘密を守ります!とクレーム」というのは10数年ほど前にも何かの小説であり、リサーチ不足だったと思うけど、令状のシーンとかを追加収録するとかお断りのテロップを出すとかいろいろあると思いますけどね。

まあyoutubeもあるご時世、これだけの人気作の封印作品を見るのはたやすいだろう。

このエントリのコメントによる追加情報

某出版関係者 2008/06/30 23:42
「図書館から情報を引き出し・・・」云々で以前に問題になったのは、法月綸太郎の冒険」に収録されている話ではないかと。文庫版で本人があとがきですいませんと言ってます、確か。


この方針というのは正しいことだと思うけれども、同じく個人の志向や興味を、密接にプロファイリングし得る…かもしれない情報を、片方は唯々諾々と任意提出し、片方は令状無しでの場合は拒否するのは、当然個人の資質ではない。


それは図書館のほうには、採択の1954年のこれを基点とするなら(※1979年改訂)半世紀にわたる原則の蓄積があるからだ。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jla/ziyuu.htm

図書館の自由に関する宣言」(※一部)


 図書館は利用者の秘密を守る

1.  読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。

2.  図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。

3.  利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。


むかし、小室直樹の本だったかな、対話形式の一節に

「では問題です。『王の権利』に対抗する、その対極となる概念はなんでしょう?」
「うーん、国民の基本的な人権?」
「違います、貴族や宗教勢力が持つ『特権』です」


という一節があり、非常に面白いものだった。
たしかに、歴史的に英国などでは、貴族たちが王の命令だろうが俺たちにはXXの権利がある!という特権を要請し、拡大することで、それがじわじわと人民の権利にもつながっていった。マグナ=カルタのようにね。
図書館が警察の要請(任意)を拒否するよう、相互の申し合わせで定めているのにちょっとそのイメージを重ね合わせた。


ま、アジールとか特権というのは、これはレトリックでして、もともと「任意提出」なのだからレンタル店だって断ろうと思えばできるし、国際オバケ連合じゃないや国際レンタルビデオ連合(あるのか?)がそう定めて、一致団結すれば、令状による警察の押収とかを除いては無くなるだろう。たべてしまえ(一部の人笑)。

最も勇敢なレジスタンス「小役人」。

ただし、未解決事件で必死に警察が捜査しているとき、事件解決につながる「かもしれない」情報を警察が求めたら、任意提出するのは正義か、悪か?これは認めなければならないが、かなりのグレーソーンであり、というか原理的に、
・それを提出したから、未解決事件が解決し、被害拡大を防いだ!
・それを提出したけど、未解決事件の解決や、被害拡大防止には役立たなかった
・それを提出したから、個人情報が流出し、人権が侵害された
・それを提出したけど、個人情報の流出や、人権侵害にはつながらなかった


というのは、もうそのときの運しだいな部分がある。結果は予測し得ない部分がある。


たとえば、「図書館が秘密を守った」ときにこんな例があったそうだ。
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20080805/1217886830


図書館の自由に関する宣言」とその50年の伝統は、こういう場合においても…令状は無いが、図書館が情報を提供すれば犯罪が防げる!かもしれん!というときでも、よって立つ根拠になり、冷たく拒否できるという点にあるかもしれない。そういう点ではやっぱり特権やアジールに似ているか。


いしいひさいちの戦争四コマ名作漫画「鏡の国の戦争」にこういう話がある。

1コマ目・占領軍がある都市を占拠。
2コマ目・司令官が市長と会見。「我々はあなた方の自治を尊重する。無抵抗なら、いつもどおりに生活してくれればいい」
3コマ目・数日後、部下が報告「司令官!役所の職員が悪質なサボタージュを行っています」
4コマ目・言い争いをする軍人と役人。「我々は占領軍だぞ!」「規則は規則ですから4番窓口へ」。
     市長の弁明「いつものとおりなんです、これが。」


ひとつの基準、規則を遵守して、なにがあってもそれを曲げない…という小役人、官僚的な発想や態度は、実のところ非常に禍をもたらすこともあれば、頼もしい自由と正義の盾となる可能性もある。


国際レンタルビデオ連合が、任意提出の拒否を決めるか?は、その判断、水準をどう決めるか、でもある。

あとひとつの可能性

「市場」がこの問題の解決に奏功する可能性もある。
「私たちは顧客の秘密を守ります。令状が無い限り、捜査機関への情報提出はありえません」というAレンタル店が、そうしないレンタルB店に市場、消費者の支持が得られれば、おのずとそういう店が増えていくだろう。
2ちゃんねるが、閲覧・書き込み共に日本有数の多さなのは、まさにこの部分もかなり大きいのではないだろうか。
ただし、
「あのA店は、警察に情報を知られると困るやつらが利用してるんだって!おお怖い」「おちおち子供連れであの店に行けないわ」というような風評・評価により、まさに市場によって退場させられる可能性も高い。
どちらも机上の空論だからどうなるか分からない。

あっ、ふと気付いた。保証金取れば、完全匿名レンタル店って可能だよね?

・今、DVDっておおよそ一万円しないんだっけ?
レンタル貸し店が借主の住所や氏名を把握するのは、借りっぱなしで帰ってこないと店がソンするからだよな。
じゃあ入会時に一万円の保証金をとって「XXカ月以内に返却が無く、一分一秒でも遅れたら、無条件で保証金没収です。ご承知の方だけ会員になってください」と納得してもらえれば、完全匿名でのレンタルDVD店って運営可能のような。
でも、上記の「A店」みたいになっちゃうか、いまさらそんなシステムを作ったら。
これも机上の、思考実験でした。


さらに思い出した、ナンシー関の警告

10年先を見通す目を持った故ナンシー関は、さるやんごとなきところに嫁ぐことになった女性がまだ1民間人だった時代、「ご婚約決定、おめでとうございます!」という報道をチェックして、「その女性の人となり」を(美談として)報じるワイドショーに、こういうくだりがあったことを発見し、警告を発している。

(記憶による大意)

この女性のいきつけのレンタルビデオ屋が、「おめでとうございます。この方は光栄にも当店でドラマ『東京ラブストーリー』などをお借りになられていました」としゃべっていた。
いいのか、こんなの。
「おめでたいと祝福してるんだからいいじゃない」
「あたりさわりの無いドラマを借りたと言ってるんだからいいじゃない」
というつもりなんだろうけど、本人にとってみれば「東京ラブストーリーを観てることだけは隠したかった。まだアダルトビデオを借りてることがバレたほうがマシだ」ということだってあるかもしれないだろうに。

主なテーマは「おめでたいの無礼講」を批判、皮肉る文章だが、ここがなぜか記憶に残っている。
書名は覚えて無いが、この内定報道の時期から調べればみつけやすいかもしれない。