【トンガ噴火お見舞】INVISIBLE D. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

全米武者修行篇の「BLUE GIANT EXPLORER」は『すごい』表現のお手本のエピソード集。

ひとつ前のダニー・ホッジの訃報に絡めて、「創作者はホッジの逸話を、いろいろな場面で参考にできる」みたいなこと書いた。まあバトルものやヒーローものだけどね、敵でも主人公でも主人公の師匠役でも「こいつは強い、ヤバイ!」の演出としてね。
考えてみると、漫画でもドラマでも映画でもだが、いいエピソードやキャラクターに接するでしょ?
それを、固有名詞や固有の場面を取り去って、ちょっと抽象化(自分は「因数分解」とも呼んでいる)して…たとえば「社会的地位がある中年が、その立場を捨てて現場に復帰する場面が素晴らしい」「ヤクザが真面目に、そのノリで普通の仕事や日常の些事をやると笑える」とかすることで、何というか視野が広がるんだよね。
創作者はもちろん、そうやって鍛えている、あるいはパクッてる(笑)のだろうけど、ただの創作の受け手も「自分が何が好きか」ということを明確化できるし、好きな作品を横断した共通点がわかる、という利点がある。

考えてみれば、このブログではそれをやってきた感じがある。


それで、そういう抽象化をしていくと「いやー、うまいなあ」と最近舌を巻き続けているのが、「BLUE GIANT」のアメリカ篇(EXPLORER)なんです。



もちろん固有名詞としての主人公・宮本大の、ジャズ物語そのものとして受け取ってもいい。
だけど、なぜこの作品に対し、個々のエピソードを因数分解したくなるかというと、やはりよく言われるように「漫画から音は聞こえてこない」のでその分、演出が重要になるためなのだろう。

あと、物語の枠組みが全米修行=旅であり、コロナ禍…あるいかそれがなくても、広いアメリカを、車でドライブしながら回るこの物語は、そのまま、そんな冒険はできない普通の人の放浪へのあこがれもかきたてる。そしてこういう旅行者の作品は、行くまち行く街での、個々のエピソードが独立しているからかもしれない。

そして、このアメリカでの「BLUE GIANT」って、非常に「武芸帳」的なものになっている(笑)。いや、時代背景を変えれば本当に、剣術武者修行の若きサムライの物語として翻案できるかもしれんで?あるいは落語家の名人伝には、そのまま移行できるだろう。

ちょっと、そういう「個々のエピソード」を試しに抽象化…因数分解してみたい。ある種の創作のお手本だからマジで。

たとえば…

作品のすごさの表現として「みんなが絶賛」「大拍手」ではなく、「あれはナシ!!」「いやアリだ!」と『ものすごい大議論を巻き起こす』という描き方。

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BLUE GIANTのうまい演出
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BLUE GIANTのうまい演出

これはまさに…だ。「最初から大人気です!」より「なんかものすごい賛否両論が巻き起こっています!」のほうが総体として”すごそう”に見えませんか?


対決して敗れた相手が「完全に吹っ切れて、次の道を選ぶ」場面を描く

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BLUE GIANTのうまい演出

この相手は、上の「ロックでサックスありかないか」の大論争が起きた場でセッションしたロックミュージシャン…自分がプロの道を選ぶかどうか悩み、このセッションでやれる!と自信がついたら音楽の世界で生きようと思っていたが、逆に宮本大の音楽によってそれをあきらめると。
はじめの一歩で、一歩に敗れて引退し、医者の道を目指す真田みたいなアレだな。
武芸帳でも、武者修行の主人公と稽古場で闘って敗れた若者が、論語かなんかを開いて「これからは武芸でなく、学問で藩の役に立とうと思ってな…昨日のあの勝負で、そう踏ん切りがついたのだ」とか、なかなかかっこ良くない?


まったく興味も知識もなさそうな「大衆」こそを引き付ける

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BLUE GIANTのうまい演出

これは確か、最近読んだ「ましろのおと」でも、公園かどこかで津軽三味線の練習していたら、知らないうちに周辺の一般人たちがファンになっていた、という話がございました。
正規の場所でないところで、実力を見せる、というシチュエーションは、逆に本来の舞台に戻った時のキャラクターを引き立たせる。


主人公の旅を哲学的に肯定する、通りすがりの賢者

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BLUE GIANTのうまい演出
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BLUE GIANTのうまい演出

上の絵は、ダイがしばらく滞在していたシアトルのケバブ屋(だからトルコなど、中東系だろう)。その時期はずっと食べていたにわか常連だが、旅立つときに「また会いたい」という主人公にこう語る。

下は、安ホテルでの同宿の客。いいこと言ってるのだが主人公が「何が根拠なのかわからないけど…」と突っ込むのがおかしい(笑)



最新回ではいよいよ小さいバーでのライブが実現。
価格は、非常にお安い8ドル。
単純にバーで飲みたいだけだった3人が、「えっ8ドルも取るの?」「いいよ、おれがまとめて払うから」「おおサンキュー」なんてやりとりしてたけど、音を聞くうちに…




漫然と、ゆるーく紹介したけど、こういった「BLUE GIANT」の演出力、小さなエピソードの積み重ね力は本当に目を見張るものがある。
その結果、このマンガからは音が聞こえるようになったのである……と言っとけば、読み手のほうもかっこいいでしょ(笑)


とかいいつつ、そんな精神論じゃなくて本当に音とうまく融合させようとしているんだ、この作品。

BLUE GIANT SUPREME

BLUE GIANT SUPREME

BLUE GIANT×BLUE NOTE

BLUE GIANT×BLUE NOTE

The Sounds of BLUE GIANT

The Sounds of BLUE GIANT

BLUE GIANT

BLUE GIANT

そりゃ、音源CDをつけりゃ音が聴こえてくるよな(笑)。でもいい試みです。