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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「ゲーム依存症を、WHOに認めさせた男」…なぜ?そして、いかにして?




http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jmsas/wordpress/wp-content/uploads/newsletter_pdf/jmsaas4-1_compressed.pdf


1.ゲーム障害が正式に ICD-11 に収載


樋口 進
独立行政法人国立病院機構
久里浜医療センター)
今年(※2019年) 5 月下旬に行われた世界保健総会で、ICD-11 の草案が採択されました。この中にゲーム障害(gaming disorder)の定義が収載されており、この障害が正式に ICD-11 の仲間入りを果たしました。
しかし、この収載プロセスは順風満帆ではありませんでした。
当初の ICD-11 草稿には、インターネット(以後、ネットと略す)依存・ゲーム障害は入っていませんでした。我々は、2011 年からネット依存専門診療をわが国に先駆けて開設しました。そこを訪れる患者の多くは若者で、全体の 90%以上は主にオンラインゲームに依存しています。ゲーム障害の健康・社会生活などへの影響は大きく、遅刻、欠席、成績低下、親への暴言・暴力、昼夜逆転、引きこもりなどが多くの患者に見られます。何より大きな問題なのは、この障害が若者の将来に深刻な悪影響をもたらすことです。このような状況を目の当たりにして、ICD-11への病名の収載は必須だと確信しました。
そこで、我々は WHO と緊密に協力し、2014 年にまず東京で WHO会議を開催しました。その後、このプロジェクトに賛同する専門家が増え、ゲーム障害・ギャンブル障害の疾患概念の作成、予防対策の検討、診断ガイドラインやスクリーニングテストの作成等とプロジェクトが前へ進んでいます。
しかし、2016 年 12 月に、このゲーム障害収載について米国の CNN が報道して以来、事態が急変しました。世界のゲーム業界がこの件に気付いたのです。
その後、様々な方法を使って、業界がこのゲーム障害収載の阻止に動いています。その一つが、政府に対する強力な働きかけです。
今年 1 月に行われた WHO の執行理事会で、理事国の一つである米国が明確に収載に反対を表明しました。この事態は予想されていたので、私が中心になり、世界の約 80 の学会から収載支持の手紙をいただき、理事会の前に事務局長に送りました。日本からは本学会、日本アルコール関連問題学会、日本精神神経学会、日本小児科学会などからの賛同を得ています。
その後、様々な駆け引きがあったと推察されますが、上記世界保健総会では、米国が不承不承賛成に回り、ゲーム障害は無事 ICD-11 に入りました。有難いことに、日本政府が唯一明確な支持を表明してくれました。
かくして、ゲーム障害・ギャンブル障害が新たに依存に分類されました。しかし、これはあくまでもスタート地点であって、今後、本格的な予防や治療対策が実施される必要があります。
本学会にも是非、ご協力いただきたいと思います。

…(略)…ゲーム依存症が病名として認められると診療報酬の仕組みも変わり、「手を挙げる先生」も多くなる。医学部でも教育してくれるのでしょうから、全然違います。今、患者さんはたくさんいます。

 --飲酒欲求を抑えるオピオイド受容体拮抗薬=用語解説=が認可された。この薬をゲーム依存に使う可能性は。

 アルコールや麻薬のように薬物による作用を受けないで起きる行動習癖に関する治療薬は世界に一つもない。しかし、ギャンブル依存ではいくつか研究されており、一番有効性が高いのがオピオイド受容体拮抗薬。行動依存のギャンブルで効果があるのなら、ゲームでも効果があると思う。治験をやってみないと分からないが、飲酒欲求を抑える減酒薬のオピオイド受容体拮抗薬は候補の一つだと思う。


携帯ゲーム機に熱中する少年(イメージ。本文とは関係がありません)

 --日本で開発される可能性は

 ギャンブルやゲームに適用拡大できるように考えてほしい。治験には莫大(ばくだい)な費用がかかるがギャンブルもゲームも治療薬があれば市場として小さくはない、薬を開発すればペイすると思うのだが、なかなか前に進んでくれない。

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