- 作者: ミスター高橋
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2015/03/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介
昭和プロレス黄金時代、「金曜8時のゴールデンタイム」時代の名物レフェリーとして活躍したミスター高橋。
来日する外国人選手の世話係でもあった著者が、悪役レスラーの知られざる素顔を明かす。
自宅アルバムに眠っていた悪役たちの秘蔵プライベートショットも多数掲載。
アンドレ、シン、ホーガン、ハンセン、ブロディ、キッド……
金曜8時の興奮が甦る!
内容(「BOOK」データベースより)
怪物たちがいた時代、リングには熱狂があった―悪いヤツほどホントはあったかい!秘蔵ショット満載!新日本プロレス昭和黄金期「熱狂の裏側」。
「ミスター高橋」といえばプロレスファンも業界人もガタタッと、思わず椅子から立ちあがるような、そういうスティグマを背負った名前になっているけれど、冷静に考えれば、既にそのへんを潜り抜けて落ち着くところに落ち着いたプロレスは今、冷静に椅子に座りなおして、ミスター高橋をも、もう一度フラットな場所におくべきだ。
そして見直すと、もともと彼は、「プロレス内」のケーフェイ話としても、外国人世話がかりという特権で見聞した、一流の外国人レスラーの「素顔」そして彼らとの「交流」を描く、一等すぐれた語り手であったことを、プロレスファンはもう一度思い出すことになるのである。
「陽気な裸のギャングたち」というフレーズを覚えている人もいるでしょう(続く)
そして…特筆すべきは、ミスター高橋はその仕事が「日常」であることに変に慣れる事なく、その価値や非日常性を認識するアンテナを持っていて、飽きずに節目節目で「記念写真」を撮っていたことだ。
有名人、偉人の近くにいる人で、実はこういうふうに写真をマメに撮ってる人はあんまりいないんだよ!!…いや、今はもちろんケータイ・スマホがあって、たぶん何万倍という感じで人々の「撮影量」は増えた。
だけど、だからこそ、そのケータイ写メ時代以前…、80年代の「あの時代」に、「あのレジェンドたち」の…しかもリング上では見せない「素顔」を撮った写真がどれほど希少価値があるかが逆説的にわかるんじゃないか。
論より証拠!!!
(続く)
どやっ!!!!!(おれが威張ること無い)※ちなみに、これは帯なのでカラーなのです
いやー、ほんとにね、この記事の表題につながるんだが、日本語で日本向けのみに出版されたのが残念だ。外国人のプロレスファンだってディープなやつらが多いんだから、レッスルマニア3で対戦した『リアルアメリカン』ハルク・ホーガンと、『世界八番目の不思議』アンドレ・ザ・ジャイアントが楽しくビール瓶を傾けている写真が載っている本、ほしがるんじゃなかろうか?(それは原田久仁信の「プロレス地獄変」やプロレススーパースター列伝、「KIMURA」、みのもけんじの「プロレススターウォーズ」を読んでほしい、ということでもある)
バッドニュース・アレンとディック・マードック。一緒に巡業させるなよ…!!
有名どころのエピソードは既出も多いけど、落語のように何度聴いてもいい。
ただ、骨子は聞いていても、また周辺の話をさらにたっぷりと語った回などもある。初出の連載(週刊大衆)は比較的ページをもらっていたから、それが可能だったのだろう。
そして知った話が、今、小見出しで取った話だ……。
ディック・マードックは、ミスター高橋がもっともウマがあった(手が合った)というレスラーであり、いきつけの「焼き鳥屋」があって、そこで上のように「スマギモネギマクダサイ」とすらっと言えるほどの親日家…最近の雑誌や番組で粗製乱造されるアレではなく、もう鉄板の親日家だった。
だが!!
