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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

漫棚通信から2 絵画技術ってどうして世界で同時多発しなかったんだろうね

上の話も重要ではあるのだが、もっと明るいというか生産的な話題で。

http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_c4ba.html

輪郭線のモンダイ
 最近、マンガを読みながら気になってるのが、輪郭線のモンダイです。

 自分でマンガを描いたことがあるひとならわかると思いますが、遠景の人物の輪郭線は細く、近景の人物の輪郭線は太く描きます。さらに1ページ大の顔のアップになりますと、その輪郭線は極太になります。本宮ひろ志とかをイメージしてください。もちろん、彼だけじゃなくてほとんどのマンガがそうです。

 アップの輪郭線が太い、というのはマンガの常識としてそうなっているので、わたしたちはあまり気にせずに受け入れていますが、これって現実はそうじゃないですよね。

 輪郭線というものが現実に存在するわけではありません。そこにあるのは本来、色彩や明るさの架空の境目にすぎないものですから、近景で太くなるわけがない。輪郭線自体がすでにウソなのですが、近景の輪郭線を太く描くのは、マンガの、あるいは二次元絵画の大きなウソです。

 この、「近景の輪郭線を太く描く」というのが、「マンガ的」なイメージを与えているのではないでしょうか。

この後、いろいろと話が進んでいき、コメント欄でも活発な議論が出ているんですが、私はもう少し明後日の方向に進む。


こういう議論では「風雲児たち」で平賀源内が西洋画の技法を殿様と、そのご学友とも言える侍に教えてほんの一瞬だけ花開いた「秋田蘭画」の話を思い出します。

ここで、どこまでが本当か分からんが、この漫画の中では源内は西洋画の特徴を教えるため「真上から見たお供え餅を書きなさい」と命じた(笑)。
輪郭線だけに頼る日本画、東洋画はそれが難しいんだそうな。その中から西洋的遠近法や、影を使った表現法を源内は教える…という設定になっている。


で、この前上野で西欧美術展の「ムンク展」に行きましたよ…というエントリを書きましたよね。
上野の森はおおさわぎ2
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20071220#p4

同館ではムンク展の料金で、常設展も入れる(当たり前)。
ここでは、西洋画の進歩や原点回帰の歴史が自然と分かってくるんだけど、私はそんなに審美眼が無いので、いわゆる写実的に似ているとうわー似ているなー、と驚く極めて単純な驚き方ををしている。
で、写真が発達した後はいいんだ別に。ありのままなら写真を撮ればいい。絵は画家の情熱と感性を表現しろ云々、とシュールリアルになってもさ。
ただし、写真前ってのはやっぱり絵かきさんって「見たまんま」「似てる」ってことへの需要は多かったと思うんですよね。

で、やっぱり中世当たりから西洋画って、同じ時代の日本人の肖像画と比べても「似てる」んですわ。

二つ疑問があって、当時の絵が「見たままを描け」というゴールがあったなら、地球上のどこの文明文化でも、最終的には天才が現れて、西洋画のようになったんと違うのかなー、ってことです。まあ実際にそうならなかったんだから違うんでしょう。
目の前の風景や人を見た、それを描いたという単純なものでも、各々にその技術が生まれ、伝承され、進化して…そしてそれが、逆に「突然現れた天才」も型に嵌めてしまうということもあるのかなあと。

1989年に手塚治虫が亡くなったとき、朝日新聞がいまだに語り継がれる社説を掲載した。
「なぜ日本人は漫画をこんなに読むのだろうとよく聞かれる。日本人は逆に、なんで漫画は外国では読まれないだろうと思う。答えのひとつは、彼らの国に手塚治虫がいなかったからだ



もうひとつ。
日本文明、東洋文明が西洋画のようなリアルさを生み出せなかったのはいいとして、平賀源内が秋田蘭画を伝えたのは1700年代半ばだ。
これは徳川吉宗がそのちょっと前に、洋書の輸入制限を少し緩めたゆえもあるが、元を辿れば戦国時代に西洋画も多くの人が見たり入手したりしているはず。
当たらし物好きのミーハーである点では世界有数のわが民族。
なぜこの時に西洋画の技法が日本中を席巻し、独自のアレンジを加えて定着しなかったのかなあ。そうすれば、戦極、いや戦国武将のリアルな西洋的肖像が多数残っただろう。
KOEIも楽だったはずだ(笑)。


と、先方のエントリとあんまり関係ない方向へ、思索というか夢想を膨らませるのがブログのネタに困らないコツ。
(つうかこんな予定外のエントリ書いてる余裕ないよ!)