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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

杏さんがカバーの「教訓Ⅰ」は、この時期だと思想的矛盾が明らかで面白い(それがアート!)

朝のワイドショーで見た話題。検索したらあった。
いい歌声だと思います。
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また得意の話題が出たので、過去の記事から。
というか、ここに並べた「お前が行け論」のバリエーションのひとつだからね、「教訓Ⅰ」という歌は
まず総合的なリンク集。
m-dojo.hatenadiary.com


そこからさらに、個別の記事を抜粋。

一つ参考資料として、東京新聞こちら特報部」のこの記事を紹介しよう。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20070110/mng_____tokuho__000.shtml

私たちの「美しい国へ」 <7>
非国民の精神
■フォークシンガー加川良


 「歌い手は歌い手。政治的な発言はするべきじゃないと思ってます」

 待ち合わせた東京都世田谷区下北沢のカフェで、歌手・加川良は、そう話した。底抜けの笑顔だが、決然とした口調で、自分への戒めは固い。優しい関西なまりの抑揚でわずかに漏らしたのが、こんな言葉だった。

 「ただし、あの歌は死ぬまで歌わなきゃと思ってます。若いころはただのしゃれでした。面白い言葉を歌にしただけ。しかし、いつまでも無責任でいられる年でもないですから」

あの歌とは加川が作詞作曲したデビュー作「教訓1」という歌である。

(略)

◇教訓1

歌詞
http://www.kasi-time.com/item-13538.html

(歌詞の一部は現在、ライブで歌っている内容による)

安倍をからかうエントリのつもりが、長くなっちゃった上に話が大きくなっちゃたな。

一応、ここで問いかけておこう。
たとえば佐高信氏が例によって、カンボジアで中田、高田両氏が殉職されたときに、よりによってこの歌を引用していた。さすが、何も考えていない(考える力が無い)馬鹿だけある。
そういうひとはほっておくとして。


今回の殉職警官(※引用中:リンク先の元記事参照のこと)が「いのちはひとつ、人生は一回だ」といって「青くなって逃げ出し」「隠れた」らどうなったのか?


銀河英雄伝説」前半の、ヨブ・トリューニヒト対ジェシカ・エドワーズもこれに関係している。

http://members.jcom.home.ne.jp/sturm/osusume/gine1.htmlから孫引く。

「国防委員長、わたしはジェシカ・エドワーズと申します。アスターテ会戦で戦死した第六艦隊幕僚ジャン・ロベール・ラップの婚約者です。いいえ、婚約者でした。」

「それは・・・それはお気の毒でした、お嬢さん、しかし・・・」

「いたわっていただく必要はありません。委員長、わたしの婚約者は祖国を守って崇高な死を遂げたのですから。」

「そうですか、いや、あなたはまさに銃後の婦女子の鑑ともいうべき人だ。

あなたの賞賛すべき精神は必ず厚く報われるでしょう。」

「ありがとうございます。わたしはただ、委員長にひとつ質問を聞いていただきたくて参ったのです。」

「ほう、それはどんな質問でしょう、私が答えられるような質問だといいのだが・・・」

「あなたはいま、どこにいます?」

「は、なんですと?」

「わたしの婚約者は祖国を守るために戦場に赴いて、現在はこの世のどこにもいません。委員長、あなたはどこにいます?死を賛美なさるあなたはどこにいます?」

「お嬢さん・・・」

「あなたのご家族はどこにいます?わたしは婚約者を犠牲に捧げました。国民に犠牲の必要を説くあなたのご家族はどこにいます?あなたの演説には一点の非もありません。でもご自分がそれを実行なさっているの?」


なんどか紹介したけど、それについては以前別のHNで書いた文章がある。

反銀英伝・思想批判編
1−A
お前が戦争に行け論(1)

http://tanautsu.la.coocan.jp/the-best01_03_01_a.html


文章は冗長で少し推敲したい気はあるけど、内容はまあなかなかいいこと言ってる(自画自賛)。これが佐高信の批判への反批判や、「教訓Ⅰ」の限界を示していることになっていると思う(自画自賛。佐高並みだな)ので、これをそのまま読んでいただくことにして、くどくどは繰り返さない。

(また、「教訓1」の、気の抜けた独特の味わいがあるコミック・ソングとしての価値はいささかも揺るがないのも勿論だ)
m-dojo.hatenadiary.com

なぜこの時期に歌うと、思想的矛盾が明らかになるのか?

