もともともカーニー演説は、こことかに翻訳あり。いろんな記事にもなった
news.yahoo.co.jp
数十年にわたり、カナダのような国々は「ルールに基づく国際秩序」のもとで繁栄してきました。私たちはその制度に参加し、原則を称賛し、予測可能性の恩恵を受けました。その庇護のもとで、価値に基づく外交を追求することができました。私たちは、この国際秩序の物語が部分的には虚構であることを知っていました。最強国は都合のよいときには例外を認められること、貿易ルールは非対称的に執行されること、国際法の厳格さは加害者や被害者の立場によって異なること。
それでもこの虚構は有用でした。とりわけ米国の覇権は、航行の自由、安定した金融システム、集団安全保障、紛争解決の枠組みといった公共財を提供してきました。
だから私たちは看板を掲げ、儀礼に参加し、言辞と現実の乖離を大きく指摘することを避けてきたのです。
しかし、この取引はもはや成り立ちません。
率直に言いましょう。私たちは「移行期」ではなく、「断絶」のただ中にいます。
過去20年にわたる金融、保健、エネルギー、地政学の危機は、過度なグローバル統合がもたらすリスクを白日の下にさらしました。
近年では、大国が経済的統合そのものを武器として使い始めています。関税は圧力手段となり、金融インフラは威圧の道具となり、サプライチェーンは付け込まれる脆弱性となっています。
統合が相互利益ではなく、従属の源泉となるなら、「嘘の中で生きる」ことはできません。
ミドルパワーが頼ってきた多国間制度――WTO、国連、COPといった集団的問題解決の建築物――は著しく弱体化しています。
その結果、多くの国が同じ結論に達しています。エネルギー、食料、重要鉱物、金融、サプライチェーンにおいて、より大きな戦略的自律性を確保しなければならない、と。
この衝動は理解できます。自国で食料も燃料も確保できず、防衛もできない国には選択肢がほとんどありません。ルールが守ってくれないなら、自分で自分を守るしかないのです。
しかし、冷静に見なければなりません。要塞化した世界は、より貧しく、より脆弱で、より持続不可能なものになります。
さらにもう一つの真実があります。大国がルールや価値の「建前」さえ放棄し、力と利益の追求に専念するなら、取引主義から得られる利益は次第に再現困難になります。覇権国は永遠に関係を換金し続けることはできません。
同盟国は不確実性に備え、多角化を進め、保険をかけ、選択肢を増やします。これは主権の再構築です。かつてはルールに基づいていた主権が、今後は圧力に耐える能力に根差すようになります。
私は申し上げました。こうした古典的なリスク管理にはコストが伴います。しかし、戦略的自律性や主権のコストは共有することも可能です。強靱性への共同投資は、各国が個別に要塞を築くより安上がりです。共通基準は分断を減らし、相互補完は互いに利益をもたらします。
カナダのようなミドルパワーにとっての問題は、新たな現実に適応するか否かではありません。適応は不可避です。問題は、単に壁を高くすることで適応するのか、それともより野心的な道を選べるのか、です。
カナダは早い段階で警鐘を聞き、戦略姿勢を根本的に転換しました。
地理や同盟への所属が自動的に繁栄と安全をもたらす、という従来の心地よい前提がもはや成り立たないことを、カナダ国民は理解しています。
私たちの新たなアプローチは、アレクサンダー・ストゥブ氏の言う「価値に基づく現実主義」に立脚しています。言い換えれば、原則を守り、かつ現実的であることです。
(略)
ミドルパワーは連携しなければなりません。テーブルに着かなければ、メニューに載るからです。大国は単独行動が可能です。市場規模、軍事力、交渉力があります。ミドルパワーにはそれがありません。覇権国と二国間でのみ交渉すれば、私たちは弱い立場から交渉し、提示された条件を受け入れ、最も迎合的であろうと競い合うことになります。
それは主権ではありません。従属を受け入れながら、主権を演じているにすぎません。
大国間競争の世界で、中間に位置する国々には選択があります。大国の歓心を買うために互いに競い合うのか、それとも結束して影響力ある第三の道を切り開くのか。
話題にもなり、支持も大きいという。
カナダでは、トランプ米大統領の挑発的な発言に対し毅然とした態度を貫くカーニー首相への支持が高まっている。https://t.co/JpiPxC87p1 pic.twitter.com/YtZQppJdDC
— ロイター (@ReutersJapan) January 23, 2026
だが、Xポストを読むと、国際政治の専門家筋から懸念が聞こえてくるのだ。
