http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20060929/mng_____kok_____002.shtml
上海疑獄
捜査員2000人以上派遣
【上海=豊田雄二郎】上海市トップの陳良宇・市共産党委書記が解任された上海疑獄で、中央政府は会計を専門にする二千人以上の捜査員で組織する「審査団」を、上海に送り込んでいることが分かった。これまでタブー視されてきた江沢民・前国家主席につながる「上海閥」の本丸で、汚職と腐敗の一斉摘発を図るという。情報筋によると、審査団は、中央規律検査委員会が派遣した百二十人の調査団とは行動を別にしている。同調査団とほぼ同じ八月上旬に上海入り。疑獄の舞台となった社会保障基金の周辺に限らず、上海市政府内の公金の流れを徹底的に洗い直しているという。
一方、既に拘束された市首脳らの中で、香港各紙は、江氏の「妻のおい」とされる呉志明・市公安局長や、沈紅光・市党委統一戦線工作部長、陳氏の「大番頭」と称される孫路一・市党委副秘書長の三人について、実名を挙げて報じている。さらに複数の国営企業首脳が調べを受けているもようだ・・・・
この上海の事件が単なる汚職摘発にとどまらず、胡錦濤派と江沢民派の暗闘であることは、どこもタブー視せずに書いていますね。
「歴史問題を永久に言い続けよ」と言い放った江沢民より、胡錦濤は対日融和的である云々という話もあったが、さてどうだか。たとえば江沢民派が追い詰められたら、反転攻勢の一つとして「安倍晋三との会談で弱腰だ」と現執行部を責めるんじゃないかね。
さて、それは別として、こういう権力者が、いわば「部下」である警察に逮捕されるという話は、個人的に何か心揺るがされるものがある。
もちろん「法の支配」が及んでいる体制ならばありえなくも無いのだが、今の中国はどうひっくり返してもそういうアレじゃない(笑)。
で、逆にそういう体制だから面白いのでして、A派もB派もお互い隙在らばと狙っていて、警察というのもその両派の下に支配されているわけだよね。
そのバランスがあるきっかけで崩れたとき、どどっと何かの政治的化学反応が発生し、昨日の部下が上司にワッパを掛けることになる。
このメカニズムは。そこで勝者となるには。
たしかソ連史を書いた本で、一枚、絶頂期の秘密警察長官・ベリヤの写真を見たことがある。キャプションに「この一週間後、ベリヤは逮捕された」と書いてあり、なぜか分からないが恐怖を感じたものだ。このときは絶対権力者スターリンの死亡があり、フルシチョフ派とは本当にどっちが権力闘争に勝ってもおかしくなかった。勝てたのは政治局の多数派を握ったためか、それとも警察を直接握ったのか。
軍事的な戦争、ドンパチを描くフィクションは多いが、この、銃声は無いがそれにまさるとも劣らない緊迫した「政治ゲーム」を描くという作品は少ない。
今思い出すと、田中芳樹「銀河英雄伝説」2巻ではジークフリート・キルヒアイス急死(による、ラインハルトの一時的な精神崩壊)という権力の空白に乗じ、事件の黒幕との濡れ衣を着せて旧体制を一掃するという挿話がある。
こういうところまで目配りするのは、さすが”当時の”田中芳樹は天才であった。
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また、多少の武力衝突、騒乱はあったが、基本的にはこういう静かな?権力闘争をえがいた作品が、佐藤優の最近の作品
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でありました。
やはり警察などを軸にした権力闘争はソ連が本場か。