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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「共同親権」新聞社説、賛否を明確にした社はあるか?

通常国会を前に。集めた社説、古いのは2022年ごろのものから。

朝日新聞

(社説)離婚後の家族 子どもの利益を第一に
2023年9月3日 5時00分

 離婚した父母が子どもにどうかかわっていくか。その制度を見直している法制審議会の専門部会が、要綱案のたたき台(原案)を示した。

 親権には日常的に子どもの世話や教育をする身上監護権と、契約行為の代理などの財産管理権がある。現在は離婚後は父母の一方が親権をもつが、原案は双方による共同親権も選べるようにした。

 21年は約18万組が離婚。その57%に未成年の子がいた。こうした場合、近年は8割超で母が親権者になっている。

 両親の愛情を受けて育つ権利が子どもにあるとの考え方から、欧米では1990年代以降、共同親権が広がり、部会も可否を検討してきた。

 結婚中はもちろん、離婚後も父母がそれぞれ子育てに関与することは望ましく、共同親権もその選択肢としてあってよい。ただ、その成否は、夫婦としては破綻(はたん)した2人が親としては対等に話し合い、協力できるかにかかっている。簡単なことではない。

 離婚時に親権について父母が合意できない場合、原案では家裁が決める。子どもにとって最善な環境をつくる父母の意思・能力を見極め、いったん共同親権に決めても問題があれば単独親権に変えるなど、柔軟に対応できる家裁の態勢強化も必要になる。

 共同親権をもつ父母の関係によっては、子どもの生活全般の意思決定が滞ることにもなりかねない。原案では、子どもと同居し日々の世話をする「監護者」が、習い事など日常的な教育や住む場所について単独で決められるとし、一定の配慮をしている。もう一方の親はどこまで関与できるのか、さらに議論を深めなければならない。

 弁護士やひとり親の当事者団体が強く懸念するのが、DV・虐待の問題がある親が共同親権をもつ事態だ。離婚しても子どもやもう一方の親がその影響下にとどまることになりかねず、家裁の厳正な判断が求められる。親権は親の権利ではなく、子どもへの義務の意味が強いことは、広く認識されるべきだ。

 養育費の不払いも深刻な状況にある。ひとり親世帯対象の21年の政府の調査では、離婚による母子世帯の47%で養育費の取り決めがなく、実際に受け取っている世帯も3割にとどまった。

 原案は、養育費について決めず離婚した場合でも監護する親がもう一方に請求できる「法定養育費」や、財産から優先的に差し押さえできるしくみを盛り込んでいる。

 子の扶養義務は親権者でなくなっても続く。確実に向き合わせる制度をつくりたい。
www.asahi.com

毎日新聞

社説

離婚後の親権 子の幸せ最優先の議論を

毎日新聞 2022/11/21 東京朝刊 English version 847文字
 子どもの幸せにとって、どのような仕組みが最善なのか。丁寧な議論が求められる。

 離婚後の親権はどうあるべきかを検討している法制審議会の部会が、中間試案をまとめた。

 現行制度は父母のどちらかが持つ単独親権を採用している。試案では、これに加え、父母がともに持つ共同親権の導入を併記した。今後、国民の意見を募集し、さらに検討を続ける。

 親権は、未成年の子の監督や教育、財産管理をする権利・義務を指す。身の回りの世話をするほか、住居や進学・就職、医療などについて決定権がある。

 2020年に子を持つ父母の離婚は11万件余あり、85%は母が親権者になっていた。

 離婚しても、父母ともに子の養育に責任がある。しかし、父から養育費を受け取っている母子家庭は、4分の1以下にとどまる。

 共同で親権を持つことで親としての自覚が高まり、こうした状況を改善できるというのが、導入を求める人々の主張だ。


 父母どちらとも交流を続けることが子にとっても好ましく、親権を巡る争いも避けられるという。

 だが、懸念も根強い。

 ドメスティックバイオレンス(DV)や子への虐待が離婚につながっている場合、被害が続きかねないと反対派は指摘する。別居親が親権の行使を理由に近づいてくる恐れがあるからだ。

