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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

安倍米議会演説で問われた「歴史認識」…「安保条約・冷戦での西側陣営参加は正解だよね?」という踏み絵

安倍晋三首相の訪米と、アメリカ議会での演説、自分は主にtogetterまとめに集中していました。

厚遇?冷遇?好き?嫌い?安倍首相訪米で、米国・オバマ大統領との「距離感」推測いろいろ - Togetterまとめ http://togetter.com/li/814284 @togetter_jpさんから
  
小西ひろゆき議員(民主党)が安倍首相の米議会演説を斬る - Togetterまとめ http://togetter.com/li/814617 @togetter_jpさんから
  
ここがダメだよ安倍米議会演説〜リアルタイムの論評を中心に - Togetterまとめ http://togetter.com/li/814697 @togetter_jpさんから

どれもそれなりの注目をいただき、感謝申し上げます。


さて、ちょっと別の視点から

Reading:安倍首相米議会演説 全文 NHKニュース http://nhk.jp/N4J14DqJ

の、ここに注目したい。

親愛なる、同僚の皆様、戦後世界の平和と安全は、アメリカのリーダーシップなくして、ありえませんでした。省みて私が心からよかったと思うのは、かつての日本が、明確な道を選んだことです。その道こそは、冒頭、祖父のことばにあったとおり、米国と組み、西側世界の一員となる選択にほかなりませんでした。日本は、米国、そして志を共にする民主主義諸国とともに、最後には冷戦に勝利しました。この道が、日本を成長させ、繁栄させました。そして今も、この道しかありません。


その前のオバマ大統領との共同演説でもこの話が出てきた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150429-00000042-asahi-pol
安倍晋三首相は28日昼の日米共同記者会見で、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制をめぐり、「『戦争に巻き込まれる』といったレッテル貼り的な議論が日本で行われることは大変残念」と改めて持論を展開した。

 首相は1960年に日米安全保障条約を改定した際も同じように批判されたが、同条約によって「日本の安全は守られ」たとし、「批判が全くの間違いであった」と強調した。

動画
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/20150428kaiken.html


歴史認識での対立」というと、「さきの大戦」、旧日本帝国への評価などがやはりピックアップされるが、どうしてその後の戦後、「さきの冷戦」への評価もまちまちである……といいつつ、だーんだんと、上の話が話題にならずにスルーされるように、収斂して言ってる。


いや、たぶんそうでない、という方の意見も予想がつきますがな。
「安保条約に反対というより、A級戦犯(容疑者)岸信介の復古的傾向に反対したのだ」
「あそこで反対したからそれが牽制になり日本の平和政策を保つことが出来た」
中南米ベトナムなど、冷戦の西側のやった悪行も多い」

わかるわかる。
だが大きくいえば、やはり

「冷戦で西側陣営に属したのは正しかった。反対した人は間違えてた」
日米安保条約を結びそれを60年、70年に改訂し、米国と同盟を結んだのは正しい選択だった」

この命題は正でしょうなあ。
今回、それを米国大統領との共同会見で語り、米国議会で演説して、拍手を浴びた。
「日本は西側陣営の一員として冷戦を戦い、勝利した。その道は正しかった」

この「歴史認識」に異議を唱える人がいないと、確定した歴史認識になりそうですね。
とにかく、メディアではこの部分を批判する議論はほとんど見ていない。
(会見での「レッテル張り」という表現が卑俗に過ぎる、という苦言はネットでいくつか見たけど。)
安倍首相にとっては「岸信介の再顕彰」という意味合いもあって一石二鳥。




もちろん、例えばその歴史認識安倍晋三氏や自民党と共有したって、別に今の政権を支持することにはならない。
こんな歴史認識に対しては「そりゃそうです。常識ですよ。それはともかく安倍政権打倒!!」なんて人はふつーにいます。民主党だってかなりの部分が、自民党の禄を食んだ人なのだから。


ただ、上の歴史認識
「冷戦で西側陣営に属したのは正しかった。反対派は間違っていた」「日米安保条約を結びそれを60年、70年に改訂し、米国と同盟を結んだのは正しい選択」
に、あらためてYes,Noを問われた時、
「もちろんYes」と
笑顔で、するっとひっかかりなくいう人が大多数であろう一方で、

「まあ…ある面では…Yesでしょうなぁ…」
と苦虫を噛み潰したような表情で回答を搾り出す人や、
「Noだ!!!卑怯者去らば去れ! ひるまず進め我らが友よ!」
とまだまだ志操堅固な、「こ…これはこれでひとりのサムライ!(梶原一騎)」もいるはず。


ちなみに、その後は、最後の人を除いて「そう考え、公言するようになったのは何年ごろからですか?どこかで考えが変わったんですか?」という次の質問も控えている(笑)。


そのへんで路線の違いが表明すると面白いですね。
(これはいわゆる「反安倍陣営」を思想的、政局的に分断する効果もある。少なくとも言論界などでは)
この部分の「歴史認識」も、イッシューにならないでしょうか。


また、よく「大戦の美化や靖国参拝という歴史認識は、米国が許さない」というが、それと同様に、たとえば「日本は安保条約を結ぶべきではなかった」とか「冷戦で日本は西側陣営ではなくもっと中立的立場を取るべきだった」という”歴史認識”を持つ、表明するような政治家がいたら、またこれも靖国参拝者以上に米国からの冷視線を受けるだろうなあ、と。たぶんそのへんも言った側は狙っているだろうし、ここをスルーする側も「その手はくわぬ」という意識があるのかもしれない。



今年は「60年安保闘争55年」「70年安保闘争45年」ですが、存命の反対運動指導者が談話を発表してくれると面白いのだが。

備忘メモ「60年安保当時、反対運動をしていた人は『敵ながらあっぱれ』と岸信介を賞賛していた(田中秀征)」

https://twitter.com/gryphonjapan/status/594645779685330944
サンデーモーニング田中秀征氏回想(記憶で要約)
「60年安保時、僕は反対する学生運動の人から『岸信介は敵ながらあっぱれ』と賞賛する言葉を何度も聴いた」

田中氏は安倍首相の解釈改憲路線を批判し「堂々と改憲を明言しろ」という意味で言ったのだが、あまり言われない貴重な証言なのでメモ

2015年5月3日、TBS「サンデーモーニング」より。

追記 5月5日の朝日新聞で、田中秀征証言は活字としても残った。