カーニー首相の演説、日本だとずいぶん評価が高いようだが、ミドルパワーの連合というのは、私も何度か書いてきた。ただ問題は、ミドルパワーの連合だけでは、中国の抑止にはならないということ。中国を抑止しながら、ミドルパワーの連携を高めていくのか、というのが外交の腕の見せ所。 https://t.co/rqOhtOU0vF
— Kazuto Suzuki (@KS_1013) January 24, 2026
私も内心思った。カーニー首相に限らず、アメリカ依存から脱しようとすると、結局は気がつけば中国とロシアに依存することになりかねない。メルケルの例を思い出してよく考えるがよい、とNYタイムズ記事。しかも今、メルツ首相が同じ轍を踏もうとしている。https://t.co/wW4wZoC0Qh
— Yoko Iwama 岩間陽子 (@2000grips) January 25, 2026
ミドルパワー外交は、静かに賢くやらないと大国に踏み潰されて終わるだけ。カーニー外交は静かでも賢くもない。我々言論人はともかく、一国の首相が言いたいことを叫んで溜飲を下げても国益には繋がらない。 https://t.co/r78bpAMxbb
— Yoko Iwama 岩間陽子 (@2000grips) January 25, 2026
これは私も全く同感で、日本はミドルパワー連合を一つの戦略として進めていくことは重要だけど十分ではなく,当面アメリカとの同盟関係を捨て去るわけにはいかないという現実も見る必要あり。その点少しthe letterでも触れました。https://t.co/bRYEuEKkDX https://t.co/iyZwGZRCNe
— Mie OBA/大庭三枝 (@Mie_Oba) January 25, 2026
もすこし穏健な視点。
カナダのカーニー首相が現在の国際秩序を「大国間の競争が激化し、最強の国が経済統合を強制手段として自国の利益を追求するシステム」と描写し、中堅国同士が連携する必要があると訴えています。
— 武内和人/Takeuchi Kazuto (@Kazuto_Takeuchi) January 21, 2026
これは日本国民にとっても重要な検討課題だと思います。 https://t.co/hLUUaUx9BD
カナダ・カーニー首相「米国の覇権は、公海の自由、安定した金融システム、集団安全保障、紛争解決の枠組みといった公共財を提供してきました。だから(とりわけ米の同盟国である)私たちは…儀礼に参加し…てきたのです。しかし、この取引はもはや成り立ちません」。…
— 野口和彦(Kazuhiko Noguchi) (@kazzubc) January 21, 2026
実はNYタイムスだったかワシントンポストだったか、WSJ…じゃなかったと思うがこんな懸念のコラム書いている。
カーニー・ドクトリン
2026年1月24日
クレジット…カルロス・オソリオ/ロイター
ロス・ドゥーザット著
オピニオン・コラムニスト
ドナルド・トランプが最初の任期で暴れまわる中、自由世界のリーダーシップは、リベラル派の喝采によってドイツのアンゲラ・メルケル首相に引き継がれた。彼女は国際主義の美徳の体現者、つまり慎重で、視野が広く、外交的で、多国間主義的で、何よりも専門知識を重視する人物として位置づけられていた。
そしてトランプが退任し、メルケルも退任すると、彼女のドイツにおけるリーダーシップがほぼ破滅的であったことが、突如として明らかになった。
2008年の金融危機に続くユーロ圏危機への対応の失敗と、中東からの移民に対する門戸開放は、彼女が維持していたはずの極右政党に対する防火壁そのものの崩壊に大きく寄与した。さらに悪いことに、彼女は環境保護主義者としての啓蒙的な理由から、自国の産業空洞化とロシアの石油・ガスへの依存度の高まりを受け入れました。そして、ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに侵攻した時、メルケル首相の遺産はトランプ政権のアメリカに対する強力な代替案ではなく、東側の権威主義的なライバルに脅かされ、依存する脆弱なヨーロッパの中核であることが突如明らかになりました。
今週、ダボス会議でアメリカ主導の秩序からの部分的な独立を宣言したカナダのマーク・カーニー首相の演説を観て、メルケル時代の教訓が私の心に浮かびました。
この演説には賞賛すべき点が数多くありました。カーニー首相の言葉は、今日の多くの政治家が頼りにしている虚言とは驚くほど無縁でした。彼はいくつかの重要な真実を語り、特に自由主義的な国際秩序が常に権力と利己心、そして理想主義によって定義されてきたことを強調しました。トランプ氏の最近の権力奪還を冷戦後秩序との「決裂」と捉え、大国間の競争をこの時代の重要な特徴として強調したのは正しかった。
