INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

那覇市長選・沖縄紙社説集

琉球新報 <社説>那覇市長に知念氏 市民の暮らし守る施策を

2022年10月24日 05:00
社説


 任期満了に伴う那覇市長選は、自民・公明が推薦する知念覚氏が、オール沖縄勢力が推す翁長雄治氏を破り初当選した。市民は行政経験38年のベテランに県都のかじ取りを託した。知念氏には、選挙戦で訴えた経済活性化や子育てなど市民を第一に考えた施策を展開してもらいたい。

 「選挙イヤー」の今年、自公は名護、南城、石垣、沖縄、宜野湾、豊見城に続き7市長選を制した。オール沖縄勢力は参院選、知事選と全県選挙で勝利した。互いに一定の影響力を確保したといえる。
 当面は国政選挙の予定もない。政局に偏らずコロナ禍からの経済回復、名護市辺野古への新基地建設問題など山積する課題に対し、暮らしを守る政治の実行を期待したい。
 子育て支援に関して知念氏は待遇改善による保育士確保やクーポン発行を掲げた。子どもの居場所確保や親への経済支援は急務である。確実に実行してもらいたい。
 経済では基幹産業である観光の再生が待ったなしだ。知念氏は都市型MICEの誘致促進を掲げ、投資呼び込みを図るとした。企業の経営環境の強化へDX化(デジタル変革)を支援することも挙げた。
 一括交付金減額が続く中、官主導のソフト対策は限界が見えている。経済の足腰を強くするには民間活力の喚起が重要である。官民協働の経済活性化へ知念氏はこれまで培った手腕を発揮してほしい。
 両氏の政策が異なったのは辺野古新基地への対応だ。知念氏は県民投票の結果を受け入れた上で「国と県の係争を見守る」との立場で、反対を明確にした翁長氏と差があった。あえて争点にしなかった。
 ただ候補者が「辺野古容認」を明言した参院選、県知事選で自公は敗れている。各市長選は那覇と同様に経済や福祉が主要争点だった。那覇市長選の結果をもって辺野古容認の流れに傾いたとみるのは早計だ。国と県の法廷闘争は続いており、基地の過重負担に対する国民の異議は根強い。直近の世論調査(9月17、18日・共同通信)でも辺野古を「支持しない」が57%で過半数であることがその証しだ。
 今回の市長選は、翁長氏の父である雄志前知事が提唱した政治的枠組み「オール沖縄」の在り方に一石を投じた。
 この枠組みは雄志氏がイデオロギーよりアイデンティティーの重要性を喚起し、具体的政治課題として辺野古新基地建設反対を掲げて中道、一部保守、革新勢力を統合した。しかし雄志氏の後継である城間幹子市長が、辺野古の争点をぼかした知念氏を支持したことで、枠組みが揺らいでいることが明らかになった。オール沖縄勢が推す玉城県政を含めた再構築が課題となる。
 実務経験の豊富な知念氏に市民が託したのは、コロナで傷ついた経済や福祉といった暮らしの再構築である。党派性を超え、市民の尊厳を守るという原点を念頭に、知念氏には市政運営を望みたい。

ryukyushimpo.jp

沖縄タイムス 社説[那覇市長に知念氏]経済再生へ経験を重視

2022年10月24日 06:28

 新人同士の争いとなった那覇市長選は、政権与党が推す前副市長の知念覚氏が、「オール沖縄」が支援する前県議の翁長雄治氏を破り当選した。

 それぞれ、元市長で前知事だった故翁長雄志氏の後継を主張する2氏の争いは、雄志氏の側近だった知念氏に軍配が上がった。

 知念氏は、那覇市に38年間勤務した行政経験を基に「蓄積のある即戦力」をアピールした。

 新型コロナウイルス禍や物価高で影響を受ける市民や事業者への直接補助、水道料金の引き下げは「那覇市ができること」として市民の生活第一を前面に訴えた。

 コロナ禍で、国際通りをはじめとする市の中心市街地の風景は一変した。

 政府の全国旅行支援や水際対策の緩和を受けて戻りつつある街の活気を、市経済の「V字回復」につなげたいと考える有権者は多い。長年にわたり市政運営に携わってきた知念氏の行政手腕に期待した形だ。

 国が県を通さず市町村に直接交付する「沖縄振興特定事業推進費」に関しても、知念氏は引き続き積極的に活用する方針を示した。

 「首長には、国を動かすしたたかさが必要」とする言葉からは「パイプ論」への信望が見て取れる。

 ただ、推進費頼みの市政は地方自治の在り方をゆがめ、国への依存度を高める可能性がある。

 自立経済の構築や、自発的な地域づくりにはつながりにくいということも念頭に置いておく必要があるだろう。

■    ■

 知名度で劣る知念氏が勝利したのは、政権与党が徹底した組織選挙で強力に支援したことが大きい。

 下地幹郎氏や参政党など知事選で割れていた保守層が一本化したことも後押しとなった。

 告示直前には翁長氏を推すオール沖縄から、現職の城間幹子那覇市長が離脱。知念氏こそが後継との空気感をつくり、オール沖縄支持層の一部も取り込んだ。

 知念氏は、名護市辺野古の新基地建設に対しては「県民投票の結果を尊重する」としながらも、「名護のことは名護で」と賛否を示さず争点化を避けた。

 一方で、習い事や資格取得などに活用できるクーポン発行を掲げるなど、市民生活に身近な政策を強調。地域の課題解決を重点的に訴えることで、幅広い支持拡大につながった。

■    ■

 投票率は過去4番目に低い47・05%となった。

 オール沖縄の支援を受け2期連続当選した城間氏が、自公が推薦する知念氏の支持に回ったことで、市民にとって分かりにくい選挙となった。投票率の低さは政治不信を表していないか。

 自身は新基地建設に「反対」としながらオール沖縄と決別し、知念氏を支援したことについて、城間氏は説明責任を果たすべきだ。

 復帰50年の「選挙イヤー」は七つの市長選全てでオール沖縄が敗れる結果となった。オール沖縄にとって県都を落とした影響は計り知れない。

www.okinawatimes.co.jp