INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【「サイゼ彼女」話】人は一枚の絵から、自己の「常識」で物語を補足する~「偏見」かもしれぬ。でも仕方ない

はてなで話題の、1枚の絵ー-。「この妖怪が、はてな界・twitter界を闊歩している」。(マルクス風)

f:id:gryphon:20220211031321j:plain
「サイゼで喜ぶ彼女」(「クレハ」氏画。 https://togetter.com/li/1842940 など参照)

で、とにもかくにも話題だ。反響は
togetter.com
そのブクマを見るとわかる。
[B! togetter] クレハさんの「サイゼで喜ぶ彼女」というイラストの引用まとめ


そして、自分の感想……

しみじみ思うが、皆このイラストから、絵では不明の『会食か一人か』『相手は男性か女性か(第三の性か)』『奢りか割り勘か』等の物語を『一般的事例』から付加してるよね。偏見といえば偏見だが、そうするしかない
https://b.hatena.ne.jp/entry/4715197780015132706/comment/gryphon

これ、何のことか。
分かりやすくいえば…もっと端的な事例(なぞなぞ)が、これもいつごろか話題になったよね。ゆうきゆう・ソウ両氏がその事例を漫画にしてるのでそっち紹介しよう。

f:id:gryphon:20220211032027j:plain
医者と「私の娘」※偏見、固定観念を利用したなぞなぞ

解答はこちらに載っけた。
m-dojo.hatenadiary.com

元ネタが単行本何巻か忘れちゃったが、さまざまに紹介されてる

文章版
www.pampam.co.jp



つー、わけ。
最初に紹介したイラスト。
そもそも、孤独のグルメよろしく、一人でのサイゼリヤを楽しんでいるのかもしれない。
サイゼリヤっていうと孤独のグルメより「めしばな刑事タチバナ」だが、それはおいとけ。


でも会食だと、しよう。
相手は男性という情報はないよね?相手は、女性かもしれないないよね?
もちろん女性でありつつ、恋愛関係なのかもしれない。個人的な友人かもしれない。職場の仲間かもしれない。
あるいは、相手は男性でも女性でもない、「どちらにも該当しない性」かもしれない(※このへんを忘れないのが、意識高さで差をつけるポイント。)
そもそもこの画像で描かれている人が、男性か女性かそれ以外の性か、もわからない。決めつけられない。(※同上)
そもそも、食事を「奢られる」と決まってるわけでもない。この人物が「奢る」かもしれない。割り勘かもしれない。一銭も払わず、計画的に食い逃げをする腹積もりかもしれない

しかしブクマやまとめコメント欄、ツイートへのリプを見る限り、
「この人物は、女性であり、恋愛関係にある、あるいはなりたいと思っている男性から、食事をサイゼリアでおごられている」という前提でこの絵を見ているSNS利用者の、なんと多いことか。(「チコちゃん」のナレーター風)



もちろん「サイゼリヤ」「喜ぶ」「彼女」といったワード、テーマが、この投稿漫画が大いに議論を呼んだ後で登場したという流れも情状の余地はあるが、だからそちらの情報をこちらに付加するのが当然だ、とも言えまいし。


※まとめはいま、限定公開だとか
togetter.com



…ただ、それは正しい絵の見方なんですよ、おそらくは。
それはたしかに、上で紹介したなぞなぞで、病院で事故の緊急手術に当たる人間なら「男性」であろうというのと同様かといえば、同様です(それに異論を言う人はいないはず)。

だが、世間一般の統計的…というと正確性を欠く話だが、まあ「だいたいの可能性の高さ」でいえば、交通事故の急患の救命手術に当たるベテラン外科医はたぶん男性だろう、と想像で補うのも、まあわからんではない、自然さがある、といえる。

同様に、最初のイラストのように着飾って食事をしている女性は、「その目の前で会食している人物はデート相手の男性であり、その食事の支払い(会計負担)はその男性が行う」というシチュエーションを、説明が無くても想像する…というのは、事故の救命手術の担当者が男性だ、と思い込む程度には正しい。性別的には男性である、というのも、統計的にLGBTの数を考えれば、確率論的にだいたいのところは、たぶん正しいのですよ、たぶん。


その前提をひっくり返して
「やーい、貴方が思ってた〇〇とは限らないでしょ?(統計的には少ない)◆◆の可能性もあるでしょ? へへーんだ。…というか、むしろ〇〇だって思い込むのは偏見だ!固定観念だ!反省しなさい」
とやるナゾナゾはたいへんに面白いし、厳密な論理上はそっちが正しくはある、とシャッポを抜いた上で「…とはいえ、そういう常識で解釈しないと、実際の所当たる確率は低くなるんでねぇ」と、肩をすくめつつ、苦笑して弁明しても許されましょう。


そういうことを、
あの1枚の絵から考えた次第です。



ジャンプ連載「僕とロボコ」のあのギャグも、要はこれの応用なんですよね。

「僕とロボコ」の中の鉄板ギャグが、この種の話の応用でして……

f:id:gryphon:20220211040645j:plain
「僕とロボコ」いかにもジャイアンスネ夫的な感じの2人がいい子だというギャグ

見た感じから、マンガのお約束として、どーみたって
ジャイアンスネ夫的な存在……乱暴なガキ大将、家が金持ちなことを自慢する嫌味でキザなやつ…と見せかけてー、実はいい子でした!!
ってのを何度もネタにしてるわけ。

これ、やっぱり単体では成立しない。藤子不二雄先生らがトキワ荘からずーっと書き続けて半世紀以上をかけて、日本社会の9割9分に浸透させた「バイアス」があるからこそ、そこにフリーライドして…といっちゃ失礼かな(笑)?その裏をかいて、それだけでギャグになるのだ。

このギャグ、同作では繰り返され過ぎて、すでにその作品内ではこの2人がいい子であるという大前提ができてしまって、そろそろ通じにくい(笑)


…のだが、それでも藤子先生らの作った実に強固な「常識」はまだ壊せない。
何の情報も無くても、あの二人が並んだら、そういう性格なんだろう、と思わせる…それが偏見というなら、そうなんですわな。



ちなみに、この話は以前も書いたが、似たような構造をミステリー的味わいもある「S」という漫画では、ある事件の『トリック』としても使っている。ネタバレになりかねないのでイニシャルに留めておきますが。


「レイシャル・プロファイリング」とも繋がるのだが…


レイシャル・プロファイリングとは、警察などの法執行機関が、人種や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることを指す。

www.huffingtonpost.jp
www.huffingtonpost.jp


「外見」ではなく「挙動」によって、職務質問はなされるのが大原則である。もちろん「人種」ではない。
ただ、統計やら経験則によって、「ドレッドヘアー」はともかく、たとえば「パンチパーマ」「角刈り」にサングラス……とかから一定の傾向をイメージした場合……ちょっと話がややこしくなるので、ここで筆をおこう。