最後に、彼が米国に対して隠さずに示唆した脅威、すなわちカナダのような中堅国は伝統的な米国との同盟に縛られる必要はないという示唆は、トランプ氏が北の隣国に押し付けてきた不条理な行為、すなわち「51番目の州」への皮肉(もちろん、カナダはいつか米国に加盟すれば少なくとも10の新しい州をもたらすだろう)、過剰な貿易戦争、そしてグリーンランド・ギャンビットへの理解できる反応である。
しかし、メルケル首相と同様に、カーニー氏の世界秩序構想の論理がどこへ向かうのかを検討する価値はある。確かに、中堅国は大国に対抗して協力することはある。しかし、重要な分野において、新しい世界秩序は真の多極化ではなく、中堅国はバンドワゴン(団結して行動する)の備えが不十分である。むしろ、彼らはしばしば二者択一に直面する。米国からの独立を主張すればするほど、中国への従属リスクが高まるのだ。
例えば軍事分野では、ヨーロッパとカナダは理論上は再軍備を行い、トランプ政権下の米国と中露準枢軸の間に第三勢力を形成できるほど裕福である。しかし実際には、経路依存性と老朽化が大きな力となる。米国との同盟関係から離脱することは技術的に極めて困難であり、福祉国家が高齢化社会に対処しながら支出を増やすことは政治的に極めて困難である。そして、前者を達成しながら後者を達成しなければ、ほとんどの場合、モスクワと北京への譲歩を強めることになる。
人工知能の分野では、その選択はさらに明確である。米国企業とその中国の競合企業がテクノロジーの最前線を支配しており、AIのアーキテクチャが米国のオタク王か共産党の科学者官僚によって構築されない未来を想像するのは非常に難しい。どちらのAIの未来も、人類の破滅につながる可能性がある。しかし、第三の、非同盟的なAIの道など存在しないし、オタワがそれを見つけるとも思えない。
the Carney Doctrine
Jan. 24, 2026Credit...Carlos Osorio/Reuters
Listen to this article · 5:25 min Learn more
Share full article406
Ross Douthat
By Ross DouthatOpinion Columnist
As Donald Trump rampaged about in his first term, leadership of the free world was transferred, by general liberal acclamation, to Angela Merkel of Germany. She was cast as the embodiment of internationalist virtue: prudent, broad-minded, diplomatic, multilateralist and expertise-driven above all.
Then Trump left office, Merkel left office, and suddenly it was possible to notice that her leadership of Germany had been well-nigh disastrous.
The mismanaged eurozone crises that followed the crash of 2008 and her open door to Middle Eastern migrants both contributed mightily to the collapse of the very firewall against far-right parties she was supposedly maintaining. Much worse, she accepted, for enlightened environmentalist reasons, her country’s deindustrialization and an ever-increasing reliance on Russian oil and gas. And when Vladimir Putin invaded Ukraine, it suddenly became clear that Merkel’s legacy wasn’t a strong alternative to Trump’s America; it was a weak European core threatened by and dependent upon an authoritarian rival to its east.