 共同親権では、子に関することは父母で決める必要があるが、関係がこじれていて話し合いができないケースも少なくない。


 シングルマザーの支援団体が、ひとり親2500人余に実施したアンケートでは、共同親権に賛成する人は1割にとどまった。

 賛否の溝は深く、法制審の部会も方向性は示せていない。自民党の法務部会で、共同親権導入を求める議員から注文が付き、試案の取りまとめが一時先送りされる異例の事態まで起きた。


 海外の主要国では共同親権が主流だが、離婚に裁判所の関与を必要とするところが多い。夫婦間の協議だけで離婚するケースがほとんどの日本とは事情が異なる。

 養育費の不払い対策を先に整える方法もある。子どもの立場から議論を尽くすことが大切だ。
mainichi.jp

琉球新報

離婚後の親権 子供への責任を果たす制度に
2023/05/12 05:00


 離婚した夫婦の対立が深まり、そのしわ寄せが子供に及ぶケースが少なくない。子供の生活をいかに守るか、国は議論を尽くしてほしい。

 子供の親権について、法制審議会の部会が、離婚後に両親の双方が親権を持つ「共同親権」を導入する方向で検討することを決めた。今後、具体的な制度設計を議論していくという。

 離婚は年20万件近くに上り、未成年の子供がいる夫婦は6割を占めている。現行の民法は、離婚した夫婦のどちらかが親権を持つ「単独親権」を規定している。このため、親権のない親が子育てに関われないという批判がある。

 親権は、未成年の子供の世話や教育、財産管理に関する親の権利であり、義務でもある。夫婦関係を終えても、双方が子育てに責任を持つのが本来の姿だろう。

 海外では共同親権が主流だ。日本人と国際結婚した外国人が婚姻の破綻に伴い、子供を連れ去られたと訴える事態が問題視されており、単独親権に対する海外からの風当たりも強い。

 共同親権の導入により、離婚した夫婦がともに子育てに関与する機運が高まることを期待したい。子供にとっても、両親と接点を持ち続け、愛情を感じながら成長できる意義は大きいはずだ。

 ただ、検討すべき課題は多い。両親が離婚した子供の大半は、母親と暮らしているが、母子家庭の6割は父親から養育費を受け取ったことがないという。離れて暮らす親と子供が会う「面会交流」も、十分に実施されていない。

 共同親権が導入されても、現実には子供は両親のどちらかと暮らすことになる。子育てについて、離婚時によく話し合っておかなければならない点は変わらない。

 日本では、当事者同士の話し合いによる協議離婚が大半を占め、裁判所などの第三者が関わらないケースが多い。養育費や面会交流に関する事前の取り決めが十分に行われているとは言い難い。

 海外には、離婚の際、養育費や面会交流の内容を書面にまとめ、社会福祉事務所の認可を得る制度を設けている国もある。こうした事例も参考にしてほしい。

 家庭内暴力(DV)や子供への虐待が離婚の原因になる場合がある。加害者には親権を認めないなど、柔軟な運用が必要になる。

 夫婦関係がこじれると、離婚した相手に養育費を渡したくないといった気持ちになりやすい。養育費や面会交流は、子供のためにあることを改めて周知したい。
ryukyushimpo.jp

日本経済新聞

[社説]親権の議論は子どもを第一に
2022年12月10日 19:00

離婚後の親権のあり方について、法制審議会の部会が中間試案をまとめた。共同親権の導入を含めさまざまな選択肢を示し、議論の「たたき台」とする。2023年2月中旬まで、国民の声を聞くパブリックコメントも始めた。

厚生労働省によると子どものいる離婚は21年、約10万5千件だった。多くの人にかかわる問題だ。子どもの最善の利益、幸せを第一に、どういう仕組みが望ましいのか、幅広い議論が必要だ。

現行の民法では、子どもの親権は婚姻中は父母双方が持ち、離婚後はどちらか一方になる。

試案では共同親権の導入といまの単独親権の維持とを併記した。共同親権についてはさらに、原則は共同か単独か、身の回りの世話をする「監護者」を定めるかどうか、など細かく分けた。