そんな好漢が、これは残念ながら少なからずの人間が口をそろえるように、マードックは一方で、筋金入りの「黒人差別者」だった。まあ南部の典型的な”レッドネック(これも差別語だが)”であり、テキサス育ちの彼がそうなる基盤はあったんだろうが、ただそれなら、そういう人種偏見と親日家ぶりの間にどう整合性をつけていたのか、全く分からないところだ。
それはともかく、マードックの黒人嫌いぶりは、ひょっとしたらリングで渡り合った時に試合を壊しかねないんじゃないか?と言われるもので、それを新日はブッチャーとシングルをするしない、的な見世物としてもあつかったりした。(この話は「ブッチャー自伝」にも出てくる)その後実際に試合が組まれて、なんとか成立したものの・・・と続く。だが余談だ。
http://ameblo.jp/maskedsuperstar2/entry-10215266925.html
ただ、このリンク先にもあるように、マードックはヘビー級ボクサーをパンチだけでKOするほどのガチ強さなのだ。この話は、「やさしい素顔」にも出ている。
マードック「(略)…面白え、それじゃあボクシングでやろうや、ってな」
高橋「10秒で俺のKO勝ち。花の骨をぶち砕いてやったよ。だけどな、その後がもっと面白い」
軍団「どんな続きがあったんだ」
マードック「傷害容疑で留置場にぶち込まれた俺のところに、プロモーターと名乗る男が怒鳴り込んできたんだ。(略)大事な看板選手が入院した…賠償金をよこせって抜かしやがった。そこで俺は、笑いながら言ってやったよ。”プロボクサーがプロレスラーとボクシングをやって大怪我をしたと知れ渡ったら、お前の興行会社は潰れるぞ”ってな…」
だが。
そんな新日のブッチャーには、タッグパートナーとして、これもガチで強い…とかいうまでもない、柔道銅メダリストのバッドニュース・アレンがいた。
ポリスマン、ボディガード的な意味もあったのだろうか。
またアレン自体は、こういう問題にブッチャー以上に敏感だったらしい。
とにかく、信じがたいことにそういうアレンとマードックを一緒に巡業させていた新日だが…
マードックと同様に黒人嫌いだったのがアンドレで、バスで移動中だった彼らは、その中で映画のビデオを見ていた。映画は「48時間」。
ドラマの中で、白人と黒人が激しく殴りあうシーンになった時だった。
「○○○」を叩きのめせ!
黙ってみていればいいものを、アンドレとマードックが口にしたのは黒人に対する蔑称。絶対に言ってはいけない言葉を何度も叫んだのである。
アンドレたちから三席ほど離れた前の座席にバッドニュース・アレンが、通路を挟んで…(後略)
このあとどうなったのか、それは本を読んで頂きたい。
軋轢や欠点の暴露もあるけど、それでもやっぱりやさしかった「素顔」
上の話は剣呑かつ重いけど、それは例外で、巡業の合間に見せる彼らの表情は押しなべて無邪気で、やっぱりやさしい。
駅の立ち食いソバをうまいうまいと食べ、このスープが最高だ、と全部飲み干す。
場所中は、会場入りを6時以降に遅らせ、中には真面目に入門を希望するレスラー(オットー・ワンツ)まで出るほど、大相撲をリスペクトする。リスペクトがすぎて、道を通り過ぎる力士に「ちょっと俺とケンカしないか?」と声を掛けたのはグレッグ・バレンタインだ(笑)。この時はミスターが、「相撲大好きですよ」「ごっちゃんです」「なんて言ったんだ」「いやあ、レスラーは強いからと言ってるよ」と、超時空通訳を行って事なきを得た(笑)。
そんなこんなのエピソードをつづったこの本。
ミスター高橋の、これとは別の「あの本」は、プロレスの時代を「高橋本前」と「高橋本後」に分けるほどのインパクトをもたらした。だが、この本は、そんな時代の前も後も、プロレスラーという人種の個性とその魅力は貫いて屹立している、そんなことを教えてくれるのではないか。