イノキゲノムのおまけだけど、またアントニオ猪木は小金に引き寄せられ、へんなラップミュージシャンとコラボ。会場のシートに宣伝チラシがあったが、秒殺で丸めて捨てたので詳細はわからん。
そのなかで「1、2、3、ダー」と並んで、例の「迷わず行けよ、いけばわかるさ」が、ラップのワードになってたんだYO、ブラザー。
さて、この前紹介した高島俊男氏の「新・お言葉ですが…」バックナンバーを読んでいるのですが、ここに「水五訓」の謎という回がある。
http://web.soshisha.com/archives/word/2007_0419.php
http://web.soshisha.com/archives/word/2007_0510.php
高島氏は旧シリーズでも、「世に〜の言葉として伝わっているものは、あれあれ探してみるとその人の言葉じゃないよor原典では意味違うよ」というのを何度か書いているはずで、そのたびに面白かった記憶あり。
この面白さに着目した清水義範は、これだけで半ノンフィクション的な一本を書いている。
- 作者: 清水義範
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ここの福沢諭吉というのは「心訓」とかいうやつで、最近「働きマン」にも引用されていた。
一、世の中で一番楽しく立派なことは一生涯を貫く仕事をもつことです
一、世の中で一番さびしいことはする仕事がないことです
一、世の中で一番みにくいことは他人の生活をうらやむことです
一、世の中で一番尊いことは人の為に奉仕し決して恩に着せないことです
一、世の中で一番美しいことは総てのものに愛情をもつことです
一、世の中で一番みじめなことは人間として教養のないことです
一、世の中で一番悲しいことはウソをつくことです
一、世の中で一番素晴らしいことは常に感謝の念を忘れぬことです
罪なもので、今うつさせてもらったhttp://www.kobekeio.org/club/kokoro/ueshima.htm#04
の筆者は偽作だとわかりショックを受けて、これをみんなに配るつもりで計画したカード印刷を中止してしまったそうな。
ただ、清水氏の本も(落ちのあまりにも強引なまとめ方はオイオイだが)、高島氏のエントリも実に面白いもので、こういう話題は知的ミステリーとなりえる、ということだ。
ほかでいうと、ちょっと書店で見かけただけだが、と学会が関係している?「日本史トンデモ」云々という本に「アインシュタインの日本礼賛」(というのがあるらしい)という文章の真偽を探す話があったし、東北に古代文明がうんぬんという偽書もあったね。
さて、そこで。
話は上の、しょーもないコラボラップに戻るのSA、ブラザー。
http://d.hatena.ne.jp/fullkichi1964/20070405
これを猪木はよく一休禅師の作として紹介していますが、ちょっと考えればおかしいってことは分かりますね。「一休は室町時代の人なのに、なんで文語文じゃないんだ!!」って話で(苦笑)。そこで調べてみると、これは浄土真宗大谷派の住職であり大谷大学の助教授でもあった清沢哲夫氏の詩の改作なのですよ。
http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000028008
http://plaza.rakuten.co.jp/dch30/diary/200612020000/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B2%A2%E5%93%B2%E5%A4%AB
話としてはこれでおしまいになるんだが、ウィキペディアの清沢哲夫によりますとそのご生涯は「1921年1月26日-2000年1月20日」。
……著作権、残りまくりですね(笑)
つうか、アントニオ猪木が引退のときに引用した19941998年にはご存命だし。
人生訓なんて人から人に伝わっていくものだとか、清沢氏本人だって知ってて問題視しなかった(かもしれない)とか、本当に一休禅師のものだと勘違いしてたとか、ラップのサンプリングでフレーズにいちいち著作権をいうと音楽文化が育たない、とかいろんな視点で(法的な意味とはまた別に)弁護も可能だとは思うが、実際に会場でアレを聞かされた側から言わせてもらえば、
「ここは敢えて遺族に著作権を振りかざしてもらってでも、あれを抹殺してもらいたい」とか感情的に思ってしまったものでした。
逆に、すでに清沢氏遺族から許可を取っていればそれはそれで笑えるのだが。
ただ、自分はどうせならこういう偽名言、暴く人より「つくる人」になりたいものだと思う(笑)。
偽作とはまた別だが、日常的に接していた人がその人の片言節句や断片的な言葉などをまとめてこういう短い文章にしたものがあり、(短くはないが論語も仏教典もそうだ)傑作に佐々淳行作・「後藤田五訓」(後藤田正晴)がある。官僚向けのものです。
http://sumim.no-ip.com:8080/wiki/1133
一、省益を忘れ、国益を想え
二、悪い本当の事実を報告せよ
三、勇気を以て意見具申せよ
四、自分の仕事でないと言う勿れ
五、決定が下ったら従い、命令は実行せよ
ヴォルテールの名言
有名な「私はあなたが何を言っても賛成しないが、私はあなたがそれを言う権利を死んでも護るだろう。」という言葉は、自由主義の原則を端的に示した名文句として人々に記憶されているが、実はヴォルテールの著作や書簡にはみえず、S・G・タレンタイア(Stephen G. Tallentyre、本名 Evelyn Beatrice Hall)の著作『ヴォルテールの友人』( "The Friends of Voltaire"、1906年)中の「 'I disapprove of what you say, but I will defend to the death your right to say it,' was his attitude now. 」の部分翻訳である。この後に「彼の態度はこう言っているようなものだ」と続いておりヴォルテール自身の言葉とはされていない。なおヴォルテールの1770年2月6日、M. le Richeあての書簡には、「私はあなたの書いたものは嫌いだが、私の命を与えてもあなたが書き続けられるようにしたい。」(Monsieur l'abbe, I detest what you write, but I would give my life to make it possible for you to continue to write.)とあるとされ、一説にはこれの翻案ともいわれる。