部会では21年3月から議論してきたが、意見の隔たりが大きく、方向性は示していない。

共同親権の利点としては、親としての自覚が高まり養育費の確保などにもつながる、離婚のさいの親権争いや子どもの連れ去りを防げる、といった指摘がある。

一方、反対する立場からは、ドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待が離婚後も続く、といった声も強い。そもそも養育費の支払いは、親権にかかわらず親の責務だ。

海外の主要国では共同親権が一般的だが、具体的なやり方はさまざまだ。離婚のさいに裁判所の関与が必要なことも多い。

日本では夫婦の協議だけで離婚するケースがほとんどだ。「家庭のことは家庭で」という社会的な意識も強く、離婚の悩みに対するサポートや、DV、虐待問題への介入・支援も十分ではない。親権について今後の議論の土俵を整えるうえでは、こうした取り組みも欠かせない。

今回の試案では、養育費確保の実効性を高める方策や親子の交流のための対策も盛り込まれている。離婚後の子どもの立場に目を配り、これらの議論も進めたい。

www.nikkei.com

産経新聞

離婚後の親権 子の利益最優先で検討を
2022/8/31 05:00


親権のあり方など離婚後の子供の養育について検討中の法制審議会の家族法制部会が8月中に予定していた中間試案の提示を延期した。

自民党の法務部会などで「分かりにくい」などの意見が出たという。

夫婦が離婚しても親子の関係は切り離せない。子供の最善の利益を念頭に親がさまざまな決定をしていくことが何よりも重要である。

最大の争点は、離婚時に父母の双方が親権を持つ「共同親権」を認めるかどうかだ。現在は、どちらか一方が親権を持つ「単独親権」である。原則的には離婚後の夫婦が等しく、子供の養育に権利と責任を持つことが望ましい。

7月に示されたたたき台では、現行制度を維持する案と共同親権を選べる案の2案が示された。共同親権を選んだ場合は、日常的に子供を世話する「監護者」を定めるかどうかや、監護者だけで病気の際の治療方法や進路などを決められるようにするかどうかなどの選択肢が示された。

海外では共同親権を取る国が多い。日本でも子供が父親とも母親とも接点を持ち、愛情を確認しつつ成長できるようにしたい。

家庭内暴力や虐待などを経験した母子などには、再び暴力にさらされるとの懸念から共同親権に反対する声もある。子供の健やかな育ちを守るための制度の変更には、母子の安全を守る仕組みが必ず伴っていなければならない。

共同親権にすると、子供にとって重要な決定が滞りかねないとの指摘もある。進学や転居など、父母の意見が一致しないことはあるだろう。決定が優先する親を決めておくことも一つの考えだ。

離婚後の面会について、当初は公的機関が面会を仲介したり、専門家が支援したりする仕組みも重要だ。子供が別れて暮らす親に会いたければ、環境を整えるのは周囲の大人の責務である。

www.sankei.com

西日本新聞

【社説】離婚後の親子 「共同親権」慎重に議論を
2023/10/2 6:00


 実現すれば家族の関係が大きく変わることになる。

 離婚後の親権について、法制審議会(法相の諮問機関)の部会は制度見直しのたたき台を示した。

 親のどちらかに親権がある現行の「単独親権」に加え、両親双方が持つ「共同親権」を導入するとした。離婚する際に両者が協議して単独か共同かを選び、合意できなければ家庭裁判所が判断する。

 親権は子どもの身の回りの世話や教育、居住地の決定、財産管理などあらゆることに及ぶ。共同親権を持つ親は、互いを尊重し、協力しながら子育てすることになる。

 離婚して夫婦関係を解消しても、親子の関係に変わりはない。そもそも親権がなくても親は子どもを養育する責任があり、共同親権が望ましいとの考えは理解できる。

 欧米では共同親権が主流であり、選択肢が増えれば多様な家族に対応できるとの見方もある。

 ただ現実は簡単ではない。離婚は夫婦の信頼関係が失われていることが多い。親権は子どもを振り回すものではなく、子どもの利益のために協力して行使するとの理解が不可欠だ。親権を学習する機会や、家裁など第三者の適切な関与が必要だろう。