The lessons of the Merkel era came to my mind this week watching the praise for Mark Carney, the prime minister of Canada, after his speech in Davos declaring partial independence from an American-led order.
Advertisement
SKIP ADVERTISEMENT
There was much to admire in the speech. Carney’s words were remarkably free of the cant upon which most politicians nowadays depend. He told some important truths, stressing especially the ways in which the liberal international order was always defined by power and self-interest as well as idealism. He was correct to cast Trump’s recent return to power as part of a “rupture” with the post-Cold War order and to emphasize great-power competition as a key feature of this age.
Finally, his not-so-veiled threat to the United States, the suggestion that middle powers like Canada need not be constrained by their traditional American alliance, is an understandable response to some of the absurdities that Trump has visited upon our northern neighbor — the “51st state” jibes (Canada, of course, will bring at least 10 new states when it joins with us someday), the excessive trade warring and the Greenland gambit.
But as with Merkel, it’s worth considering where the logic of Carney’s vision of world order might lead. Certainly middle powers can sometimes work together against greater ones. In crucial areas, though, the new world order is not truly multipolar, and its middle powers are ill equipped to bandwagon. Rather, they often face a binary choice, in which the more independence they assert from the United States, the more they risk subordination to China.
In the military arena, for instance, on paper Europe and Canada are rich enough to rearm and form some kind of third force between the Trumpian United States and the Sino-Russian quasi-axis. In practice, though, path dependency and old age are powerful forces. Disentangling from the American alliance is incredibly technically difficult, and ramping up spending while your welfare states cope with aging populations is incredibly politically difficult. And achieving the first without achieving the second leads, in most scenarios, to increased accommodation with Moscow and Beijing.
In the realm of artificial intelligence the choice is even starker. American companies and their Chinese competition dominate the tech frontier, and it’s very hard to imagine a future where the architecture of A.I. isn’t forged by either American nerd-kings or Communist scientist-apparatchiks. It is possible that either A.I. future could lead to our destruction. But there is not some third, nonaligned A.I. path, and I don’t think Ottawa is going to find one.
Editors’ Picks
How Little Exercise Can You Get Away With?
Forget the Cynics. Here’s Why You Should Get Your Dog a Stroller.
Inside an Exploding Marriage: Belle Burden in Her Own Words
AdvertisementSKIP ADVERTISEMENT
Finally, and most controversially, I suspect the same “if not America, then China” logic applies to political ordering as well. The United States under Trumpian conditions has allowed populism to come to power, bringing chaos and authoritarian behavior in its train. Recoil from that by all means — but recognize that it happened through democratic mechanisms, under freewheeling political conditions.
Meanwhile, the modes through which Europe and Canada have sought to suppress populism involve harsh restrictions on speech, elite collusion and other expression of managerial illiberalism. And what is China’s dictatorship if not managerial illiberalism in full flower? When European elites talk about China as a potentially more stable partner than the whipsawing United States, when they talk admiringly about its environmental goals and technocratic capa
しかし、これは自分なりの感想なんだけど
内容はすべて全くごもっともだけど、それこそ中国の古典を基に連想すると「重税と苛政の国からやっとこ逃げた先で『そこは虎が出て危険ですよ』と言われてもなァ」ってことじゃないですかね…https://t.co/XWAUw61Ylz
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) January 25, 2026
あるいはさ
「お前、火起こしの手際が悪いな。もっと木を擦り合わせて摩擦を強めないと」
「むちゃ言うな、俺は文明社会に暮らしてて、火はコンロかライターで着ければよかったんだよ……まさかこんな荒野に放り出されて、そこで一から生命を守らなきゃならんなんて想定してないよ!」
みたいなさあ。
こういう荒野をプーチンや習近平が作り上げるならともかく、自由世界の盟主が率先して一番パワフルに荒野を造成してるんだからなあ…
