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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ヴィンランド・サガ」武装と自衛に関する挿話が佳境に入った【漫画小ネタ集】

ヴィンランド・サガは、特に開拓編になってからは「登場人物の思考形態がかなり近代的な”借景”漫画」だと思っている。

それは悪いことではなく、それだから描けるものも多々ある……のだけどね。

で、特にいま、武装(もう少し拡大して「軍事」といってもいい)と自衛と紛争、みたいな話になっている。


もう2年前か……
一部を抜粋、再録。

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ヴィンランド・サガ 武器なしでの新国家は可能か

ヴィンランドサガ 武器なしでの新国家は可能か(アフタヌーン2020年7月号)
※ちなみに、ボウガンその他は、狩猟などに必要という事で持ち込みOK。武器「にしか使えない」、象徴的意味としての剣を禁止する、という話です。


なかなかに重要と思い、力を込めて紹介しているのは、主人公トルフィンに猛然と異議を唱えるこの男(イーヴァル)の主張は、かなりの部分で理にかなっている話だからです。国際政治学的に言えば、ほぼ満点だし、ディベートとして捉えれば明確にトルフィンの負けである。


しかし、ここまで20巻以上で積み重ねていた物語で分かるように、トルフィンのこの建国のポリシーは論理や理屈を超えた信念だ、ということです。
だからこそ、どんなに相手の論理が正しいと認めても、揺るがない。


それで結局、トルフィンの開拓国は剣の所持・持ち込みを禁止している。(だけどこっそり、武装派は持ち込んでるのだが…)

そして、トルフィンの指揮のもと、開拓の結果は順調で、先住民とも友好関係を結んでいる。非武装友好路線は成功したのだった。

そして武装派政策を主張する一団…この国の「野党」たるイーヴァル兄弟たちも「トルフィンはいいやつだ、立派なリーダーだ」「あいつが好きだ」ということは認める、というところまで来たのだが……


まず先住民の中で尊敬を集めている魔法使い(このへんがいかにも奇想だが)が、精霊との交信の中で、将来的にトルフィンに象徴される「西洋文明」が、核兵器にいたるような発展と暴走を見せ、人類を危機に陥れると知る。

彼しかその予言を知るものはいない……そこで周りから見れば理不尽、彼自身や読者から見ると理由が解る状況の中で、彼は斧を振り回す。


だが……本当に厄介なのはここからだ。
トルフィンは、”侠気”の異名を取り、傭兵団の間で名を馳せた格闘の名手だ。だから、造作もなく素人の斧など無力化し、自他ともに傷付けることなく場を収拾できる…そのことを、周辺のごく限られた仲間と、そして読者は知っている。

ヴィンランドサガ 武器と自衛を巡る挿話


だが…

ヴィンランドサガ 武器と自衛を巡る挿話
ヴィンランドサガ 武器と自衛を巡る挿話


外形的には「ほら見ろ、異文化の集団はいつ、理不尽に敵対行動を見せるかわからない。 それに備えて武装・自衛し、必要な時は実力で身を守るしかないよな?」という、ヴィンランド開拓団の”野党勢力”イーヴァル兄弟の言っていることが、的確に証明された状況にほかならないのだ。


トルフィンの路線は、この一件があったあとも、同様の求心力を保てるだろうか?

さらには、精霊によって未来を示唆された魔法使いは、ひょっとしてわざと相手に「攻撃させた」のではないか?……といった推測までなされる。



はたして、
どうなり
ましょうかね。