 共同親権の是非を巡り、部会の議論は対立した。公募に寄せられた8千件超の意見でも、団体は賛成が多かったのに対し、個人は反対が賛成の2倍だった。国民の間でも二分されている。

 最大の懸念はドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待だ。離婚時に単独親権か共同親権かを選べるとはいえ、親の力関係によっては共同親権に合意させられることがあり得る。子どもや被害親の不安は相当なものだろう。

 たたき台は、共同親権を選んだ場合でも「急迫の事情」があれば、単独での親権行使が可能とした。さらに合意までの過程が適正でない場合は親権者を変更できる。

 それでも近年のDVや虐待は心理的な加害が多く、外部の目では判断しにくい。共同親権を導入するなら、こうした実態を見逃さないための具体策を整える必要がある。

 元夫婦の関係性によってはさまざまな決定が滞りかねない。たたき台は「日常の行為」は単独で行えるとするが、何を指すかが不透明だ。

 例えば医療現場で両親の同意が得られない場合、子どもが適切な治療を受けられない恐れがある。学校でも保護者の同意が必要な場面は多い。

 共同親権が実現すれば、家裁の業務はかなり膨らむ。調査官や調停委員を増やし、研修を充実させるなど体制を整えなくてはならない。

 離婚は年20万組に上り、制度変更の影響は大きい。与党内には来年の通常国会での法改正を求める声があるが、導入ありきで結論を急いではならない。子どもの利益を最優先する原点を確認しながら、慎重に議論を進めたい。
www.nishinippon.co.jp

北海道新聞

<社説>共同親権の議論 子どもの幸せを第一に
2023年12月1日 05:00

 離婚後の子の養育を巡る検討が法制審議会の部会で続いている。
 現行の単独親権に加え、父母双方による共同親権を選択肢として新たに導入する大枠がこれまでに確認されている。父母が対立した場合は家庭裁判所が裁定する。
 共同親権については、家庭内暴力児童虐待を受けた側に被害が続きかねないとの危惧がある。
 子どもの利益が害されるようであれば、家裁は単独親権を選ばねばならないと明示した修正案も示された。それでも懸念は強く、今後も審議は曲折が予想される。
 何より重視すべきは子どもにとって望ましく、安心安全な選択を確保することだろう。子どもの幸せを尊重する観点から、引き続き慎重に議論を重ねてもらいたい。
 親権は未成年の子の教育や財産管理などに関する親の権利であり義務でもある。離婚後、親権を失った別居親の多くが子との関係を断たれている実態がある。共同親権は別居親らが強く求めてきた。
 夫婦関係がなくなってもどちらも実の親だ。双方が愛情を持って養育に関わり続けるのは、子どもには本来望ましいことだ。共同親権が欧米で一般的なのは、こうした考え方も背景にある。
 養育費の不払いも多い中、導入によって支払う側に責任の自覚を促す効果も期待できるだろう。
 ただ共同親権がうまく機能するには、離婚後も父母の間に一定の信頼関係があるのが大前提だ。
 子どもへの虐待などが確認されているようなケースで選択するのは避けなければならない。
 部会で議論されているたたき台には、家裁が父母の協議の経過などを検討して親権者を変更できる仕組みも盛り込まれた。
 暴力や虐待には外からは見えにくい心理的な加害もある。父母や親子関係の状況を見極める家裁の役割が重要になる。体制の拡充や児童相談所など他の機関との連携が検討課題だろう。
 共同親権では子に関わる重要な事柄は父母の合意が必要となる。
 弁護士グループは子どもの進学先を決めたり手術が必要な場合などに父母が一致できず、混乱する恐れもあると指摘している。
 「急迫の事情」があれば単独で意思決定できるとしているが、その判断基準はまだ不明確だ。
 年20万組近くに上る離婚夫婦の6割に未成年の子がいる。議論の行方は子どもたちの人生に大きく影響する。与党には来年の通常国会での民法改正を求める声もあるが、詰めるべき課題はまだ多い。
www.hokkaido-np.co.jp