【訃報】
— 北原尚彦@『モリアーティ秘録(上・下)』(創元推理文庫)12/12発売 (@naohikoKITAHARA) 2019年1月15日
SF作家で押川春浪・天狗倶楽部の研究家でもある横田順彌(よこた・じゅんや)さんが4日、心不全のため亡くなられました。73歳。葬儀は近親者で営まれました。喪主は
姉の鈴木ます子(すずき・ますこ)さん。出版・作家・友人関係での「偲ぶ会」は、今後開催される予定です。
SF作家・明治文化研究家である横田順彌さんが4日、心不全のため亡くなられました。私にとっては表現者としての師匠であり、20年以上お付き合いを頂いた友人でした。まだ悲しさが実感出来ず、戸惑いしかありません。すぐにでも「遊びに来いよ」という電話がかかってくるんじゃないかと。
— 白土晴一 (@manetoke) 2019年1月15日
詳しくは、そして各界の反応はこちら参照
togetter.com
格闘技界で言えば、1993年にUFCがスタート、そして「グレイシー柔術」がとんでもない旋風を巻き起こした時に「グレイシー柔術?前田光世直伝?なんだそれは?」とスタートした時に、少なくとも一般人にとっては、研究書は横田順彌の本しか入手できなかった、と言えば当たらずとも遠からずだった。
それはこの本。
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自転車世界無銭旅行者中村春吉、世界柔道武者修行者前田光世(グレイシー柔術元祖)、虎髯弥次将軍吉岡信敬…日清、日露、第一次世界大戦と、日本が近代国家になるための試練をくぐり抜けなければならなかった激動の時代を、そのバンカラ精神で痛快に生き抜いた明治の“快人”たち。「明治快人列伝」を増補した決定版。
たしかこの本は、研究者たる横田氏本人がこれをもってよし、決定版とするのではなく「この本を契機に、彼らや彼らの時代を、皆さんでもっともっと調べてほしい」みたいなアジテーションが後書きに載っていたと記録している。本当にこの時の横田氏の「道しるべ」がなかったら、グレイシー柔術の研究はもっともっと困難だったろう。
※もちろん、こういう例外もいたことは承知
http://togetter.com/li/600660
そして、そういう明治研究の中から「彼らの中の面白い連中を登場人物に、同時代の実際の歴史と、物語上のこの時代のいろいろ(H・G・ウエルズ「宇宙戦争」、コナン・ドイル「失われた世界」など)をごちゃまぜにした冒険譚を描いてみようか」という試みまで生まれた。
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古典SFのさらに古典を探す彼の研究結果は、たとえば「はたらく細胞」と同じような発想の作品(体内の仕組みの擬人化)が、明治にすでにあったことを教えてくれる。
ほかにも、その研究は…
横田順彌さんの明治文化についての研究は押川春浪はじめ多岐にわたりますが、個人的にまず忘れられない功績は、明治時代のSF作家の羽化仙史が、森鴎外の評伝で知られる渋江抽斎の息子渋江保であることを発見したことでしょう。
— 司史生@がんばらない (@tsukasafumio) 2019年1月15日
1970年代当時、明治の一般文芸や出版文化はまだまだ軽視されていましたが、横田氏の発見は「高尚な」国文学と「俗悪な」大衆文芸の間の接点を示すもので、明治文化への新しい広範なアプローチを拓く刺激となるものでした。
— 司史生@がんばらない (@tsukasafumio) 2019年1月15日
と同時に、落語かSFかわからないような「ハチャハチャSF」まで……思い出は尽きない。「まだらのひもの」なんて思いついてもふつうは書かねぇよ(誉め言葉)
……本当に、お悔み申し上げる一方で惜しすぎる。
不謹慎な暴言であることを承知でいうが「亡くなるにしても、せめてあと1年ねばって、大河ドラマ『いだてん』を見て、天狗倶楽部について語ってから逝ってくれ」みたいなことを愚痴りたくもなる。
この前、書いたばっかりだった。
m-dojo.hatenadiary.com
天は、才能あるものを手元に置きたがり過ぎる。