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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

議院内閣制と首相交代とねじれ現象(毎日新聞「発信箱」から)

個人的に興味のある「憲制の常道論」の話なので。


http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/
発信箱:ああ、議院内閣制=与良正男(論説室)

先週行われた麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表との党首討論で、最も興味を覚えたのは次のやり取りだった。

 「首相は総選挙で国民の信を得ていない」と迫る小沢氏に対し、首相は「大統領制とは違う。英国でもブレア前首相からブラウン首相に代わり、まだ選挙をやっていない」と答えた。

 小沢氏は切り返した。

 「2年半で3人も首相がころころ代わって選挙をしない例はあまり聞いたことがない」

 小沢氏の方が説得力があると思う。確かに日本は議院内閣制で、首相は国会議員の中から国会の議決により指名される。つまり、衆院の多数党が一致して選べば、その人が首相になる。だから、麻生首相が言う通り、法律上問題はない。

 だが、有権者を無視し、自民党の都合で勝手に何度も交代するのは限度がある…(略)

言ってるのが小沢氏でなければもっと説得力があったかもしれない。
だって、衆院総選挙を経ない首相交代で、俺が覚えているのは80年代後半


中曽根康弘(1986年、衆参ダブル選挙で大勝)→竹下登→宇野宗祐→海部俊樹(1990年総選挙)だもの。


そして既に竹下派七奉行の一人で、首相選定劇に深く関わっていたのが小沢一郎だ(笑)
もっとも、「それを反省して今の政治を変えようとしている」といえばいいのだが、とりあえずかつての恩師竹下登を含め、正統性が欠如していたことを公に認めるべきではあるな。これは”正統論”の問題であって、そうなると過去の話だからいい、ってもんじゃなくなるし、それにプラスして論理の問題である。


ついでに彼は総選挙を経ないで細川護煕羽田孜政権をつくってもいるが、まぁこれは羽田政権崩壊があまりに早すぎ「この後、解散するつもりだった」という主張もなし得るから除外しておく(笑)

それより気になる「総選挙でもし自公が過半数を辛くも守ったら、参院民主党は与党の政策に賛成しなきゃならんのか?」

民主が勝てばねじれ解消で問題ないのだが、
自公が、いまより増えることがないとしても衆院でなんとか過半数を保ったとするでしょ。
例の「直近の民意」によって主導権を衆院選の勝者側が握る・・・という合意はできるかもしれない。
麻生太郎首相も、文芸春秋で発表した論文でこう書いた。

…勝利した側の政党がその直近の民意を背景に政党間協議を主導する

だが”主導権”ってそもそも曖昧な言葉じゃない。
その後、対決法案が出てきたときにだ、参院の勢力図はあいかわらずピクリとも動かないのだから、今と同じように民主党が賛成しない法案は、参議院で次々に廃案にし得る。民主党の代案も、衆院で与党により廃案だ。
「直近の選挙で勝ったのは与党なんだから、与党の案に賛成しろ」という話は、ひょっとしたら阿吽の呼吸であるのかもしれないが、そもそもそれなら衆・参と議院が分かれる意味は無いじゃない?
衆院の勢力はあくまで衆院参院の勢力はあくまで参院だ。
この二つの対立って、どっちの選挙実施日が近かったかというだけじゃはかれないだろう。
これを埋めるのが例の慣習、「憲政の常道」・・・てやつだが、1989年に自民党参議院過半数を割り、社会党土井たか子が初めて参議院で野党党首として首班指名を受けたことがあった。
上記の海部俊樹による翌年1990年の解散総選挙で、「直近の民意」はまあ自民党に移ったのかもしれない。
だがこの時の参議院というのは野党が過半数とはいえ社会・公明・民社・共産などをすべてあわせての過半数であり、民社や公明がその後自民党に協力したので、第一党の社会党共産党は態度を変えなくてもねじれが解消された(笑)。


してみるとあの時、公明や民社は「直近の民意」をちゃんと重んじたのだな、とも回想・再評価できるのだが、間違いなく当時、そんな論評は皆無に近かったよ。

逆にいうとそういう形で社会党の抵抗戦術は温存されたため「衆議院(第一院)の総選挙でA党が勝利し政権(内閣)を取ったら、参議院(第二院)のB党は、A党内閣の出す法案の成立に協力すべきだ」というようなルールは、少なくとも戦後日本政治には無かった。
つうかそんなルールを本当に作っていいのか、
また協力ってどこからどこまでだ、ということもあるし。

一見、机上の頭の体操に見えて、実際そうだから私も興味を持っているのだが、ただ現実の日本政治にすぐに関わってきかねない問題でもある。まあくりかえずが、衆院選で自公が負ければこの問題は一応考える必要がなくなる(笑)