端的な話「だいじな命を捨てないように」「青くなってしり込みなさい、逃げなさい隠れなさい」というのは、「外出を控えて、家にいることで感染症を防ごう」というニュアンスになるけど、元の歌詞をより具体的に見ると

「死んで神様といわれるよりも」
「慌てるとついふらふらと お国のためなどと言われるとね」

などは、兵士をイメージしていると思われる。
そうすると、今回の事態では、ぶっちゃけ「医療従事者」や「コロナ防疫のための業務に広く携わっている人」にむしろ該当するのだ、本来的には(笑)
で、本当にそういう人が 「いのちはひとつ、人生は一回だ」といって「青くなって逃げ出し」「隠れた」ら……、という話になる。

御本人の解説では

自分のことを守ることが、外に出ざるを得ない人を守ることになる。
利己と利他が循環する

とあるけど、実のところ循環のしようはあまりなく、医療従事者を含めた彼らが「外に出ざるを得ない」という…それが「お国の為」と表現されるかはともかく、ある種の自己犠牲の上で成り立つ。
そこには循環ではなく、これは構造としてどうしもようもない分断がある。戦争なら「まず総理から前線へ」が成り立つが、疫病なら「まず総理からクルーズ船へ」が成り立たないわけではないのだ。


だから、各国でこれに対しては、はっきりと「英雄賛歌」になる。

「我々の多くが新型コロナウイルスパンデミック(世界的な大流行)の影響を感じていても、医療の専門家たちに何が起こっているのか知っている人はいない」と指摘。これらの勇敢な人々は多大なリスクのなかで常に自分たちが必要としているものよりも他者が必要としているものを優先しており、こうした暗い時期にあって彼らの無私の犠牲は希望の光であり、どれだけの感謝と称賛を贈っても足りないと述べた。
www.cnn.co.jp

医師や看護師をはじめとした医療施設で働いているみなさん全員にお伝えしたいことがあります。
みなさんは、私たちのために、この戦いの最前線に立ってくれています。また、病人や症状がどれほど深刻であるかを、真っ先に目の当たりにしています。
そして毎日仕事へ向かい、私たちのために尽力してくれています。みなさんの仕事は尊敬に値するものであり、私は心から感謝しています。
また、普段あまり感謝されることのない人にも感謝の言葉を送らせてください。
スーパーマーケットのレジ係や、商品棚を補充してくれる方…彼らは現在、もっとも困難な仕事の1つをになってくれている方々です。
仲間である市民のために、日々、働いてくれてありがとうございます。そして、私たちの生活を維持してくれてありがとうございます。
https://grapee.jp/805138

これに
「死んで神様と言われるよりも 生きてばかだと言われましょうよね……」が対比されるか、否か。



ここから先は、ほぼ過去記事の再論になるので、
あとは適当に過去リンクを読んでいただければ幸い。

しかし、「思想的な矛盾ぐらい突破できなきゃ名曲とは言えない」ともいえる。

『「教訓1」の、気の抜けた独特の味わいがあるコミック・ソングとしての価値はいささかも揺るがないのも勿論だ』と書いたが、そういうもんだな。

アウト・オブ・マインド (紙ジャケット仕様)

アウト・オブ・マインド (紙ジャケット仕様)

  • アーティスト:加川 良
  • 発売日: 2007/07/28
  • メディア: CD
今回のカバーも、非常にいい味を出している。歌は歌それ自体として、メッセージがどうであろうと別の価値を持ち得る。



「空の神兵」の作詞家だか作曲家は、「戦時中の軍歌で、後世に残る価値があるのは俺のあの歌だけだ」と言ってたんだとか。

【東方MMD】空の神兵



余談 共産主義賛歌には、「命をいとわぬ自己犠牲」を称賛する歌が多い(名曲)

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民衆の旗 赤旗は 戦士の かばねをつつむ
しかばね固く 冷えぬ間に 血潮は 旗を染めぬ
  ■高く立て 赤旗を その影に 死を誓う
  ■卑怯者 去らば去れ われらは 赤旗守る
(略)
5 われらは死すまで赤旗を 掲げて進むを誓う
来れ牢獄 絞首台 これ告別の歌ぞ

www.nicovideo.jp


暴虐の雲 光をおおい 敵の嵐は荒れ狂う
ひるまず進め 我等の友よ 敵の鉄鎖をうちくだけ

2 自由の火柱 輝かしく 頭上高く 燃えたちぬ
今や最後の闘いに 勝利の旗は ひらめかん
  ■起て同胞(はらから)よ 行け闘いに
  ■聖なる血に まみれよ
とりでの上に我等の世界 築き固めよ 勇ましく


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戦いへ急げ バヤモの民よ
汝らは祖国の誇り
名誉ある死を恐れるな
祖国のための死は
すなわち生きることなり

隷属の下で生きるは
すなわち死ぬことなり
不名誉と恥辱の中で
戦いのラッパが鳴り響くを聞け
武器を取れ!勇敢なる者たちよ、急げ!