ブログ「中東TODAY」では、最近エジプトとトルコの話題が多い。
http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/
トルコについてはずっと追っている、政教分離の国是と国民の支持を受ける与党AKPの相克という話で、これは私も大変興味があるのであとで詳しく論じたい。
こういう形で行政と司法が真っ向勝負するような状況は、なかなか民主主義国家でもあまり見ない(笑)
そしてエジプト。
なにしろエジプトは、70年代だったか80年代初頭だったか、そのへんからずーっと権力を握っているところで、穏健・中庸な中東の盟主としての存在感はありつつ腐敗と停滞を続けているのだろうと勝手に思っていた。
実際、こういうジョークがあるらしい。
・・・ナセル大統領は自分よりおろかな後継者を探して、副大統領にすることにした。10年間探した結果、副大統領に指名されたのがサダトだった。
サダト大統領もナセル大統領に倣って、自分よりもおろかな人物を副大統領にすることにした。サダト大統領が7年間探した結果がムバーラクだった。
ムバーラク大統領もナセル、サダト両大統領に倣って、自分よりもおろかな人物を副大統領に指名しようとして探したが、25年が過ぎたいまも副大統領に指名する人物は決まっていない。
ところがその一方、エジプトに多額のお金が今流入しているのだそうだ。
友人のビジネスマンが語るところによれば、いまエジプトの銀行には、膨大な金がうなっているというのだ。行き場の無い資金を、何とか優良企業に貸し付けようと、銀行マンから一日何度も電話がかかってくるし、銀行マンが企業を訪問してもいるというのだ。
一体何処からエジプトに、そんな金が集まっているのだろうかと、誰もがいぶかろう。実はエジプトは、例外的産油国なのだ。例外的産油国というのは、OPECにもOAPEC にも参加せずに、市場に合わせて有利なときに、有利な価格で石油が売れる国という意味だ。
石油の価格は暴騰し、1バーレルの価格が170ドル台に近づいている。その恩恵をエジプトも受けているのだ。もちろん、湾岸産油諸国などからの資金の流入も、ものすごい金額に上っているだろう。
加えてエジプトへの観光ブームが続いている。日本からの小規模な観光客ではなく、欧米や観光では新興の中国、ロシアから、そして東欧圏や北欧から、観光客が集まってきているのだ。
銀行から金を借りてくれと依頼されている友人は、「今後3年以内に紅海沿岸に3棟のホテルを建設する。」と言っていた。各棟は400室の客室を擁する規模だということだ。
彼は自己資金で十分建設できるから、銀行の金を借りなくても済むと豪語し、外人観光客が多いから、すぐ元が取れると言っていた。
エジプトで発行される毎日の新聞にも、エジプト政府の新計画なるもののニュースが掲載されているが、それらは何十億ドル規模のものがほとんどだ。小さいビジネスなど、目もくれないということであろうか。
確かに、エジプトのカイロや郊外には、数億から数十億の豪邸開発が行われており、それを主にエジプト人が購入しているのだ。
じゃあ なんでその恩恵を庶民は享受できないのか。中産階級が生まれ、民主化への鼓動が聞こえないのか。
かつてオスマントルコから事実上の独立を勝ち取り、独自の近代化を明治維新に先んじて行ったナポレオンと同い年の、偉大なる梟雄ムハンマド・アリー(この人物についていつかは書きたい)を生んだエジプトが、今の現状に甘んじているようでは情けない。
(※あ、エジプトが生んではいないか(笑)。外国からやってきた、いわばリアルな傭兵王カシューだ。だがそれを王として頂けるのは、それもまたエジプトの誇りではないか)